キョウキョウ NOVEL's

キョウキョウ著によるオリジナル小説を公開しています。

第09話 夢の目覚め

 これは転生者ユウキが自由都市チキュウテンセイに訪れるよりも、もっとずっと昔のお話。

 
***


 オスキツの意識がハッキリした時、目の前には何も無い真っ白な空間が広がっていた。

 

 そしてなぜか、オスキツは自分の身体が空中にプカプカと浮いているのを感じていた。落ちている訳でもなく飛んでいる訳でもなく、浮き輪で波に流されているかのように、ただ空中にプカプカと浮かんでいるだけ。不思議な感覚だった。

 ここは何処だろうと疑問に思い、辺りを見渡そうとした瞬間だった。オスキツの頭の中に様々な情報が駆け巡った。

 

「なるほど、そういう事ね」

 形は無いが太古の昔から存在していたソレに、どういう因果なのか、今この瞬間にオスキツの意識が合わさった。それにより自分という存在がこの世界に誕生した、という事らしい。

 

「私は夢の住人、夢という存在が私という意識を持った事により顕在した、ということなのね」

 自分の存在について、改めて確認するように口ずさむ。そうやって自覚した彼女はさっそく、能力を発揮してみた。

 夢の住人として何千、何万人もの人々の夢を渡り歩き、その世界に関しての情報収集を行った。

 

 その世界に住む様々な人々の記憶。王国のトップである王様から、貴族に、一般市民、それにスラム街の住人や盗賊なども関係なく、目に入った人物をランダムで選び毎夜毎夜ごとにリサーチを行っていった。

 

 そうやって、分かった事がたくさんあった。

 

 この世界が、中世ヨーロッパぐらいの発展具合だということ。自分の知っている過去なのかもと思ったけれど、考え違いだとういこともすぐに理解した。

 なぜなら、彼女の知っている世界とは大きく違っていて魔法が存在していたり、モンスターが存在している。彼女にとってファンタジーな世界であった。

 

 それに、人間以外の種族、いわゆる亜人も存在していた。聞いたこともない国名も多数ある。ついでにダンジョンなんて不思議な場所も有るらしい。等など、ここが異世界であるということは、オスキツが集めた情報から読み解くと明らかだった。

 

 そして彼女は今後どうするべきか考えるために、自分の能力について改めて確認してみた。

 どうやら自分は普通の人間ではないらしくて、夢の住人ということらしい。夢の中で生きる事ができるという。夢が存在し続ければ、オスキツは自分が死なないということを知った。

 

 他にも、夢の中で思い描けば現実にその一部を反映できる。例えば、女の姿から男の姿に、能力を駆使することによって性別を自由自在に変化させることが出来る。

 加えて、オスキツは夢の中を通じて好きな場所に一瞬で移動できる、という能力もあった。

 死ぬことはないし、性別を自由自在に変えることが出来て、瞬間移動も出来る。欠点があるとするならば、攻撃する力はが無いという事ぐらい。

 けれど、戦いが巻き起こりそうになったら相手を倒すのを目的にせず、一目散に逃げれば問題になさそうだ。誰にも負けることはない、とてつもなく強力なチート能力だとオスキツは思った。

 

 

「自由都市チキュウテンセイ? 変な名前だなぁ」
 それは世界中の人々から情報をリサーチしている最中に目に入ってきた、新たな情報。

 

 オスキツが初めてその名を目にした時、そんな感想を抱いていた。直球すぎる、その名前に強烈なインパクトを受ける。そして、この世界には自分以外にも転生者がいるらしい、という事を知った。

 

 更に詳しく調べてみると、自由都市チキュウテンセイの都市長を務めているのがハヤトという人間、たぶん転生者なのだろうと推測。オスキツは早速、彼の夢を訪れて覗き見ることにした。

 

「ほー、ほー、なるほど、なるほど」

 ハヤトの見る夢に飛び込んでいったオスキツは、能力を使って彼に関する過去の出来事を次々に明らかにしていった。

 どうやら彼は王国の貴族の一人だったらしい。過去に戦争やいざこざがあって、今は自由都市チキュウテンセイという場所を統治する都市長という立場に納まったらしい。

 都市にへんてこな名前を付けたのは、同じ様な境遇の転生者仲間を集めること。そして、もう一つ理由があるらしい。彼はその目的を果たすとうい為に、都市名にチキュウテンセイなんて付けたらしい。その目的とは……。

 

「!?」

 自由都市チキュウテンセイの都市長であるハヤトの夢を覗き見ていたオスキツは、次の瞬間、何者かの視線を感じて背筋が凍った。

 

 今まで遭遇した事のない初めての経験、強烈な危機を感じてオスキツはリサーチを慌てて中断し、何が起きているのか落ち着いて解き明かそうとした。

 

(自分以外で、誰か、ここに侵入してきている!?)

 夢の中でオスキツは、息を殺して潜む。鳥肌が立ったまま、止まらない。しかも何が起こっているのか、夢の住人である彼女にも事態を掴めないでいた。

 

 しかし、このままココに留まり続けても危険だ。ハヤトの夢の中から急いで逃げ出そうとしたオスキツの目に、あるモノが映った。

 

(やばい……、やばい、やばい、やばい!)

 巨大な生物の目が、オスキツをターゲットにしていた。その生物と目が合ってしまった瞬間、気が付けば後先考えず全力で夢の中から飛び出していた。

 


 どう逃げてきたのか、追いつかれないように必死で記憶が混乱していた。だが、なんとか逃げ出せたと思う。

 

「ドラゴン、だったよね……。なんで、ドラゴンなんかが人の夢の中に……」

 思い出すのは、先程の生物。驚くほど大きな図体、硬そうな鱗に全身を覆われた爬虫類を思わせる体。

 逃げてきたオスキツは、恐怖により呼吸が荒くなっていた。全身汗でびっしょりと濡れてきた。

 死ぬことは無いと知っていても、あんな鋭い眼光で睨まれてしまった瞬間、死を覚悟する程の危険を感じていた。

 確実に、自分の姿は相手に見られている。目が合っただけだが敵なのか、味方なのか。どちらにしろ、絶対に敵わない相手である。

 

 チートな能力を手に入れて浮かれていた。不用意に夢を覗き見に行ってしまった結果、オスキツにとって最悪の事態となっていた。確実に姿を見られてしまったと思う。興味本位なんかで見に行くべきではなかったか。

 今回は無事に出げ出すことが出来たけれど、次はどうなるか。突然の出会いは、あまりにもショックが大きすぎて、しばらくは何も考えられない状態となってしまったオスキツ。

 

 

<< 前へ  次へ >>     目次

【スポンサーリンク】