キョウキョウ NOVEL's

キョウキョウ著によるオリジナル小説を公開しています。

第32話 よろしく頼む

「それじゃあ、よろしく頼む」
「はい、契約よろしくお願いします」

  戦乙女クランのマスターであるレオノールと、立派な口髭を生やした壮年の男性2人が僕の目の前で握手を交わしていた。いま僕らがいる場所は、握手を交わしてながら笑顔を浮かべている男性、ブラン公爵の邸宅にある一室であった。

 そしてレオノールと僕ら2人は彼とある契約を結ぶために、このブラン公爵家の屋敷に訪れていたのだった。

「それで、お嬢様は?」

 レオノールがブラン公爵と交わしていた手を離して尋ねる。ブラン公爵は一度、首を軽く傾けて頷いてから答えてくれた。そのお嬢様が、今回の契約の要である。

「クリスティーヌは先程、この部屋に来るよう呼んである。もうしばらくしたら、会えるだろう。っと来たようだ」

 クリスティーヌというのは、この目の前で話をしているブラン公爵の娘であった。つまりは貴族の娘という事。もう既に手配していたのか、部屋にやって来ると彼が話している間に、部屋の扉がノックされる音が聞こえて誰かが部屋を訪れるのを知らせる。

 扉の向こうから、若い女の子の声が聞こえてきた。おそらく、その声の主がクリスティーヌという名のブラン公爵家ご令嬢という訳だろう。

「お父様、お呼びですか」
「あぁ、入ってこい」

 ブラン公爵に許可を貰い部屋の中に入ってきたのは、ドレス姿の可愛らしい15,6歳ぐらいの少女だった。いかにも貴族のご令嬢であるという風な、綺麗な衣装に化粧を施した彼女。

 その少女は、部屋に入ってくるなり僕を目にして嬉しそうな表情を浮かべていた。レオノールではなく僕を見て変化した表情。

 はて、知り合いだったかな、だけど初対面の人物のはずだと、僕は彼女の表情が変化した理由を考えてみたけれど思い付かず黙ったまま。すると、彼女は声を上げた。

「まぁ、彼女が今噂になっているギル様ですね」

 なるほど、そうかと彼女が嬉しそうにした理由に納得する。そして、僕は微妙な気持ちなった。

 少女が言った通り僕は今、不本意ながら王都で噂になってしまっていた。

 先日王都で巻き起こった、モンスター襲撃事件で速やかに率先して市民を助けたという事が評価されているらしくて、市民の救助に一役買った戦乙女クランの名が、助けた人達から噂が広がり、今では街全体で好意的な評価を得て、有名になっていた。

 そして何故か、僕個人の名も噂されているらしい。一部では、守護女神なんて呼ばれ方もされているとか。実際の僕は、神でも女でも無いのだが……。

「落ち着きなさい、クリスティーヌ。彼女たちは私のお客様だ、恥をかかせるな」
「ごめんなさい、お父様」

 はしゃぎすぎている少女に対して、少し厳しく言うブラン公爵。シュンとして謝る彼女。

「それじゃあ、契約通りに我々は彼女の護衛任務に就きます」
「あぁ、よろしく頼む」

 そう、僕たちが今回、請け負った新たな任務というのはブラン公爵家のご令嬢であるクリスティーヌという女性の護衛に当たる、という仕事だった。

 最近の王都で起こった事件、大手クランの暴走にモンスター襲撃という出来事。そして、そのどちらの騒動でも事件鎮圧に役立ったと世間に知られる戦乙女クラン。その名を知って、ブラン公爵は仕事を依頼してきたのだった。

 

 

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