キョウキョウ NOVEL's

キョウキョウ著によるオリジナル小説を公開しています。

第03話 プレイヤー拠点クラマ

 俺の所持しているキャラクターを育成するための拠点名は、”クラマ”という。大きい壁にぐるりと一周を囲まれた土地の中に、ピラミッドのように上から下に徐々に大きくなっていくフロアが5層に積み上がって出来た建物がある場所である。

 ログインして最初に出るプレイヤーの執務室となっている部屋から出て、すぐ目の前にある窓に近づく。

 窓のガラスに近づき、映る自分の顔を見てみる。すると、現実世界の顔ではなくてゲームで使用しているアバターの顔がガラスに映った。と言っても、顔の造形は現実のものに少しだけ変化を加えただけで、あまり違和感は少ない。
 ゲームプレイの雰囲気を出すためにキャラメイクして加えた変更点は、髪の毛を短髪から長髪にしたり、肌を現実に比べ少し白くしたり、右の頬に大きなバッテン傷を付けたぐらい。
 右の頬にある傷に右手の指でツツツと触ってみると、ゲームでプレイしていた時よりもハッキリと指と頬に触感がある事がわかる。

 顔を映して確認していたガラスの窓から顔を離して、今度は外の風景を見てみる。雲ひとつなく晴れた空に、下には広大な森が広がっているのが見た。

「昨日と風景が違う、か」

 拠点クラマから見た範囲には草原が広がっていたと記憶しているけれど、今は俺の眼の前にある風景は大きな森のようだった。
 建物5層の最上位から窓の外を見て、視線が届く範囲の殆どが森のようだった。遠くに草原が少しだけ見えるが村や町は見当たらず人の住む気配は感じられない。ちょっと見るだけで、ハッキリと昨日とは違うことが分かるぐらいに劇的に変化している風景。
 
 どうやらゲームをプレイしていた時と今の状況に色々な違いがあるようで、これは他の事もじっくりと調べる必要があると思いながら、建物の各場所を調べていく事にした。

 とりあえず、最上階である5層から下へ降りながら各部屋を調べていく事にする。

 ここにある建物は、より効果的にキャラクターを訓練するための訓練部屋や、訓練し終えたキャラクターが休んで体力を回復するような個室になっている休憩所があったり、食堂や温泉、宝物庫など様々な部屋もあって、これはゲーム課金によって追加したり強化したものだった。

 それぞれの部屋を上の層から順番に調べて回ると、強化した課金要素については初期化されていないようで、問題なく使用できるように見えた。といっても、実際にキャラクターが訓練に使っててもらって実際に問題なく使用できるかどうか、効果があるのかどうかは調べる必要がある。
 課金によって追加した部屋も今のところ問題なく存在しているようで、ひと安心していた。

 宝物庫も、問題なくアイテムがしっかりと保管されているようだった。何故か昨日ゲームプレイで確認した時に比べて、保管していたアイテムがかなり増えているようだった。

 どうやら今までキャラクター育成に使ってきた成長促進アイテムや能力アップ系アイテムが全て還元されて宝物庫に保管されているみたいだった。
 
 単純に育成してきたキャラクターをロストした訳では無いようで、今まで5年間のゲームプレイが無かったことになっているのかもしれない。ゲームを進めていく上でゲットして消費したハズのアイテムも全て手元に返ってきていた。
 俺の今所有するアイテムの数は恐ろしいほどに増えていた。単純に育成キャラクターのデータが全て初期化されたというわけではないようだ。

 拠点にある建物を5層から1層の上から下まで探索し、主なものは調べ終えた。そして今度は、建物から運動場へと出る。

 今向かった運動場ではキャラクターの戦闘訓練を行ったり、身体を動かして体力をアップさせたり、俊敏性をアップさせる能力を鍛える場所である。

 運動場へ出てから、俺は身体を軽く動かしてみた。すると、現実世界ではありえない速さで走ることが出来たり、垂直跳びで5mぐらいを軽く上に飛び上がることが出来たり、運動場の外周を早めのスピードで30分ぐらい走ってみても額に汗を少しかく程度の脅威の体力を実感したりした。

 どうやら、今の俺はアイティオピアというゲーム内のアバターに準拠した能力を持っているらしい。

 アイティオピアでは、プレイヤーにも育成キャラクターと同じように、能力値が設定されているらしい。だが、自分の能力値については確認できない隠しパラメーターとされているので、今の自分がどれくらいなのかはプレイヤー自身は簡単に知ることは出来ない。

 だが公式からの発表では、プレイヤーの能力値は確実に存在しているらい。プレイヤーがキャラクターを育成する等の行動をするごとに、プレイヤーの能力値も徐々にアップするとのこと。
 そして、プレイヤーの能力値もキャラクター育成に大きく影響してくるらしく、プレイヤーの能力値が高ければ強力なキャラクターができると説明されていた。

 つまり、キャラクターを何人も育成していくことでプレイヤーも一緒に成長していって、プレイヤーが成長することで次に育てるキャラクターはより強力なものに育て上げる事が可能になるという循環になっている。
 


 今の俺は現実に比べて、非常に高い身体能力を持っている。と言っても、比較する対象がないので、今の俺の能力値が高いのか低いのかは今のところ判断できない。

 最後に、拠点から外に繋がる門の前へとやって来た。拠点の周りはぐるりと高さ10mぐらいある大きな塀で囲まれていて、唯一この門だけ外へと繋がって出入りできる場所だった。
 しかし、ゲームをしている時はプレイヤーは拠点から外へ出ることは出来ないので、この門をくぐることは出来ない。この門は、プレイヤーにとって育成したキャラクター達を外へ旅立たせる時に、見送る場所となっている。

 非常に大きな両開きの門が今は閉じられていて、人力では開かない様になっているみたいだった。
 門の仕掛けを作動させて、機械的に自動で門扉を開ける。

 機会が動作を終えて門が開いた状態になると、プレイヤーである俺は外へ出てみようと足を踏み出してみる。が、見えない何かに阻まれて外に出ることはやはり無理のようだ。

 門のところにある見えない何かを手で探ってみるが、ブニョブニョとしたゴムのような感触がする何かが門の境界から外にあり、行く手を阻んでくるので俺はゲーム内の時と同じように門を超えて進むことは出来なかった。

 ゲームの中では拠点の外には出れない、という設定。そして、同じように今の俺も施設の外には出れないだろうと予想していたとはいえ、実際に外に出れない現状を知って大きなショックを受けてしまった。
 ログアウトが出来ないし、施設の外にも出ることは叶わず。俺は、拠点を調べているうちに、ここに閉じ込められたという現実をより一層強く感じさせられてしまった。

 拠点の探索を終えて、建物の最上階の5層の中にあるプレイヤーの休憩室へと戻ってきていた。依然として、ログアウトは何度か試してみたけれど出来ないし、運営とも連絡が取れない。先ほど他のプレイヤーにメールを送ってみて連絡を試みたけれどダメだった。

 ついに万策が尽きてしまったので、仕方なく眠って時間を潰すことにした。明日には拠点に来るであろうと予測する少女を待つことにした。

 プレイヤーの休憩室のベッドに横になって、もしかしたら今まで見ていたものが夢だったかもしれないし、今度目を覚ましたら現実に戻っているかもと淡い期待をしつつ、目を閉じて俺はぐっすりと休んだ。

 

 

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