キョウキョウ NOVEL's

キョウキョウ著によるオリジナル小説を公開しています。

38.突然の帰還

 目を覚ます。目を開くと、真っ暗な空間が広がっていた。

(いや、違う?)

 頭に、何かを装着していたので真っ暗に見えるだけだった。俺は、それをゆっくりと外して、あたりを見回す。

 

「……俺の部屋だ」
 俺が外したのは、ヘッドマンマウントディスプレイで、今いる場所は俺の住んでいた部屋だった。俺はゲームプレイ用専用の椅子に座った状態で、部屋にはテレビ、ベッド、デスクトップPC、洗濯物のハンガー、読もうと思って買った本が積んだ状態になっている等、ゲームを始めた時と同じ、状態だった。

 テーブルの上のカレンダー付きの時計に手を伸ばして取り、確認すると、俺の記憶が間違いなければゲームを始めた日と同じ日付だった。時刻は18時24分。カーテンの空いた窓から見える外は暗くなっている。
 しばらく、目が覚める前、気絶する原因、何があったかを思い出していた。宝石パチラケラを手にして、それが輝きだし、意識が飛んだ。そして目を覚ましたら、元の世界だった。

「俺は、元の世界に帰ってこれた?」

 そう判断して間違いないだろうか。俺は、先ず心を落ち着かせるために椅子から立ち上がると、部屋にある冷蔵庫を開け、中からビールを取り出した。プルトップを開けて、ビールを一気に飲む。それから、装着していたヘッドマウントディスプレイを手にとって、改めて調べてみた。

「これで、ゲームをしたから異世界に……?」

 装着部分やディスプレイの部分をじっくり調べてみた。しかし、別段珍しいところは見当たらず、ヘッドマウントディスプレイを調べることをやめて、次はパソコンを調べてみることにした。Make World Onlineのソフトウェアには特に異常は無かった。次に、インターネットブラウザを立ち上げて、インターネットで調べることにしてみた。

 Wikiページで作られたMake World Online攻略ページを確認すると、先行体験版のテスター達の情報交換がなされていた。その中では、最初のボスの攻略をどうするか、スタートはどの武器が有利か、新しい職業の取得方法や金稼ぎ方法などの情報がやりとりされていた。どうやら、俺と違って別の人達は普通にMake World Onlineをプレイ出来ているようだ。異世界に飛びましたという報告は、当然上がっていなかった。

 某掲示板に行っても見たが、こちらには真偽の程がはっきりしないゲーム内での情報と、先行体験版を手に入れられなかった人たちの愚痴の書き込みがあるだけで、気になるような情報は手に入らなかった。

「一体何だったんだろうか」

 理由は全然わからなかった。Make World Onlineをプレイしようとしたら、突然異世界へと旅立ち、そして、突然帰ってくることが出来た。
 最初の街の給士の仕事をした日々や、王国へと行ったこと。お姫様の事や、ドラゴンとの戦い、魔王との戦いが全て夢だったと言うのだろうか。夢だったんだという説明が一番わかりやすいが、しかし、体験した俺にはリアルで、夢なんかでは絶対ないと確信している。じゃあ、今の状態をどう説明するのか。

 しかも、異世界での生活を送っていた俺は、何ヶ月もの期間を過ごしたと思っていたのだが、こちらの現世の世界では1日も経っていなかった。

 頭がこんがらがったまま、俺はシャワーを浴びて、その日は眠ることにした。

 

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「昨日と変わりなく……か」
 目覚ましの音がなり、俺は起き上がる。目覚ましを止めて、辺りを見回すと、眠る前と同じ、俺の部屋の中だった。
 シャワーを浴びた後、そのままぐっすりと眠ってみたが、起きるとそのまま俺の部屋だった。もしかしたら、俺はパチラケラの光を浴びた時に倒れて、現世へ帰還したなんて夢を見ているだけだと考えていたのだが、本当に戻ってこられたようだった。

(いや、帰ってこれたんだからこれで良いんだ……)

 突然の事に、びっくりしている気持ちがあるが、目的とした元の世界への帰還ができたんだから、良いんだと自分に言い聞かせる。

 俺は、スーツに着替えて、会社に行くことにした。カッターシャツをハンガーから取り出し、ヨレヨレのスーツを来て、首にネクタイを巻く。社員証や、仕事の残りの資料、会社に持っていく物と、通勤中の暇つぶし用の本を、かばんの中に放り込み、俺は家を出た。

 

 

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