キョウキョウ NOVEL's

キョウキョウ著によるオリジナル小説を公開しています。

第08話 決断

 ユウキが自由都市チキュウテンセイという場所に連れられて来てから、一週間が経とうとしていた。

 

 転生者達が集められたこの場所に、同じく転生者であるユウキが呼び出された。同じ様な境遇の仲間として力を合わせ協力して生きていく為に、この地に移住してくる事を勧められたのだった。

 

 田舎に帰ろうかどうか考えていた時、次に住む場所をどうするのか。都市長から選ばされたユウキは、すぐに答えを出せずにいた。そして、断る事も出来なかった。

 そこで暫くの間、都市に滞在して自由都市の様子を自分の目で見て確かめること、そこに住む仲間の様子も見たりして、どうするのか判断材料にしてはどうかと提案された。都市長のフランマに気を使わせてしまう。

 

 滞在期間中の宿屋まで無料で用意してくれて、部屋はずっと清潔を保たれて食事も旨いし腹いっぱい食える。ユウキは人生の中で一番と言えるぐらい非常に快適な日々の生活を送ることが出来ていた。

 

 ただユウキ本人はタダ飯を食って生活するというのが心苦しいと感じていたので、外に繰り出して行き仕事を求めた。働かざる者食うべからず、という精神で。何かしら手伝えそうな仕事を見つけて、率先して参加していった。

 

 例えば、都市の近隣に繁殖した危険なモンスターの駆除。ユウキは転生者である証のようなチート能力と、色々と苦労して身に付けた冒険者としての経験を活かして戦闘で都市住民の手伝いをした。

 他にも、建設現場の手伝いをしたりしていた。自由都市チキュウテンセイは、今世界一に発展している都市と言われているけれど、今もずっと都市開発は止まらず進められている。人手はいくらあっても困らないので、ユウキが手伝いを申し出ると作業員から非常に喜ばれるぐらいだった。

 

 しかも、魔法の力を駆使して色々な作業を効率的にこなしていくユウキの手助けは、作業員が何十人分もの働きを見せた。

 

「ありがとう! 君のおかげで随分と早く仕事が終わったよ。ぜひとも君も、この都市に移住して来たら良い。そして今日のように俺達と一緒に仕事を手伝ってくれないか! 給料は特別料金を支払うと約束しよう」

「あ、う、えっと、はい考えておきます」

 立派な宿屋に泊めてもらった恩返しで、都市の為になるように手伝いをしていただけ。余計なお世話にならなくて良かったが、過剰に感謝されるのに困っていた。ユウキが恐縮するほど、都市の住民から厚い感謝の念を伝えられた。

 

 感謝だけでなく高い報酬も渡された。そんなつもりはなかったので、何度か受け取りを断ったのだけれども、報酬をきちんと受け取ってもらえないと一緒に働いた他の労働者に示しがつかないから困ると言われて、結局は強引に報酬を押し付けられてしまった。

 ユウキは自由都市住民のあったかい人柄に触れて、心が癒やされるような気持ちになった。

 

 それから仕事が終わって夕食時になれば、シモンさんの店に向かうのがユウキの日課となっていた。
 
 都市内には多くの飲食店が軒を連ねているし、どの店も他所の国で出される料理に比べてクオリティが格段に高い。しかし、それでもBARシモンの店で出される料理は別格だった。調理する人間が異世界を知っている、というのが大きな理由だろう。食べ慣れた味というのが、やはり口に一番合うのだろう。

 

 BARシモンは、オスキツが以前説明していた通り転生者・転移者という特別な仲間にしか開いていない。そして、そんな彼ら彼女らが夜な夜な通う店なので、そこで初めての出会いも多かった。

 

 色々と、キャラクターが濃い転生者達と出会った。

 

 みんな良い人だった。……とは言い切れないけれど、悪意を持ってユウキに接してくるような人は居なかった。

 この時、既にユウキは今後をどうするのかを決めていた。自由都市チキュウテンセイでの振る舞い方についてを。

 


***

 


「一週間、ありがとうございました」

「不自由はなかったかのう? 快適に過ごせたかな?」

 頭を下げてお礼を言うユウキ。彼は一週間ぶりに再び、都市長であるフランマのオフィスに訪れて彼女と二人きりになって話をしていた。

 

「おかげでとても快適に過ごせました。費用は高かったんじゃないんでしょうか?」

「君の働きは聞いておる、それで宿代はチャラになる。むしろ、コチラが助かったくらいだ。ありがとう、都市の代表として感謝するぞ」

 かえって迷惑になっていないか心配していたユウキは、フランマが感謝しているという言葉を聞いて安堵した。

 

「ところで、移住するかどうか。答えは決まったのう?」

「そう、ですね……」

 本題に入ったフランマの問い掛けに言い淀むユウキ。まだ決意が鈍っているように振る舞う彼だったが、心の奥底では既に答えは決まっていた。

 コチラに来た当初は移住するつもりは無かった。田舎に帰って静かに暮らそうと考えていた。ココに来た理由は、気になっていた自由都市チキュウテンセイの実態を自分の目で見て確かめる為。

 

 しかし一週間過ごしていくうちに、ユウキはこの自由都市が好きになった。住んでみたいと思うようになった。人間関係に失敗した彼だが、新しい仲間の輪に加わりたいと思うようになっていた。


「さて、どうするんじゃ?」

 フランマの最終確認でユウキは決断を迫られる。移住してくるのか、移住しないのか。そして彼は口を開いた。

 

「俺もこの自由都市に住みたいと思います。お世話になります」

「素晴らしい決断だ、もちろん儂らは君を歓迎しよう。改めて、ようこそ自由都市チキュウテンセイへ!」

 

 こうして転生者ユウキは、自由都市チキュウテンセイの新たな住人として迎え入れられる事となるのだった。

 


***

 


[名前]
 ユウキ

[種族]
 人間

[能力]
 魔法制御[熟練]
 魔法操作[熟練]
 身体操作[中級者]

[概要]
 農家の子供として転生した、物語の主人公に憧れを持つごく普通の青年。しかし、いざその立場に立たされると怖気づいてしまう性格でもある、ということを本人はうっすらと自覚している。

 生まれてからずっと田舎の村で穏便な生活を続けてきたが、人生に刺激を求めて16歳で村を出た。

 王都にやって来ると、彼は手っ取り早く生活費を稼ぐためにと冒険者となった。そして、ギルドの案内で冒険者仲間と出会う。だがしかし、彼らと揉めて離脱することとなる。

 人間関係の失敗で精神的なダメージを負った彼が田舎に帰ろうと考えていた時、自由都市チキュウテンセイへの招待を受ける。

 一悶着ありながらも、自由都市への移住を決める。その後、転生により得た能力である魔法を駆使した都市の建築作業員の一人として働き、皆から認められる様々な成果を見せるようになる。

[人間関係]
 オスキツ:友人

 

 

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