キョウキョウ NOVEL's

キョウキョウ著によるオリジナル小説を公開しています。

第04話 過去の出来事

 ユウキは、ごくごく普通な農民一家の下に生まれた。

 

 特に何の背景も無い、貴族の隠し子で実は身分が非常に高いだとか、脈々と受け継がれる隠された勇者の血を引き継いでいるなんて、そんな事情は一切ない。地方にある小さな村で生まれた一人の男。

 

 他の人達と比べてみて、ちょっとだけ違う所は前世の記憶があって最初から強力な魔法が使えるという能力を持っていたという事。

 

 その事実を誰にも打ち明けることも無く、16年間ずっと農家の仕事を手伝いながら家族と一緒に生活していた。仕事が終わった後、一人で黙々と身体を鍛えたり、魔法の特訓を続けるという日々を送っていた。

 

 子供なのに知恵が回るし、熱心に家族の仕事を手助けしていて村での彼の評判は非常に良かった。

 

 飯は不味いが食うのに困らない、家は汚いけれども雨風に暑さ寒さを凌げる住処。仕事を探せば、いくらでもある。貴族のような豪華さや贅沢は無いけれど、普通で十分ならそんな生活もアリだろう。しかしユウキ本人は、不満に思う日々。刺激が無かったから。

 

 せっかく他の人には無い能力を持って生まれて、使いこなせるように隠れながら特訓を続けているというのに披露する場がない。16年もの間、ユウキはその力を発揮する場面に出くわすことは無かった。

 

 平和なのは良い。けれど、このまま自分の生まれた村で生活を続けていても何事もなく、死ぬまで畑を耕し豆や芋を栽培して、それを収穫して国に税金として収めるだけな農家としての人生を全うすることになりそうだった。

 

 せっかく転生したのに。その機会を有効に使用することも無く、何もせず死んでいくのは惜しいとユウキは思った。

 

「父さん、母さん。俺は王都に行ってみたい」

 そう言って村を出ていく許可を貰おうとしたのだが、駄目だと却下されたユウキ。優秀な働き手を外に出すのを嫌がったから。それに外の世界は危険だと知っていた両親は息子に、危ない目に遭ってほしくないという心配する気持ちもあったから。

 

 それから一年間ずっと、ユウキは両親に向かって外の世界へ行きたいと訴え続けた。溢れるユウキの熱意に根負けした両親が、王都へ行く許可を出したのだった。

 

 17歳、ユウキは両親からの許可を得て王都へと向かった。そこに行けば、何か有るだろう何か起きるだろうと、何の根拠もない自信を持ちながら。


***


 王都へと無事に辿り着いたユウキ。しかし、そこから先の計画を彼は何も考えていなかった。

 とりあえず、お金を稼ぐために仕事をしなければならない。ユウキは自分の能力を駆使して稼げるだろう方法、冒険者になろうと決めた。彼の知る物語に出てくる、よくある流れに従った。

 

 冒険者ギルドを訪れて、証明証を発行してもらう。手続きは呆気なく終わって、すぐにも仕事を始めることが出来た。

 

 何か起こらないかな、そんな期待を胸に秘めながら仕事を受けるユウキ。そして何も起こらず3ヶ月が経った。

 

 無難な依頼をコツコツとこなすユウキは、冒険者ギルドからの評価が良かった。しかし、ココでも本人は不満に思う。何か起きてくれないだろうか、と。

 

 

 

「君が、ユウキかい?」

「そうだが、えっと君は?」

 請け負っていた仕事を終えて冒険者ギルドに報告した後、次の依頼を探していたユウキの後ろから突然声を掛けてきた青年。

 

 そして彼の後ろに全身鎧の男が一人と、魔法使いの格好をしている女性一人。パーティーを組んでいる冒険者達のようだった。

 

「俺の名はヴァレイ、後ろにいる男がアレクトルと女のほうがポリー」

「よろしく」

「よろしくね」

 

「え? あぁ、えっとよろしくお願いします」

 まだ何の用事なのか分からなかったので、困惑しながら自己紹介を受けたユウキ。

 

「実は、俺達は色々な場所へ旅を続けていて今日ここに辿り着いたんだ。まだこの辺りの地理に詳しくないから案内できる人物を冒険者ギルドに問い合わせたら、君を紹介してもらった」

「俺も三ヶ月ぐらい前に来たばかりですよ。他に、もっと詳しい人が居ると思うんですけど……」

 

「いや用事はソレだけじゃないんだ。君は優秀な冒険者でもあるって聞いている。ぜひウチのパーティーに新しい仲間として加わってもらいたい、って考えている。どうかな?」

 今さっき出会ったばかりの人物から、冒険者パーティーへの誘いを受けた。少し悩むユウキだったが、一人での活動に限界を感じていた頃でもあった。

 

 それに新たな人物との出会い、これが何か大きな出来事のキッカケになるのではと、予感した。

 

「わかりました、よろしくおねがいします」
 こうしてユウキは、彼らの新たなパーティーメンバーに加わる事となった。

 

 

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