キョウキョウ NOVEL's

キョウキョウ著によるオリジナル小説を公開しています。

37.帰還の手がかり、そして

 お姫様の経過観察は順調に、そして問題なく進む。その事を女王様に報告すると、安心して王国の政務に戻っていった。勇者の子孫とのいざこざ等の問題はあったが、俺は勇者ハヤセナオトの帰還について、引き続き調べていた。

 城の図書室には、数万冊の本が保管されている。その中でも、勇者に関する書籍だけで千冊以上あると聞いている。さらに、帰還に関する資料に絞って調べていた俺は、3週間で150冊程を調べ終わっていた。しかし、目的としている帰還の方法について書かれた本は見当たらなかった。勇者の帰還に関する情報の記述は見つかるのだが、どうやって帰ってていったのかが見つからない。

 本を本棚から探し出し、テーブルまで5冊程を持って座り、文字を読む。そして、目的としている情報が書かれていないか調べて、見当たらなかったら本を本棚に戻す。そんな事を繰り返し、情報を調べ続けていた。3週間もの時間を掛けて、目立った成果を手に入れられていない俺は、半分ぐらい諦めかけていた。

 文字を読み疲れて、パラパラと本を眺めながらボーっとしていた時にそれを見つけた。

 

 “魔王を封印した勇者は、パチラケラというアイテムを使って自分の国へと帰っていった“

 

 ボーっとしていた頭が一気に冴える。俺は、その一文を改めて読み返した。“パチラケラ“というものが何か分からなかったが、勇者が自分の国へ帰っていった時にアイテムを使ったという記述は初めて見た。改めて、本を確認し直すと、題名には「勇者ハヤセナオトの一生」と書かれた本で、冒頭は勇者が現れた所から始まり、帰還までを事細かに記してあった。500ページぐらいの本で、後半部分の文章をよく読み込むと、パチラケラというアイテムの正体がわかった。パチラケラは、宝石のような紫色に輝く、小さな石らしい。

「やっと見つけた……」
 俺は自然とそんな言葉を口にだしていた。調べていることは無駄ではなかった。これで帰るための第一歩を進んだような気がした。

 

 本を更に読み進めると、そのパチラケラは現存していて、子孫に代々受け継がれていると書かれている。本の書かれた時代がいつかは知らないが、今もあるのだろうかと考える。そして俺は、そういえば、と思い出す。たしか、勇者の子孫である、シビル・キャクストン・ナオトが身につけていた首飾りが紫色の宝石が付いていたことを。

 早速、図書室を後にして、シビルを探しだした。普段は向こうから現れるのに、こんな時に限って勇者の子孫シビルは見つからなかった。

 城のあちこちを探し、城には居ないと聞くと、城下町へ出て探し、近くの森に仕事に行っていると聞くと、俺も近くの森へと向かった。

「くそっ、一体どこに行ったんだろう」

 パチラケラについて聞きたいのに、本人が居ない。俺は必死にシビルを探す。頑張って探した甲斐があってか、森の少し進んだ先にシビルを見つけた。遠くからでも、ひと目で分かる格好をしている。
「おい、シビル。こんな所に居たのか。探したぞ」

「なんだ、君か……。俺に何の用だい?」
 シビルがうっとうしそうな風に声を出しながら振り返り、俺を見る。その胸に首飾りをしているのを見つける。首飾りの先には、紫の宝石のようなものを付けている。あれがパチラケラだろうか。

「少し聞きたいことがあるんだが……」
「なんだい?」
 不遜な態度だが、質問には答えてくれるようだ。

「パチラケラって知っているか?」

 すると、驚いた顔になるシビル。
「君、これを知っているのか?」
 胸元の首飾りを手にして、話す。やはり、間違いない。あれがパチラケラだろう。
「その首飾り、少し貸してくれないか?」
 ダメモトで聞いてみると、シビルは少し悩んだような顔をした。やはりダメだろうかと諦めかけたその時。

「この首飾りの名前を知っていたのは、君が初めてだ」
 言いながら、首飾りを外して俺に差し出してくる。
「借りてもいいのか?」
 俺が聞くと、一つ頷き答えた。

「大事なものだから、壊すなよ」
 意外にも、見せてくれるようだった。彼の気が変わらないうちに、調べてしまおうと思い、シビルからパチラケラを受け取る。

 

 作りはかなりしっかりしていて、綺麗だった。勇者が使ったアイテムということは、400年以上経っているはずだから、ソレだけの歴史があるのに、そんな古いものには見えない。しっかりと管理されていたのだろう。

 宝石は綺麗な紫色で小さく、そして輝いているように見える。触り心地はサラサラと、凹凸が全くない球体だ。
 さわさわと触って調べていると、突然輝きが増してきた。その輝きは、段々大きくなっていった。

「おい、君、一体何をした?」
 慌てた声で、シビルが聞いてくる。しかし、俺には輝きだした原因に、心当たりは全くない。

「分からない! いきなり輝きだしたんだ」
 輝きは更に増して、眩しくて目が開けてられないくらいになった。そして、突然フッと意識が遠のいた。

 俺は、気を失った。

 

 

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