キョウキョウ NOVEL's

キョウキョウ著によるオリジナル小説を公開しています。

第24話 無かった事に

 勇者アランを戦乙女クランに迎え入れる事に関して、僕は断固として承認をしないという姿勢を貫き通した。対して勇者は、皆で協力することが大事だと説いて、頑なに自分の考えを変えず戦乙女クランに加わり、関わろうとしてくる。

  なぜ、それほどまでに僕らのクランに固執しているのか。魔王に対抗する準備をするという建前とは別に、彼には本当の目的がありそうだった。けれども、それが何なのかを把握できない。

 勇者アランが会話している間の表情は真剣そのもので、言葉の内容も魔王の脅威から人間を守りというという気持ちに溢れているので、正しい言葉に聞こえる。

 彼がクランに加わろうとしているのは、好色な目的という訳ではないみたいだし、金銭目的でもないように思えた。

 だがしかし、僕がいくら断ったとしても勇者アランは繰り返し協力を申し出てくる。諦めようとしない彼の理由が分からない。それが僕には不気味に感じて、よりいっそう勇者という存在を戦乙女クランに迎え入れる訳にはいかなかった。

 そもそもが、戦乙女クランは女性達の為の組織である。男子禁制にしているのにも色々と理由があった。

 その理由の1つには、メンバーの中で過去に男性とのイザコザによって男性恐怖症となっててしまっている人もいる。そんな彼女の居場所でもある戦乙女クランに、男性であるアランを迎え入れることは絶対に出来ない訳で。

 だからこそ、僕も自分の性別を知られるわけにはいかない、という事情もあったのだが。

 ともかく、勇者を差し向けてきた王国とは今回の件によって距離を置いたほうが良いだろう、とういう結論も出す。ギルドマスターであるレオノールに、後で報告し相談して、必要なら他国にギルドの拠点を移すことも検討しておいた方が良いだろうと伝えよう。

 それから、勇者に関しては絶対に迎え入れないと固く決意する。これは、王国との関係を悪化させてでも、変更しないクランの方針として決めた。

 そんな僕の考えと決意を察したのか、状況を見守っていた王族に仕える臣下の男が慌てて間に入ってきて、勇者の説得を始めた。

「勇者アラン様。どうやら彼女たちの事情によって、どうしてもアラン様をクランに迎え入れることは不可能なようです」
「そうなのか?」
 
 今まで頑なに聞き入れなかったアランは、臣下の男の言葉を聞いたら驚いた表情を浮かべていた。

「魔王が現れた場合に備えるため、クランと協力するようにと提案しましたがダメなのようです。申し訳ありませんが、別の方法を新たに提案するので今回は諦めて下さい」
「なるほど、わかったよ」

 今まで散々話し合ってきて聞き入れられなかった僕の言葉とは違って、臣下の男の言った言葉は素直に理解したらしい。そして、なぜか僕の方が聞き分けの無い人であるかのようにも聞こえる臣下の言葉。なんだか、疲れてしまった。

「お時間を取らせてしまって申し訳ありませんでした、それと先程も言いましたが勇者を派遣するという今回の件については、無かった事に」
「はぁ。まぁ、了解しました」

 結果的に今回の助っ人として勇者を派遣してくるという件は、無効となって話し合いは、何の成果も無い不毛な時間となってしまった。

 いや。魔核の問題を処理することや魔王が現れる危険に備える事よりもまず先に、王国との関係を見直しておかないといけない、という事を知ることが出来たと考えれば、一応は今回の話し合いにも意味があったと思えるだろうか。

 

 

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