キョウキョウ NOVEL's

キョウキョウ著によるオリジナル小説を公開しています。

第07話 朝の真実

「あれ? 朝から一人で、どこに行ってたんだい? 一緒に朝食でも食べようかなって、探したんだよ」

 ユウキが覚悟を決めて宿屋に戻ってきてみると、オスキツが宿屋がある表の通りで待ち構えていた。朝から姿を消していたユウキを探していたようだった。

 

「……実は」

 何処に行っていたのか問い掛けられたユウキはオスキツに事情を話そうかどうか、少しばかり迷った。そして、オスキツにも少なからず関係がある事、もしかしたら事情を知っているかも知れないと考え、事実を隠さず話すことにした。

 

 BARで酒を飲んで記憶がない所から、今朝起きたベッドの上での出来事について。

 

 昨日の夜、どうやって宿屋にやって来られたのか、何故しっかりとベッドの上に寝られていたのか。目を覚ました時、寝ていたベッドの中から身に覚えのない女性の声。

 

 先にユウキが目を覚ましていたが、どうやら知らぬ間に一緒に寝ていたらしい、という事を把握した。

 

 女性が目を覚まそうとしていたので、詳しい事情は分からないが厄介事の予感がして思わず逃げ出してしまった、という事を正直に話した。

 

「あちゃー、やっぱり。そうだったのか」

 すると話を聞いていたオスキツが、何やら事情を知っているかのような反応を見せた。ユウキの話を聞いて、シマッタと困っているという様な表情を浮かべている。

 

「何か知っているのか? 教えてくれ」

「……」

 自分が何か悪いことをしてしまったのかもしれない、そうならば罪を償わなければならない。事実を知りたいユウキは、オスキツに問いただそうとした。けれど、彼は答えてはくれなかった。

 

「ちょっと付いてきて」

「?」

 答えの代りに、後ろについてくるように言われたユウキ。とりあえず、言われた通りオスキツの後ろを付いて歩く。

 

 宿屋の中に戻り、二人が向かった先はユウキが先程目覚めた部屋だった。中には誰も居ない。ユウキにとって、身に覚えがない女性も居なくなっていた。

 

「部屋に入って、扉も締めて。本当の事を話そう」

「いったい、どういう事だ?」

 扉を閉めるように言われ、誰も入ってこられないように扉の鍵も閉めさせられたユウキ。もう一度、どういう事なのか事情を聞き出そうと問い掛ける。

 

 

「たぶん、ユウキが見たのはコイツだろ?」

「は? え?」

 そう言ってオスキツはユウキの目の前で、くるりと身体を一回転させた。 

 

 何をしようとしているの理解できず、ユウキが気が付いたときには目の前に居た筈の人物、その顔が完全に別人のものに変わっていた。

 

「僕って、こういう事が出来るんだよね」

「その姿……。きみは、女だったのか!?」

 

「変装していた訳じゃない、女性にも男性にも自由自在に性別を変えられるんだよ。それが僕の能力の一つだからね」

 服装だけがそのままで、顔も声も女性のソレに一瞬で変わっていた。目の前で、オスキツが変わる瞬間を目の当たりにしなければ完全に別人だと思えるような変化。確かに変装では不可能だと思うし、彼が言う性別を自由に変えられるという能力が本当なのだろうとユウキは理解した。

 

 そして、能力についてを明かしたオスキツは昨夜の出来事についてを詳しく話し始めた。

 

「昨日の夜、シモンさんのBARで食事して酒を飲んだ後、色々とお話したけれど君が酔いつぶれちゃってさ。フランマさんが手配してくれた宿の場所は聞いていたから、僕が君を宿に連れて来てあげたんだよ」

「そうなのか、すまない。酔っ払ってしまい迷惑をかけたのか」

 ユウキが記憶がなくなるまで酒を飲んだのは初めての事だった。しかも、迷惑を掛けてしまったのかと反省し、彼はオスキツに向かって頭を下げて深く陳謝する。

 

「あぁ、いいんだ頭を上げてよ。謝るほどのことじゃない」

 頭を下げ謝られたオスキツは、そんな事をする必要はないと慌ててユウキの謝罪を止めた。そして、話を続ける。

「いやー、僕も昨日は飲みすぎちゃって。君を宿に連れてベッドの上に寝かせた時、そのー、ちょっとだけ休憩するつもりで横になったんだよね。まさか目を覚まさず朝までぐっすりとは思わなかった、しかも寝ぼけて女性の身体に変化しちゃうなんて。酔っ払うと、自分でも何をやらかすか分からないよね」

 頭に手をやりアハハハ、と気まずさを誤魔化すように笑うオスキツ。

 

「そ、そうだったのか……。あー、よかった……」

 真実を知れたユウキは腰を折り、膝に手を付いて思い切り息を吐き出し心底安堵した。

 

「ごめんなさい。別に僕の能力で君を騙そうなんてつもりは、一切無かったんだよ。いつか僕の能力については教えるつもりでいたんだ。こんな形じゃない流れで」

「あぁ、いや、いいんだ。俺の方こそ早とちりして部屋から逃げ出してしまった。目を覚ました時、君に話を聞いておけばよかった」

 お互いに悪かったと思う部分を謝り合う。しばらく謝罪の交換が続き、キリがないと謝罪は止まった。

 

「それにしても。まさか性別を変える能力があるなんて思いもしなかった」

「戦闘とかにはまるで役に立たないし、何かを創ったりする魔法でもない。実際のところは使い所が難しい能力なんだけどね」

 姿形が全然違っていて、声は違うし喋り方も若干変わっているような気がする。本当に別人のようだ。事情を知らなければ、同一人物とは思わないだろう。

 

 本人は使いづらいと言っているが、何かしら能力を利用できる場面もありそうだと思うユウキ。

 

「ところで、君の本来の性別はどっちだ? 男性なのか、女性なのか」

 ユウキは今まで男だと思っていた彼、今は彼女になっている人物の対応の仕方について迷っていた。なので性別をハッキリさせて、振る舞い方を改めようと考えるのだった。

 

「どっちも僕だよ。男の姿も、女の姿も」

「それなら前世はどっちだった。……って聞くのはマナー違反だったっけ」

「そうだね。僕に関しては、前世について絶対に聞かないでよね、お願い。僕の名はオスキツ、ただそれだけだよ」

 

 

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