キョウキョウ NOVEL's

キョウキョウ著によるオリジナル小説を公開しています。

36.勇者の子孫と揉める

(何故、こんなことになったのか)

 今、俺の目の前には、お姫様の完治記念パーティーで出会った勇者の子孫と名乗るシビル・キャクストン・ナオトが立っていた。昨日の格好と同じように、目につくのは強烈な肩パットと、昨日の黄色のスーツとは違う、一度目にしたら頭から離れない、豪勢な造りの真っ赤な鎧を身にまとっている。そして、殺気立った目で俺を睨んでいて、手には剣を握り、俺に向けられている。

 パーティーの翌日。何時もどおり姫様の経過観察を行い、肺や肝臓、胃などの身体の器官に異常は特に見られないことを確認した後。部屋を出ようとした時、シビル・キャクストン・ナオトが姫様の部屋へ入ってきて俺を見るなり、付いて来いと言った。彼は、最初から姫様の部屋に俺を探しに来たのだろう。彼は姫様に目もくれず、先に歩き出した。俺は彼の言うとおり、後を付いて行くと、城の兵士たちが使う修練場へとたどり着いたのだった。

「構えたまえ」
 シビル・キャクストン・ナオトが、俺に向かって静かにそう言った。光り輝き、目に痛い剣をまっすぐ俺に向けての言葉だった。その声にも、殺気がタップリと込められていた。
(構えろだって? 戦う気なのか?)

 何故彼は、こんなにも殺気立っているのだろうか。彼との間に、何かあったのかと考えてみるが、思いあたるフシがない。昨日のパーティーでは自己紹介をしただけで別れたと記憶を辿ってみるが、その場面でも彼がこんなにも殺気立つ理由が思いあたることも無いので、彼に聞いてみる事にした。

「なぁ、俺あんたに何かしたか? 何でそんな殺気立って……」
「問答無用」
 言いながら、斬りかかってきた。突然の事で驚きながらも、俺は急いで剣を抜き、彼の攻撃を受ける。レベルが高いおかげだろうか、それとも勇者という職業のおかげだろうか、難なく対応できた。

「ちょ、ちょっと待てって」
 斬りかかられる理由を知りたい俺は、彼に何故を問うが、聞き入れられない。
「聞く耳を持たん」
 次々に繰り出される攻撃を何とか受ける。縦横無尽に剣を振り回す彼の太刀筋は、見ていて綺麗だと思うほどだったが、今の俺には異常なレベルアップのお陰で対応できていた。そして、彼は切り上げ、切り落としの二段を繰り出し、俺がそれを受けると、彼は一旦距離を置いた。

「あの女の言うとおり、なかなかやるようだな」
「あの女って?」

 聞くが、返事は魔法で返された。

「炎の精霊よ、闇を払う炎を発現させよ、ブレイズブロウ」
「くそっ、ファイヤーボール」
 魔王との対決のときに出した魔法と同じファイヤーボール。とっさに出せる魔法は、いつもファイヤーボールだなと思いながら魔法を返す。相手の魔法と、俺の魔法がぶつかり合う。しかし、直ぐに相手の魔法は競り負けて、霧散する。

「なにっ!?」
 自信があった魔法だったのか、その魔法が競り負けて驚愕の声を出すシビル・キャクストン・ナオト。そのまま、避ける動作もせずに俺のファイヤーボールが命中する。

「熱いっ」
 彼の肩パッドにファイヤーボールの火が燃え移った。彼は地面にゴロゴロと転がりながら、肩に移った火を消した。無様だった。

「くそう、こんなはずでは……」
 彼は立ち上がると、鎧に着いた土を払い、なおも俺に向かって殺気の目を向ける。

「本当に、俺が何をしたんだよ。教えてくれよ」
「覚えていろ!」
 捨て台詞をはいて、シビル・キャクストン・ナオトは去っていった。本当に一体何だったんだろうか……。


 後日、彼が何故あんなにも殺気立っていたのかが分かった。
 勇者の子孫が言った“あの女”とは、魔王の事だったらしく、城の中で魔王と勇者の子孫が偶然出会い、いざこざがあった結果だという。その結果、魔王が勇者を挑発して、何故かその矛先が俺へと向けられたようだった。

 それからというもの、勇者の子孫シビル・キャクストン・ナオトは、俺を襲うようになり、その対応に追われるのだった。

 

 

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