キョウキョウ NOVEL's

キョウキョウ著によるオリジナル小説を公開しています。

第29話 は? 勇者?

 空を悠々と飛び回っていた奴らは、簡単に始末することが出来た。その後は、街の中に侵入してきていたモンスターの統率は失われて、勝手気ままバラバラに動き出すと、それぞれ対処しやすくなっていた。

  そのおかげか王国の兵士たちは戦乙女クランのメンバーに助けられつつも、モンスターに襲撃され押されていた状況をひっくり返して、破壊されていた防御壁にまで押し返すと、急ぎ応急処置を施して防御壁に開いた穴の封鎖に成功した。これで、街の外から次々に押し寄せてきていたモンスターの侵入を防ぐことが出来る。後は、中に侵入している残党となったモンスターたちを潰していくだけ。

 その時になって、ようやく他のクランに所属している冒険者達も駆けつけて戦いに参加。王国兵士の援護に加わった。あらかた終わった後で来るのが遅いんじゃないかとは思うけれども、彼等の行動が遅くなったのも仕方のないことだと僕は理解していた。

 多分、突然の出来事にどう対処するべきかを各クランは話し合ってから、現場にやって来たのだろう。

 王都の防衛を手伝ったとしても後から報酬が出るかと言えば、そうとは限らない。もしかしたら、無報酬で市民を守るためにモンスターと戦うはめになるかもしれない。戦えない人を守りつつ、防衛を手伝って、一度手伝いを始めてしまえば逃げることも容易でなくなる、という危険性があったから。

 一応、倒したモンスターの素材を集めて後で換金すれば、多少の収入は得られるかもしれない。それに、人々を助けたという功績や名声を得られるかもしれない。だがやはり、危険性を考えれば得られる報酬としては低すぎる。

 だから、すぐさま動き出して街の防衛や救援を手伝おう、と行動する人々は少ないというのも当然だろう。

 すぐに動いた我々、戦乙女クランは事情が違った。

 前回起こった騒動によって、一番大きなクランであったドラゴンバスターは消滅。望んでなった訳ではないが、一応この国で最大級のクランとして評価されてしまっている自分達が動かなかったのであれば、後で大きな非難の声を浴びる可能性があったから。

 なぜ助けなかったと後になって市民から責められるかもしれない、そんな可能性が大きかった。そうなったらそうなったで、責められたとしても色々とやりようはあるけれども、とりあえず今回は面倒が少ない方を選んでおこうと、即行動に移った訳だった。

 幸いにも戦乙女クランの運営は優秀すぎるぐらいに順調で、問題がない。今回の騒動も、メンバーにクランから特別報酬を支払って赤字であっても、支障は無かった。

 

 モンスターの数もいよいよ少なくなってきた頃、その場にはまだ戦闘を続けている連中が居た。だいぶ苦戦しているようで、彼等の戦いへ助けに入っていく。すべて事が終わるまでは、手を抜けない。

 すると、助けに入った人物から声を掛けられた。爽やかな青年の声だった。

「ありがとう、ギル。助かったよ」
「ん? 誰です?」

 全身鎧で武装して戦っていて、苦戦しているようだった。声に若さを感じたから、もしかしたら王国の新兵かと思ったのだが、どうやら僕を知っている人物らしい。だが鎧を着ていて顔が見えず、男の声にも聞き覚えがない。王国の兵士に知り合いなんて居ないし心当たりのない僕は、すぐに誰かと尋ねていた。

 するとその、呼びかけてきた人物は鎧の頭のガード部分を上げて開いて顔を露出させた。その顔を見せられて、ようやく誰なのかが分かった。

「は? 勇者?」
「そう、僕だよ」

 鉄兜の中には、にこやかな笑顔を浮かべていたアランの顔があった。思いがけない人物の登場に、僕は変な声を漏らしてしまった。彼も、この街に侵入してきたモンスターに対処するため、来ていたようだった。

 

 

<< 前へ  次へ >>     目次

【スポンサーリンク】