キョウキョウ NOVEL's

キョウキョウ著によるオリジナル小説を公開しています。

第01話 都市長と転生者達

「新しい転生者、連れてきましたよフランマさん。それじゃあ、僕の仕事は無事に完了ということで後は任せます」

 

「ご苦労じゃったオスキツ」

 ユウキが連れてこられたのは、自由都市チキュウテンセイの中央区という場所にあるという役所だった。その一室で待ち受けていたのは、目を見張るほどの美人。

 

「えっ、ちょ、あ……」

 フランマと呼ばれた妖艶さのある美女に見とれていたユウキ。そんな彼を部屋に連れて来た案内人の青年は、任務完了だと報告すると間を置かずユウキを一人置いてさっさと部屋から出て行ってしまった。

 

 いきなり見知らぬ女性と個室で二人きりにされるとは思ってもいなかったユウキ。女性慣れしていない彼、しかもとびっきりの美人に対してどう対応したら良いのか、緊張してしまうから仲介を頼もうと、案内人の青年を呼び止めようと手を伸ばす。

 けれど間に合わず、無情にも扉は閉めれられてしまった。

 

「ようこそ、自由都市チキュウテンセイへ。突然の招待を受けてくれたこと、非常に嬉しく思う」

「いえ、その」

 部屋の中にはユウキと彼女の二人だけ。緊張しているユウキに対して、部屋の主である美女は笑顔を浮かべて都市へ歓迎の言葉を掛けた。

 

「儂の名はフランマ、自由都市チキュウテンセイの都市長を務めておる」

「あ、えと、はい。よろしくおねがいします、ユウキです」

 儂という一人称で話している。そんな彼女の言葉遣いとは真逆で、綺麗に澄んだ声に、見た目は女性であり20代ぐらいの若さにしか見えない。

 

 都市長なんていう役目も引き受けているらしい。やって来たばかりのユウキでは、都市長がどれくらい偉い人物なのか分からない。けれども、おそらくここ自由都市チキュウテンセイをまとめている一番偉い役職なのだろうとユウキは考えた。

 

 見た目通りの年齢では無いのだろうか。ただの人間ではなく、人間とは種族が別なのだろうと思う。そうするとエルフか何か長寿の種族だろうか、とユウキは彼女を観察して推測した。

 

「オスキツ、君をこの場所に案内してきてもらった彼から、ある程度の話は聞いているとは思うが、改めて説明しよう。長い話になるからそこに座って。くつろいでくれ」

 フランマは部屋に備え付けられていたソファーにユウキを座らせると、飲み物の用意をして話し合いの準備を整える。ユウキは素直に彼女の言葉に従い、ソファーに腰を下ろした。

 

(すごくフカフカのソファー、これだけでこの都市の技術力の高さが分かる)

 

 何気なく座ったソファーの質の高さに驚いたユウキ。部屋の中をぐるりと見回してみると、価値が高そうな調度品が飾られている。目利きに自信はないので、実のところ価値については分からないけれども、高そうであるのは分かった。

 

 自分なんかが不用意に座ったり、触ったりして汚してしまったら弁償なんて出来ないだろう。そう思って、細心の注意を払って深くは座らずソフィーにちょこんと遠慮しつつ腰を下ろしたユウキ。

 

 ユウキが部屋の中をこっそり観察している間に、フランマが紅茶と茶請けの菓子を用意する。そして、テーブルを挟んでユウキが座る向かいのソファーに互いの顔が真正面で見えるような位置に座った。そして彼女は話を始めた。

 

「自由都市チキュウテンセイは初代都市長であったハヤトという人物が、コチラの異世界に意図せずやって来てしまった数々の転生者を保護するために、という目的で造られた場所なんじゃ」

「案内人のオスキツさん、でしたか。彼に少しだけ話を聞いています。それから、自分以外の転生者が普通に生活している、だなんて知りませんでした」

 ユウキは用意された紅茶にお礼を言って、喉を潤し気持ちを整え直して答えた。自由都市チキュウテンセイなんて名前の都市が有るので、もしかしたら居るかもしれないとは予想ていた。けれど実際に転生者であるらしい人物に会うのは、今回で初めてだったから。

 

「今この都市には52名の転生者、もしくは転移者がおる」

「そんなに!?」

 フランマの口から出てきた、想定していたよりも多い転生者の数に驚くユウキ。片手で数えられるぐらいだろうと考えていたのに、その十倍ぐらいの数が飛び出てきたから。

 

「世界中には、もっと沢山居ると思うぞ。ただ、この自由都市に一番多く集まっているとは思うがのう」

「なるほど」

 自分のように今まで20年近く自由都市チキュウテンセイに関わってこなかった人間が居る。未だに存在を知られていないような転生者が、この世界に多くいるのだろうと思い知ったユウキ。

 

「とこれで、なぜ今回俺を呼んだんですか?」
 雑談を程々にして、ようやく少しだけ緊張が解れたユウキは早速本題に突っ込んでいった。

 

「うむ、そうじゃった。今回君を呼んだのは他でもない。転生者であるユウキくんにも、ぜひ我が自由都市に移住してきて欲しいと思ったからじゃ」

 

「移住、ですか?」

「あぁ、そうじゃ。この自由都市チキュウテンセイには、次のような目的がある」

 1つ、転生者、転移者を保護すること。
 1つ、種族関係なく共存できる場所をつくること。
 1つ、長寿、永遠を生きるような者たちの退屈を紛らわせる娯楽を創ること。
 1つ、魔王による世界破壊を阻止するため、戦力の準備を整えること。

 

「え? 魔王?」

 フランマが説明している途中、突然出てきたキーワードに再び驚きの声を上げたユウキ。

 

「うむ。実はこの世界には、度々魔王が出現しておるのじゃ」

「そんな話、聞いたことないんですけれど」
 この世界に魔王が現れる事はユウキも知っている。そして、過去に現れたという歴史も知っていた。だが前回の魔王出現は、もう300年以上も昔の事だった筈。度々魔王が出現しているなんて事は知らなかった。出現したのならば、世界全体で協力して対処しなければならない大問題なのだから。

 

「我々は、常に魔王出現の観測をし続けておるのじゃ。そして出現を観測した場合には、我々が討伐に出ておるからな。世間で噂されるようになる前には全て片付けておるから、知る者も少ないのだろう」

「そうなんですか」

「まぁ、とにかく。色々な事態に対処したり目的を果たすため、転生者や転移者は一箇所に集まっていたほうが都合が良い。ということで転生者であるユウキくんにも、この自由都市に移住してきとほしいとうい訳じゃ」

「んー、なるほど。そうなんですか」

 

「もちろん、今の話はお願いであって強制ではない。移住が嫌だったなら、拒否してくれても構わぬ」

「う、うーん……」

 今日、初めて知ることになった色々な話について、まだ整理できず頭がこんがらかるユウキ。そして、混乱している間は結論を出すべきではないと思う彼は即答を避けて回答を濁した。

 

「よければ、しばらくは滞在していてくれぬだろうか。休むための宿なら、コチラが用意しよう。その間に色々と都市を見て、それから結論を出してくれれば良い」

「……そうですか。それじゃ、それでお願いします」

 最良の結論を出すため、考えるのにもうちょっと情報が欲しいと思ったユウキは、彼女の提案に飛びついた。しばらくの間、自由都市チキュウテンセイに滞在する事を決めるのだった。

 

 

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