キョウキョウ NOVEL's

キョウキョウ著によるオリジナル小説を公開しています。

第02話 発展した都市

「ふぅ、緊張した……」

 

 話を終えて部屋から出てきたユウキは胸に手をやり、一息ついていた。いきなり初めて出会う女性と二人きりにされて、しかも女慣れしていない彼にとっては荷が重い美女だったから。話し合いの最中ずっと緊張しっぱなしだし、かろうじて会話は出来ていたと思う。だが部屋から出てきて、ようやく一息つけたといった気持ちだった。

 

「話は終ったかい?」

「お前は」

 落ち着きを取り戻したユウキに声を掛けたのは、彼をこの自由都市に連れてきた人物。案内人を名乗る青年だった。先程、声を掛ける間もなく部屋から出ていって二人きりにされた仕掛け人。

 

「一人にして置いていったのは、ごめんよ。ただ実は僕もフランマさん、彼女の事が苦手でさ」
 恨めしそうに視線をやるユウキに気が付いて謝り、青年は更に言い訳する。その言葉を聞いて、不機嫌そうな表情から不思議そうな顔に変わったユウキ。

 

「フランマさんって、この都市の一番偉い人なんだろう? 苦手なのか?」
 美人だし都市長という重要な地位を任せられている人なのだから、おそらく都市に住む人達には慕われているのだろうと思っていたけれど、どうやら違うのか。

 

「あぁ、いや。個人的に苦手意識を持っているだけで、性格とかは、とても良い人だよ」

「じゃあ、なぜ苦手なんだ?」

「すごくデキる人だからかな。なんでも器用にこなして失敗しない完璧な人だから、彼女を目の前にすると失敗できないって緊張しちゃうからね。しかも美人だから男として幻滅されたくない、って気持ちになる」

「なるほど、それは分かる」

 ついさっき、感じていた同じ種類の緊張を青年も味わっているらしい。そう思うと眼の前に立つ青年に対して、一気に親近感を抱くユウキ。

 

「じゃあ、改めて自己紹介。僕の名はオスキツ、よろしくね」

「うん。俺はユウキ、よろしく」

 まだシッカリとした挨拶はしていなかった彼ら。改めて名前を伝え合い、握手を交わす。それから、ユウキのオスキツに対する対応は友人にするように、フランクに変わっていた。

 

「それで、ユウキはこの街に住むのかい?」

「実はどうするか、答えを出すのは保留にしてもらった。もう少し、この自由都市チキュウテンセイって場所の事を知ってから判断したいから」

 まだ場所の名前を口にするのにも気恥ずかしさを感じるユウキ。とりあえずは、この場所の事についてもっと知っておきたいと考える彼だった。

 

「へー、なるほど。それは賢明だね。よかったら夕食を一緒にどう? この場所の案内がてら、良い店を紹介するよ」

「それは助かる。案内、お願いする」

 


***

 


「ここが街の中心、メインストリート。色んな店が立ち並んでいるから、欲しい物や捜し物があったらココで探すのが良いよ」

「へぇ」

 役所から出てきて、しばらく歩いた先にあった大きな道。整備された地面は歩きやすく、背の高い建物が道に沿って綺麗に並んでいる。こちらの世界に来て初めて見る綺麗に整備された街の風景だった。

 

 他の街だったら、地面が整備されているとしても意外とガタガタとしているのが普通だし、並んで建てられたような建物でも隙間だらけで、脇道が多かったりする。ユウキの知っている王国にある城下町でも、そうだった。

 

 人通りも多い。転生者の街だと説明されたが、普通の人も住んでいるようだった。それも、かなりの人数が。多いだけでは無く彼ら彼女らの表情には笑顔が浮かんでいて、活気があるように見える。

 

「この道の大きさなら馬車も余裕で通れるな。移動が楽そうだ」

「ふっふっふっ。実は移動手段は徒歩と馬車だけじゃないんだよ。向こうに行けば線路が通ってる」

 

「え!? ココは、っていうかこの世界に列車が有るのか?」

「そうなんだよ! 動力は蒸気機関とその他にも色々と使っているらしくて、まだ研究の途中。試験運転の段階なんだけどね。しばらくすれば、僕らも乗れるようになるらしいよ」

「マジかよ。予想以上に発展している、ということか」

 列車に関してはウワサでも聞いたことがない、初めて知った新情報だった。剣や魔法で戦うファンタジーな世界だから、存在しているなんて考えもしていなかったユウキ。

 

「この自由都市は色々な転生者や転移者が居て、それぞれに色々な趣味趣向が有るからね。電車好きや鉄道オタクって呼ばれる人が居て、この世界でも鉄道の喜びを! って主張している人が居たらしくて研究が進められている」

「なるほどね」

 この自由都市チキュウテンセイの発展には転生者達が大きく関わっている、ということを改めて思い知ったユウキ。

 

「例えばあっち、見えるかい? あの巨大なアレも転生者による作品」

「なんだか見覚えのある、観光名所になりそうな建造物だなぁ……」

 遠くからでも目だって見える、背の高い鉄塔が赤と白に塗られている建物がそこにあった。

 

「まぁアレは監視のために造られた塔で、電波の送信はしてないけどね。ユウキも何か創ってみたい物があれば、申請して自由に出来るよ」

「割と自由なんだな」

 ココに住む転生者達が結構やりたい放題しているらしい現状を知って、驚くやら呆れるやら複雑な気持ちになったユウキ。彼は今までずっと転生者ということは誰にも打ち明けず、この世界に馴染んで生活を続けてきたから。ここまでオープンにして生きている転生者が居るのか、とモヤモヤした気持ち。

 

「あぁ、でも注意点。ここに住む転生者や転移者の人たちに、前世の個人的な事を尋ねるのはマナー違反ってことは覚えておいて」

「え? 駄目なのか?」

 無闇矢鱈に詳しく知りたいという訳でもないが、同じ転生者として他の人の前世について少し興味があったユウキは、駄目だと言われて残念そうだった。

 

「うん。新しい世界で、生まれ変わった新しい人物になりきって生活しているから。例えば、前世では男性だったけれど転生して女性になったとかも有るからね。あ、本人が話してくれるんだったら問題は無いよ」

「うん、分かった」

 そう言われて、前世については不用意に聞くのは辞めておこうと素直にオスキツの忠告を受けるユウキ。

 

「腹が減ったな。そろそろ夕飯にしようか。さぁ、おすすめの店はこっちだよ」

「俺も腹が減ってきたな。行こうか、案内してくれ」

 オスキツに色々と教えてもらいつつ街の案内をしてもらないがら、夕食のお店へ向かうユウキ。

 

 

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