キョウキョウ NOVEL's

キョウキョウ著によるオリジナル小説を公開しています。

05.注目度ゼロ

「とりあえず、今までと変わらず同じような生活を続けたいと思います」
「わかった」

  そう言った聖女エリスは、アンデルスという老人が指揮して実施された異世界人召喚について、呼び出してきた僕という存在を利用することは考えず、しばらくは静観するという行動を選択した。

 異世界人を召喚して利用しようと考えていたらしいアンデルスは、あっさりと僕の手によって始末された。この世から旅立っていったし、その後を引き継ぐべき聖女エリスは特に何をしようかという計画は無いらしい。その選択に関して、特に僕も言うことはない。

 

 それから彼女は、召喚が無事に成功したことをアンデルスよりも更に上の者、この教会のトップであり、元聖女という人物に報告しに向かった。

 儀式の最中に起こった出来事、アンデルス老人と数十人もの武装兵士達が死亡したという事実に関してを隠して報告。

 不思議なことにエリスによる異世界人の召喚に関する報告は特に追求されることもなく、あっさりと終わっていた。「分かった、下がってよい」という短い言葉で、召喚された僕の事には少しも興味を向けられるような事も無かった。

 異世界人の召喚を成功させた暁には、その活躍によって昇進するつもりで居たというアンデルス老人の記憶を読み取っていたので、何かしら教会の為に異世界人として働けと命じられるのかと思っていたが、そんな事は無かったみたい。

 報告を受けた教会側は異世界人の召喚が成功したという事に関して、特に喜びはしていないようだった。

 お話の定番としては、召喚されたような人物は魔王の討伐を命じられたり、世界を救ってと命じられるモノだと僕は考えていたが、そのイメージは思い違いだったみたいだ。

 何も言われないまま放置されて、教会から命令されることも無いまま日々を過ごすことが出来ていた。

 教会には自由に出入りすることができるし、行動も特に制限されなかった。力を示せと言われることもなく、日々を自由に暮らすことが出来ている。まるで、僕という存在が見えていないかの如く注目を集めることはなかった。

 まぁ意味もわからず命令されたり、行動を制限されるような事が無い方が僕にとっても都合が良い。

 

 更に教会は、異世界人の召喚を主導した人物で教会内でも中々な高い位置の地位に居たアンデルス老人が姿を消したことに関しても、特に注意を向けることは無かった。

 異世界召喚の儀式が行われた直後から姿を現さなくなったので、召喚を一緒に行っていたエルスにも何か関係がありそうだと簡単に推測ができそうなものなのに、彼女に聞き込みが行われるような事は無かった。

「あの時の事実を隠したまま話さなくて、本当によかったのでしょうか?」
「まぁ、いいんじゃない? 向こうからは何も聞いてこないから、当分は放置で」

 隠し事をしている事を負い目に感じて、召喚の時に有った出来事を全て報告するべきかどうか悩むエリスを僕は宥める。

 どんな思惑が有って教会が異世界人召喚やアンデルス老人の消失、そして僕たちに一切関心を示さないのか、その理由が分からない。だけれど放っておいてくれるのならば、わざわざ僕たちの方から話をしに行って説明する必要もないだろう。僕にとっては、関心を向けられていない今の状況が良かった。

 ということで、召喚された世界で僕は異世界人でありながら注目されることも少なく、自由に行動することが出来ていた。

 

 ちなみに、あの日の食料にしようとして僕と一緒にこちらの世界へと召喚されることになった感染者5匹は、そのまま食い殺した武装兵達の武器を奪ってソレを装備させた。そして変装することで、教会の中に居ても溶け込む事が出来るような格好にさせていた。

「とりあえず、しばらくの間は彼女を守って」
「ハイ」「ワカッタ」「マモル」「ゴエイ」「リョウカイ」

 僕が命令すると5匹は素直に従う。

 新鮮な肉を食べてエネルギーを補給したことで、ボロボロだった体も回復していた。見た目にはゾンビだと分かるような姿から一変して普通な様子に変わっていた。更には鎧を身に纏っているので、顔も隠されて気が付く者も居ないだろうと思う。バレる可能性も低いだろう。

 知能は変わらず低いけれど、簡単な受け答えは可能なようだった。片言の返事だが会話をして意思の疎通をすることも出来ている。

 反抗するような姿勢を見せれば、コチラが力の強さを彼らに示してかなわないと思わせ、言うことを聞かせることが出来る。

 そして僕の命令した通りに五匹は今、聖女エリスの護衛に付いていた。そして僕は、異世界という新しい場所に自由に出向いていった。

 

 

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