キョウキョウ NOVEL's

キョウキョウ著によるオリジナル小説を公開しています。

33.治療

 王都へと戻った俺は、早速薬作りへと取り掛かった。ベベ草をそのまま使うだけでは、お姫様の魔法中毒に冒されている肺への効果は薄い。しかし、飲み薬へと作り変えることでベベ草の効果を何倍にも増幅させることが出来る。

 俺は、城の一室を借りて、薬を作るための道具の準備を始めた。医療のスキルと、賢者のスキルを最大限に活用して、何が必要な道具なのかを先ずリストアップ。それを、パトリシアとマリアの二人に手伝ってもらいながら城下町で揃えて、部屋に運び込んだ。

 それらの道具を使って、朝から晩まで一気に薬を作る。ベベ草のエキスを抽出して、蒸留させる。そして、その蒸留させた液体を集める。液体に、様々な薬を加える。出来上がった薬は会心の出来だった。これならば、お姫様の体調も良くなるだろう。


 早速出来上がった液体状の薬を、お姫様に持っていく。俺が部屋へ到着した時、お姫様は横になりながらヒューヒューと、苦しそうな息をしていた。肺が弱り切っているため、呼吸もままならない状態なのだ。もう少し薬が遅くなったら手遅れになるぐらい、具合が悪いのが見て取れる。
「これをゆっくり、水と合わせて飲んでください」
 息も絶え絶えに、苦しそうにしているお姫様にしっかりと水と一緒に飲むよう指示してから、上体を起こしてもらい、薬を渡す。お姫様は、お水と一緒にしっかりと薬を飲みこむ。俺は、お姫様から目を離さず、しっかりと観察を続ける。
「んっ」
 作った薬は即効性のあるもので、お姫様は真っ青にしていた顔に赤みが戻ってきていた。


「具合はどうですか?」
 俺はお姫様の調子を聞いてみた。
「大分楽になりました。ありがとうございます」
 べべ草を使った薬は、しっかりと効果があったようだった。後は、今後の調子を見守っていくことが大事だ。

 毎日、薬を作ってお姫様の部屋へ持って行き尋ねる。それが俺の日課となった。床に臥せっていたお姫様は、上体がしっかりと起こせるようになり、次は、ベッドから降りて一人で立ち上がれるようになり、最終的には外での散歩ができるようになるまで回復した。

 

 そんな日々が過ぎ去って、薬をお姫様に飲ませ始めて十日目になった頃。
「お薬をどうぞ」
「ありがとうございます。ユウ様」
 今ではすっかり回復して、受け答えもちゃんと出来るようになった。不自然な呼吸音もなく、肺が正常な状態に戻ったことが分かる。お姫様はいつもと同じように薬を受け取り、それを飲み込む。特に大きな問題も起こらず、日々は過ぎ去っていった。お姫様の薬を飲む手つきが手慣れるくらいには、日数が経った。

 

「もう、大丈夫でしょう。完治です」
 視診のスキルのお陰で、お姫様の健康状態は完全に良くなっているということが分かる。その事を伝えると、お姫様は嬉しそうに微笑んだ。
「まぁ、本当ですか!」
 本当に嬉しそうに、だが、口に手を当てて上品な動作で喜んでいる。しかし、次の瞬間顔を暗くする。


「これで、ユウ様とはお別れですか?」
「いや、まだ経過観察が必要でしょう。完治したからといって、再発する可能性はゼロではないので」
 そして厄介なことに、魔法中毒は肺への影響以外にも、身体の器官全てに何らかの影響をおよぼす危険がある。肺が治ったが、胃や肝臓などの他の部分に不備が生じる可能性があるので、観察を続けなければいけない。まぁ、肺が弱っていた頃に他の器官が弱らなかったので、その可能性は殆ど無いと思われるが、念のため1週間ほどは観察を続ける必要があると、医師の職業の知識からそう考える。そのようなことを、お姫様に伝えると逆に嬉しそうな顔をした。

 

「そうですか、お別れでは無いのですね」
「えぇ、お別れはまだまだ先です」
 俺は、お姫様が俺と別れたがっていないという事実に嬉しく思った。多少は、俺に対して好意を持ってくれているということだろうか。
治療中の会話を通して、俺は更にお姫様に惹かれるようになっていた。

 

 それから俺は、女王にも完治の報告へと行った。
「本当に有難う、ユウ殿。貴方が居なければ、娘は本当に助からなかったでしょう」
 事実、国の医師たちはお姫様の症状の手がかりすら掴めずに居たので、俺はかなり役立ったのだろう。女王はその事を感謝っしている。

 

「何か、褒美をつかわそう。何か求めることはあるか?」
 お姫様を助けることが出来たことで、褒美を貰えるらしい。褒美を求めてやったことではないが、素直に受け取っておくことにする。


「それじゃあ、お城の図書室をこれからも使ってよろしいですか?」
「何だ、そんなことでいいのか? それなら自由に使って良いぞ」

 俺は、まだ、帰還するための方法を諦めたわけではなかった。当初、勇者について調べて旅をしていた事を思い出し、その勇者の手がかりになる事、特に帰還に関する情報を求めて、お城にある資料を当たる。そのために、今回の褒美で城の図書室を自由に出入りできる権利を貰った。

 それから、お姫様の経過観察と平行して、お城の図書室で帰還のための情報集めを進めた。

 

 

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