キョウキョウ NOVEL's

キョウキョウ著によるオリジナル小説を公開しています。

第05話 失敗

 ヴァレイという青年が率いる冒険者パーティーに、新たな仲間として加わることになったユウキ。

 

 田舎から王都に出てきて、生活のための金を稼ぐためにそのまま冒険者になった彼だったが、まだ3ヶ月しか経っていない頃。

 

 依頼は無難にこなしていたけれど、まだまだ知らない事ばかりのユウキ。仲間となった彼らに冒険者としての心得を教えてもらったり、世界を旅する時の注意点等先輩としてのアドバイスを受けて、色々と指導してもらっていた。

 

 知識や情報を伝授してもらった代わりに、ユウキはメンバーに恩返しするつもりで冒険者としての仕事を頑張り、依頼達成の為に尽力した。その頃、メンバーとの関係は良好だったとユウキは思っていた。

 

 転生した時に得た能力を駆使して、戦闘において大活躍するユウキ。彼の活躍を褒めるパーティーメンバーのヴァレイ達。今までずっと単独で活動していたユウキだったけれど、もっと早くに仲間を見つけていればよかった、と後悔するほど仲間というのは居心地が良いと思えた。

 

 しかし、そんな関係も少しずつ変化していく。いや、もとから良好な関係というのはユウキの勘違いだったのかもしれない。

 依頼をこなすためには、事前準備が色々と必要だ。向かう先のモンスター戦力の調査、現地に赴くまでの計画を立てて進行ルート選定、必要な道具の用意、宿泊先の確保等など。いつの間にか、それら全ての雑用をユウキは押し付けられるようになっていた。

 それでもユウキは仲間のためにと考えて、依頼を完遂するため手を抜かず準備を進めて、戦闘では一番前に出て頑張り、依頼をこなしていった。

 

 そんな状況が半年も続けば、誰だって我慢できなくなくなるだろう。しかも、他のメンバーは手伝う素振りもなく、ユウキをこき使う。彼は、パーティーリーダーであるヴァレイにやんわりと問い掛けた。

 

「最近、パーティー内で俺だけ仕事の負担が大きくないか」

「適材適所と言うやつだよ。慣れている人、出来る人が準備した方が問題なく遂行できるし、仕事も早く終わらせることができる。君以上に上手く出来る人が、ウチのパーティーには居ないから、自然と君に頼ることになる。すまないが、しばらく君に負担が掛かるだろうが耐えてくれ。何か解決策が見つかれば、どうにかしよう」

「……わかった」

 念のためにと相談したことで、ヴァレイは改めると約束をしてくれた。なのだが、しばらく経ってもユウキの負担は改善する事は無かった。むしろ、どんどんユウキの仕事が増えていくばかりだった。そこで彼は、ようやく都合よく利用されているという事を理解した。

 

「俺はこのパーティーを抜けさせてもらう」

「突然、どうしたんだい?」

 冗談を言うなよ、という軽々しい感じでヴァレイはユウキをなだめる。しかし、ユウキは本気でパーティーを抜ける気でいた。

 

「冒険者として色々な事を教えてもらったのは、感謝している。だけど、今の状況は不本意だ。お前たちに、この先の俺の人生を使い潰される気はない!」

「だめよ、考え直してユウキ、仲間でしょう?」
 パーティー内で唯一の女性であるポリーが、辞めると言うユウキの身体にしなだれかかる。女の武器を使って、引き留めようとしているのだろう。しかし、彼女がヴァレイの愛人である事を知っているユウキは何の興味も湧かず、色目を使ってくる彼女を避けて距離を取った。

 

「なんて勝手な事を! 仲間のことを考えて行動するべきなのに」

「お前らは、俺を利用しているだけだろうに。雑用ばかり押し付けて、仲間なんかじゃない。うんざりだ」

 アレクトルが非難してくるが、そもそも仲間だと思われていると感じないような対応が悪いのはソチラだろうに、とユウキが睨む。

 しかし視線を向けられたアレクトルは何の悪気もなく、ユウキの方が断然悪いと考えている様子だった。

 

「突然、パーティーを抜けるなんて勝手なことをしてメンバーの皆に大きな損害を与えるということを君は理解しているのか?」

「事前に相談した。なのに改善はしなかった。その時点で、ココに居るのは無理だと思った」
 もっともらしい事を言って、パーティーから抜けようとしているユウキを攻め立てるヴァレイ。しかし、ずっと前から相談しているのに状況を改善しようとしないと反論する。

 

「そんな勝手は許せない。どうしてもと言うのなら、けじめをつけるべきだ」

「まったく回りくどい言い方だな……。金が欲しければ、くれてやるよ」

 つまり、簡潔に言えば勝手にパーティーを抜ける謝罪の金を寄越せと言っているのだろう。

 

 本来は支払う義務もない金だろうけれど、彼らとの関係を今すぐにでも断ち切るために手切れ金だと思ってユウキは、冒険者として稼いだほとんどの財産を彼らに渡した。それで彼らとの関係を切れると思ったら、少しも惜しくはなかった。

 それに、彼らと一緒に仕事をして稼いだ金なんか手元に持っているのも、すごく嫌だと思ったから。

 

 

 こうして、ユウキが初めて組んだ冒険者パーティーとの関係は失敗に終わって、手元に残ったのは使い古された剣と防具ぐらいだった。

 

 最初から間違っていた。安易に彼らの仲間になんてなるべきではなかったのかも、そもそも冒険者にならなければよかったし、大本を辿れば王都なんかに出て来るべきではなかったのかもしれない。両親の言うことを聞いて、村で農業の仕事をしてひっそりとした静かな生活を続けていれば良かったのかも。

 

 後悔ばかりが募るユウキ。気力を失って、これからどうしようか考える。また、一人に戻って冒険者を続けるのか。それとも、他のパーティー仲間を探すのか。色々と考えて出た結論。

 


 冒険者を辞めて、田舎に帰ろう。そこで農民として一生を静かに暮らそう。そう決めたユウキ。

 


 荷物をまとめて、あまり良い思い出も無い王都を立ち去ろうと考えていた直前になったところで、ユウキの目の前に彼が現れた。案内人を名乗る青年で、自由都市チキュウテンセイからやって来たという使者。

 


***

 


「その使者がオスキツで、いま俺は連れてこられてココに居る、という感じです」
 美味しい酒を飲み、酔っ払って口が軽くなったユウキは気が付けば、つい最近にあったばかりの恥ずかしい過去についてを、出会ったばかりのオスキツとシモンの二人に打ち明けてていた。

 

「田舎から夢見て出てきた若者が、都会で失敗する。よくあるような話ですよね」

 自嘲して話を終えたユウキ。本人は努めてなんでもないようにと軽く言っているけれども、実は相当な精神的ダメージを受けていることは明らかだった。

 

「私も、実は昔に色々と失敗してますよ」

 自分も同じ様な出来事が昔には有ったと、落ち込むユウキにフォローを入れるバーのマスター、シモン。

 

「僕も大きな失敗が有ったよ。皆それぞれ、いろいろな失敗をしているんだよね」

 オスキツも、失敗が有ったとさらけ出す。何かを思い出して、ブルブルと身体を震わせながら。

 

「ははっ。転生者で生まれ変わって大きな力を手に入れたとしても、人間ってそういうもんなんですかね」

「失敗は誰にでもある、特に人間関係なんかは特に難しいだろうな。だけど、失敗した経験を次に活かせるかどうかが大事だ」

 シモンの言葉はユウキの心に強く響いていた。失敗を次に活かせるかどうか、今まさにユウキは試されている状況に立たされている、と感じる。

 

「だから、この自由都市への移住を誘われた時も嬉しかったんですけど、ちょっと怖くて」

 小さな声でぽつりと、ユウキが呟く。そんな彼の様子を見るシモンとオスキツの二人は、けして移住して来いと強制はしなかった。余計な口を挟まず、あくまでもユウキにどうするのか選択させる。

 何せ、ここは自由都市という名前の場所なのだから。自分自身で自由に選んでほしいという気持ちで。

「移住、どうするか……」

 ユウキは結論を出せず、苦しい気持ちを紛らわせる為に酒をあおった。

 

 

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