キョウキョウ NOVEL's

キョウキョウ著によるオリジナル小説を公開しています。

35.勇者の子孫、登場

 肉や魚、野菜を色とりどり揃えた、テーブルにひっつき、食事を楽しんでいると、後ろから声を掛けられた。

「君が、ローレッタを治したという医者かい?」


 俺に声を掛けたのだろうか、視線を向けてみると、まず強烈な肩パットが目に飛び込んできた。何だ、あの肩パッドはと思った次の瞬間、真っ黄色なスーツに気づき、そして、自身に満ち溢れた男の顔へと視線が移る。奇抜な格好をした彼は、先ほどの集団の中には居なかった男である。香水だろうか、甘ったるい匂いが男のほうから、漂ってくる。


 ローレッタとは、お姫様の名前だろう。彼女をそう呼べる位、地位の高い人間なのだろうが、今まで城で生活してきて見た覚えのない人物だった。一体誰だろうか、分からなかったので聞いてみた。

「あなたは?」
俺は、見覚えのないその男に名前を聞こうとしたら、フンと鼻を一度鳴らされて、嫌味ったらしい声で、こう言われた。

 

「俺を知らないのか? どうやら、とんでもないど田舎人らしいな」
 その格好と相まって、言葉にもかなりイラッと来たが、冷静に落ち着いて、何も言い返さないでいると、勿体ぶりながら名前を教えてくれた。

 

「俺の名前は、シビル・キャクストン・ナオトだ。そのちっぽけな脳みそに刻んでおくんだな」
「ナオト……?」
 勇者の名前である、ナオトという名前。もしかして、勇者の子孫か何かだろうか。

 

「おぉ、よく気がついたね。その脳みそは、しっかり働いているようだ。俺は、勇者の直系の子孫。ハヤセナオトの後継者だ」

 考えの通り、彼は勇者ハヤセナオトの子孫らしかった。しかし、彼は一体どういう用件で俺を呼んだのだろうか。彼は、俺を医者と呼んだので、姫様に関してのことだろうか。

 

「その勇者の子孫様が、一体、俺に何の用だい?」
 皮肉げに様を付けて彼を呼んでみたが、とくに気にした風もなく、用件を話しだした。

 

「ローレッタを治してくれたことには感謝するが、君の出る幕では無かったかな」
 感謝という言葉を使いながらも、心から感謝している風ではなく、鬱陶しそうにそう言う。


「どういう意味だ?」
「君が居なくても、俺が彼女を治してあげていたと言うことだ。でしゃばってくれたおかげで、俺の華麗なる活躍が無かったことになった」
 彼は、俺がお姫様を治した事で、活躍の場を奪われたと感じているのかもしれない。

 

「……それは、済まなかった」
 段々と、イライラしていたが、彼は正真正銘の勇者の子孫だという。問題になると面倒くさそうだったので、適当にあしらう事にする。


「いやいや! 謝る必要はないのだよ」
 彼は胸の前で、気にしてないよという風に、手を交差させて振る。そして、続けて言った。
「ただ、でしゃばりな君は、今後気をつけたまえよ。では、俺はローレッタに挨拶の用があるから、失礼するよ」
 
 ハッハッハッと高笑いしながら、俺の元から離れていく彼。

「あー、厄介な奴と知り合ってしまったな」
「大丈夫か? ユウ」
 そばから離れて、壁の花となっていたパトリシアが、俺に近づき言った。


「あぁ、大丈夫だ。彼を知っているかい?」
「勇者ハヤセナオトの直系の子孫で、ナオトの名前を貰っている。凄い実力を持っているらしいのだが、自己中な考えと、選民思想、階級差別のお陰で、市民からは人気がない。他の直系じゃないけれど、勇者の子孫と呼ばれているホルスイやシェイラの方が、人気が高かったりする。私も彼は嫌いだ」
「その意見には同意するよ」
 あの、嫌味ったらしいネバつく声と言葉には、一度聞いたらイラッとして好きになる要素は見当たらない。

 

 俺は、嫌な気分を吹き飛ばすために、テーブルに並べてある食事を片っ端から堪能する。少々、意地汚いが、食欲を満たすことで、イライラを吹き飛ばそうとした。


「パトリシアもどうだ?」 
「あーん」
「自分で食えよ」
 そんな風に、パーティーを過ごした。
 それから、ようやく貴族たちの挨拶が終わったのか、女王のスピーチが始まった。スピーチの内容は、娘の病気が完治し、嬉しかったこと。そして、これから国の発展計画、国の発展を願って乾杯と続いた。

 

 スピーチが終わると、歓談の時間なのか、貴族たちはいくつかの集団に分かれて立ち話をしている。俺は、知り合いも特に居ないので、手持ち無沙汰になりながらパーティーの輪の外に突っ立っていた。

 

 そうして、二時間ほどでパーティーはお開きとなった。

 

 

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