キョウキョウ NOVEL's

キョウキョウ著によるオリジナル小説を公開しています。

34.姫様完治記念パーティ

 お姫様の完治は直ぐに国中に伝わった。と言っても、お姫様が病気だったことは、隠されていた事だったのだが、どこからか情報が漏れて、国民に知れ渡っていたということだった。今回の完治についても、すぐに知れ渡ることになり、国民に人気で信頼されたお姫様の完治を祝って、毎晩国民の皆がお酒を飲み交わして居るらしく、城下町の酒場が繁盛しているらしかった。

 実際に俺も、城下町へと繰り出して酒を飲みに行くと、酒場で騒いでいる女性達の集団が居るのを目の当たりにして、彼女たちがそうなのだろうと、分かった。

 城の方でも、女王様主導のもと、国の貴族たちを集めてお姫様の完治を祝うパーティーを開くそうだった。お姫様経由で、俺は詳細を聞かされて、パーティーにも誘われたので、その催しに参加することになった。

 

「本当は、あまり大々的にして欲しくは無いのですが……」
 姫様は、祝ってくれることは嬉しいと言うが、あまりおおごとにはしてほしくは無いらしく、貴族たちを集めたパーティーを開くことに対しては嬉しそうではなかった。

 

「それだけ、大事にされているということですよ。さて、今日も調子が良いようですね。夜はしっかり眠れましたか?」
「はい、夜中に目がさめることもなく、朝までぐっすりです」
 目の下のくまも無く、眠気もなさそうなので、大丈夫か。

 

「食欲はありますか?」
「えぇ、朝食もパンをお代わりしてしまいました」
 食欲もあるようだ。
身体には特に異常も見当たらないので、大丈夫か。

 

「大丈夫なようですね」
俺の言葉に、一度頷くお姫様。
「えぇ、ありがとうございます」

 いつもの診断を終える。経過観察も特に異常は見られず、順調に健康状態が続いている。その後俺は、城の図書室へと戻ると、勇者に関する資料を集め始める。こちらはあまり順調に進んではいなかった。勇者に関する物語、逸話、伝説はありとあらゆる数があり、本当かどうか疑わしいものもある。そんな中で、特に記述が少ないのが帰還に関する情報だった。


 勇者は、自分の国へ帰っていったということは分かるのだが、それがどんな方法なのかという事、何時、何故に関しての情報が欲しいのだ。

 そんな風に、日々を過ごしていくと、いつの間にかパーティーの開催される日となった。

 俺はパトリシアを連れ立って参加するために、パーティーが開かれる大広間に行こうとしたのだが。


「ユウ様、パトリシア様、お待ちください」
 大広間へ向かう途中に城の兵士へ呼び止められた。
「ん? どうした?」
「こちらにお召し物を用意しましたので、着替えていただけませんか?」
 確かに、今の格好はいつも着ている旅人の服で、今から参加しようとしているパーティーに合わないかもしれない。


「わかった、用意してくれてありがとう。着替えるよ」
 一度自分の部屋へ戻り、着替える。スーツのような、この世界では珍しい作りの服で、しっかりと着こなす。


 パトリシアも、俺と同じような真っ黒なスーツにマントを羽織っている。似合っているよと褒めると、嬉しそうにしていた。着替えを終えて、気を取り直し、大広間へと向かう。

 広間には、既に何十もの人が居て、各々食事を楽しんでいるようだった。それぞれは、貴族だろうと思われる。俺達と同じ、スーツのような服装を着ている。男女比はやはり、女性が多いようにみえる。中には、男性も居るが、少ない。
 俺達は、集まっている人たちには混ざらす、壁に背もたれかからせて、ボーっとしている。

 

 十分ほど待っただろうか、女王とお姫様が現れる。女王は真っ赤なスーツを、お姫様は真っ赤なドレスを着ており、とても目立っていた。彼女たちは、今回の主役である。食事と会話を楽しんでいたお客たちが一気に彼女たちの周りに集まる。お姫様の元へ行くのは、集まった客達が一段落してからでいいだろう。
 俺は、客達が食事の置いてあるテーブルから離れた隙に、そばへと近寄り、食事を堪能する。パトリシアも一緒に、食事を楽しんだ。

 

 パーティーの豪勢な食事に見合っていて、とても美味しい。そんな風に、食事を楽しんでいると、人だかりになっていた輪がこちらへと近づいてきた。


(お、話は終わったかな?)
 人の集団が、近づいてくるので、食事の置いてあるテーブルから離れようと思った時、声を掛けられた。

 

「ユウ様」
 お姫様だった。客達が両脇に移動して、姫様と俺の間に立たないようにしている。そして、周りに集まっていた人たちの目線が俺へと集中する。


「完治おめでとう、ローレッタ様」
 俺は、とりあえずお祝いの言葉を口にする。
「ユウ様に治していただいて、今日を迎えることが出来ました。本当にありがとう御座います」
 腰を折って、お礼を言われる。そして、彼女はそれだけ言うと、また客達の相手に戻っていった。


(うーん、注目されていたな)
 お姫様の方から声を掛けられたので、かなり注目を浴びていた。興味深そうな目線を向ける者もいれば、物騒な鋭い目つきを向けてくる者もいた。厄介なことにならなければいいが。

 

 

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