キョウキョウ NOVEL's

キョウキョウ著によるオリジナル小説を公開しています。

第02話 ダメだったよ

「ギルー! どうだった?」

  聞き覚えのある、女性の甲高い声が辺りに響き渡る。僕の名前を大声で呼び、走って近寄ってきたのはティナという名前の女性だった。

 今の行動からも分かる通り普段から明るく活発な女性で、僕とよくパートナーを組んで魔物を狩りに行く仲間だった。そして、彼女も僕の性別を男だと知っている人物である。

「どうだったの?」
「ダメだったよ」

 もう一度ティナから尋ねられて、僕は結果を報告する。クランを脱退したいと訴えたが、聞き入れてもらえず。レオノールから執務室を追い出された後は、自室へと戻ってきた事を。

 そして、ショックのあまり部屋の中で地面に手をつき項垂れていた。少しでも男性だとバレないようにと、カモフラージュの為に伸ばしていた長髪の黒髪が地面に垂れる。

「ほらほら、よしよし、気を落とさないで。そんな格好で座ったら、綺麗な髪が汚れちゃう」

 ティナが項垂れている僕の側にしゃがんで、地面に垂れていた髪の毛を集めて結ぶと、その後に頭をヨシヨシと撫でてくる。

 クラン脱退を聞き入れてもらえずに、レオノールに部屋から追い出された後は彼女に慰められる、というのがよく有るパターンだった。そして、今日も残念ながらクランから脱退することは叶わずに、ティナに頭を撫でられているという情けない結果となってしまった。涙が出そうだ。

「もう、クランから出ていこうとするの諦めたら? いくら言っても、レオノール様は許可してくれないと思うけれど……」

 僕の頭を撫でてくれているティナは、クラン脱退を諦めたらどうだと僕を説得しようとしてくる。どうやら、彼女はレオノール側の人間だったらしい。

「いやいやいや、いつ僕が男だってバレるのか。怖くて夜も眠れないんだよ。だから、男だってバレる前に、先にクランから追放されたほうが良いと思うんだ」
「(その可愛い見た目じゃ、多分バレやしないと思うけどなぁ)」
「え? なんだって?」
「何でもないよ!」

 何かボソッと呟いたティナに何と言ったのか聞き返してみれば、明るい笑顔で誤魔化されてしまった。

 とにかく、今の所は髪を伸ばしたり、女っぽい仕草や服装を意識してみたりと、色々な創意工夫によって男だとバレていない。けれども、いつか男だとバレてしまう日が来るかもしれない、それが今日かもしれないし明日かもしれない。

 そういう危機感を僕は常に抱いているんだと、ティナに訴えかけるのだった。彼女は僕の危機感を正しく理解していないのだろう、幸せそうに話を聞くだけだったのだが。

 

 

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