キョウキョウ NOVEL's

キョウキョウ著によるオリジナル小説を公開しています。

プロローグ

「ここが自由都市チキュウテンセイ、ですか……」

 

 青年が大きな防壁を見上げながら、そう小さく呟いた。

 

 都市を守る為に作られた、その防壁は冗談のような名前をしている都市の周りをぐるりと囲むように造られていた。青年は自由都市についてウワサで聞いていたけれど、現実に存在している場所だというのを目にしたのは初めてだった。

 

 かなり有名な場所でもある、という事を青年は耳にして知っていた。この世界中にある国や都市の中では、一番に発展しているだろう場所だと言われているらしい。

 

「ようこそ、ユウキ君。ここが僕の住んでいる自由都市チキュウテンセイだ。君を歓迎するよ」

 都市の入り口から圧倒されていた青年。彼の名を呼び、言葉と共に両手を大きく広げて歓迎するというポーズを取ったのは、見た目が同じぐらいな年頃の、これまた青年。

 

 二人共、背に大剣を背負って武装していた。服装も革鎧に頑丈そうな布製ズボン。まさに冒険者という様な格好だった。

 

「ウワサには聞いていたけれど……、防壁がこんなに大きく立派な街を初めて目にしましたよ。王国の城壁よりも更にデカイ。ココって話に聞いていた通り、すごく発展した所のようですね」

「さっき少し話したけれど、ココは僕たちと同じような仲間が集まって色々な能力を駆使して長年掛けて作ってきた場所だからね」

「はぁ……俺たちと同じような仲間、ですか」

 ユウキは”同じ”という言葉に心当たりがあった。彼は転生者である。つまり、この都市を創ったというのも、ユウキは自分と同じ”転生者”だという事を察する。

 

「チキュウテンセイって名前も、気づく人に気づいてもらえるように分かりやすい名前を付けたってのが始まりなんだよね」

「むしろ、警戒して近寄りがたいって思ったりするんですけど……」

 この世界の人間には特に違和感も無く受け入れられているらしい。だがしかし、その意味や内容を知る者が居れば、”チキュウテンセイ”なんてあからさますぎる言葉。ド直球すぎる都市の名前だから、実は罠か何かでおびき寄せて危害を加えようと企んでいるんじゃないかと警戒してしまいそうだ。

 

 何年も前からユウキも自由都市チキュウテンセイの存在については知っていた。けれども、実態が一体どうなのか知らないから強く警戒していた。

 

 聞いたウワサによれば、自由都市チキュウテンセイはかなり好戦的な場所だと。過去に何度も様々な国々と戦争を行ってきた、という歴史が残っている。

 

 転生者である関係で目を付けられるのも嫌だったので、それ以上詳しく調べようともしなかった。ユウキは今まで意識的に関わり合いにはならないよう、注意して都市には近付いて来なかった。

 しかし今日、案内人を名乗る青年に連れられてユウキはその場所へとやって来ていた。


「まぁ、警戒するよね。過去に自由都市チキュウテンセイの名前を頼りにしてココを訪ねて来た人は少ないかも。だから、僕のように案内人が必要になる」

 ユウキが今回、この場所を訪れた理由は都市に招待されたからだった。今までは近づかないように避けてきたけれども、突然ユウキの目の前に案内人と名乗る青年が現れた。

 

 もちろん、初対面時に自由都市チキュウテンセイからやって来た案内人を名乗る彼に対して、ユウキは非常に警戒していた。

 

 普段なら早々にお引き取りを願って関わり合いにならないようにする所なのだが、色々と都合よくタイミングが合わさって、少し案内人の話を聞いてみようかという気持ちになったユウキ。

 

 そして話を聞いているうちに、彼は自由都市チキュウテンセイに対して強い興味を持つようになっていた。自分の目で見てみたい、と思うようになり案内人の招待を受けたのだ。今まで避けてきたけど、一度は見てから判断しておいたほうが良い、という考えに変わって。

 

 そして今ユウキは、その自由都市チキュウテンセイに連れてこられて巨大な防壁の前に立っているという訳だった。

 しかも、案内人と名乗る青年の能力による瞬間移動によって、一瞬にしてココに連れてこられた。

 

「まぁ、色々と気になることは多いだろうから諸々の説明は都市長から聞いてくれ。これから役所に案内するから付いてきてくれるかい?」

「わかった。お願いします」

 案内人には、自由都市チキュウテンセイについて概要を少しだけ教えてもらったものの、ユウキには分からないことが多々あった。

 


 なぜ自分なんかを呼び寄せたのか。自分も転生者ではあるものの、漫画や小説のような派手なイベントに今の所は遭遇していない。ただ地味に静かに冒険者なんかを続けてきただけ。目を付けられたり、招かれる理由が見当たらない。

 

 それに転生者だという事が既にバレていた。今までは、誰にも話してこなかったユウキの秘密。一体どうやって知られたのだろか。いつから知られていたのだろうか。

 

 それから、目の前に立つ案内人を含め、おそらく転生者は自分と同じように非常に強い力を持っていると思う。そんな人物が集まっている場所らしいけれど、一体どんな人物が集まっているのか、何をしようと企んでいるのだろうか。

 

 知ってしまうと、思いもしない出来事に意図せず巻き込まれそうで、今の状況を改めて考えてみると、今更になって怖いとユウキは感じていた。しかし興味もある。聞いて判断するしか無いだろう、と意を決した。

 


「こっちだよ」

「あぁ、うん。はい」

 先導する案内人に呼ばれて表面上は落ち着き払った態度を見せるユウキ。しかし、内心では恐る恐るといった感情を抑えながら、案内人の後ろを付いて歩くのだった。

 

 

次へ >>     目次

【スポンサーリンク】