キョウキョウ NOVEL's

キョウキョウ著によるオリジナル小説を公開しています。

第30話 僕も一緒に行こう

 苦戦していた王国の新兵かと思っていたら、鎧から顔を出してきたのは知り合いである勇者アランだった。

  そう言えば、初めての話し合いで出会った時や、街中で顔を合わせた時にはラフな格好で、武装した姿ではなかった。だから今の姿を見るのは初めてで、見覚えがなく彼に思い至らなかったという理由に納得する。

 ただ僕は、彼の実力を大きく見誤っていたらしい。勇者として世間で知られている人物だから、てっきり実力が有る人なのだろうと予想していたら、先程の戦闘を目の当たりにすると実はそうではないらしい、という事が分かった。

 もしかしたら、先程の戦闘では手を抜いて苦戦していたのかもしれないし、勇者と呼ばれているなりに彼独自の特殊能力があるのかもしれない。今の僕には、真実は定かでは無いが、やはり戦乙女クランに派遣されてくるという件を断ったのは正解だったと、今更ながらに思ったり。

 ともかく、僕が助けに入ったのは勇者アランという人物という事が判明したので、これ以上は関わり合いになるのも嫌だし、さっさと次に行くことにする。

「アランさんでしたか。では僕は、他に危なそうな人を助けに行きますので、これで」
「待ってくれ。僕も一緒に行こう」

 彼と別れて次に行こうと思ったら、呼び止められてしまった。しかも、彼は僕に同行すると言ってきた。進もうとしていた足を止めて、振り向いた。

 アランは笑顔を浮かべたまま、自信満々に助っ人をしようと言ってきていた。正直言って何で、あの程度の実力で、と思わずにはいられない。口にはしないが。

「一緒にですか? アランさんの、他の仲間達はどうしたんですか?」
「彼女たちは、危ないから城に置いてきたよ。城の中で、最悪の場合に備えて王族達を守るように指示してある」
「なるほど、アランさん1人ですか。僕は、戦乙女クランのメンバーと一緒に来て市民の救援に当たっています。僕も彼女たちに指示を出さないといけないので、先を急ぎます」
「あ」

 アンタの実力では足手まといだから結構という本音は告げずに、遠回しに言って同行を拒否しようと努力して会話を続けたが、なんだか真面目に対応している間に面倒になってきたので、何か言われて止められる前にさっさと彼から離れることにした。

 唖然として声を漏らす勇者の声を背中で受けつつ、今度は止まらずに先に進んで行動する。

 初めから足を止めずに強引にこうしておけばよかったと後悔しつつも、気持ちを切り替えて再びモンスターとの戦いに苦戦している兵士の助けに入ったり、クランメンバーの状況を確認しながら、事態の沈静化を手伝った。

 そして、街の中に侵入してきていたモンスター全滅を完了させた頃には、だいぶ時間が経ち日も暮れた夜になっていた。

 

 

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