キョウキョウ NOVEL's

キョウキョウ著によるオリジナル小説を公開しています。

32.王都への帰還

 予定は大分狂ったが、目的であるベベ草を手に入れることができた。更に、帰りはアギー山脈を通らずに、旧魔王領を通っての帰還である。予定していた日数よりも大幅に早く王都へと帰ることが出来そうである。

 旧魔王領から王都へ向かう途中、アギー山脈に比べるとモンスターの襲撃数は少ないが、それでも何度か戦闘が発生した。その度に、魔王が一足早く魔物に攻撃していき、魔王がモンスターを一匹残らず倒していった。そして、その実力を俺へと見せつけた。その辺りに発生するモンスターならば楽々と倒せることが分かると、自慢げな顔をして俺に向かってこう言うのだった。
「ほうら、我の実力は元に戻りつつある。いつか貴様を、このモンスターと同じ姿にしてくれるわ」

 ファンタジーの世界としては、モンスターは魔王の手下、仲間なんじゃないのかと疑問に思ったので聞いてみると、意外な答えが返って来た。

「モンスターが我の手下だと? それは違うぞ、勇者の子孫よ。モンスターと魔族は全く違う者達だ。それに、我の手下は全て勇者によって滅ぼされてしまったからな」

 そして、魔王は懐かしそうな顔をして遠くを見た。多分、手下であった魔族の事を思い出しているのだろう。その顔には、仲間を想う悲しさが見て取れた。
 過去の勇者がどのような考えで魔族を滅ぼしたのか。そして、魔王を封印したのかは、今となっては勇者に聞くことも出来ずに、理解できないが、魔王側にも事情があったことを、勇者は理解していたのだろうか。滅ぼされた側が、このような悲しい顔をする。俺は、魔王に同情の心を持ってしまっていた。

 そのような事を話し合いながら、王都への道を歩き続けた。荷物を全て、バーゼルへと落としてきたので、逆に身軽になった。そのため、一日中歩き続けても大丈夫だった。むしろ、お姫様の体調を考えて、マリアとクリスティーナは少しでも早く到着するようにと、一日中歩き続けることを提案して来たので、俺とパトリシアはその考えに同意して、歩き続けた。意外にも魔王は、文句の一つもなく付いてきたので、問題は無かった。

 王都が見えるところへ来た頃。俺は、魔王に最終確認をしていた。
「本当に、人間は襲わないんだな?」
「襲わんと言っておろうが。今の目的は、勇者の子孫、貴様だけだ」

 目を見て、判断する。大丈夫だろうと、直感がそう告げる。旧魔王領から王都への道中、パトリシア、マリアにクリスティーナへの危害を全く加え無かったので、その経験も加味して、判断したから大丈夫だろう。
「一応、この布を被って、角は隠しておこう」
俺は着ていた外套を脱ぎ、魔王へと渡す。魔王は、道中での歩きに文句を言わなかったのと同じく、外套を頭に被ることにも文句を言わずになすがままになった。これなら、一目見ても魔族である魔王の事はばれないだろう。そもそも、魔族は400年前に滅んでいるので、王都の人間が角を見ても魔族とは直ぐにバレることはないだろう。だが、外套は念のため被らせておくことにした。

 王都の正門をくぐり、城下町へとさしかかる。魔王は、物珍しそうに辺りをキョロキョロと見ている。
「珍しそうに、どうした?」
 俺は、魔王があまりにも物珍しそうに見ているので聞いてみた。
「人間の街に来るのは初めてなのじゃ」
 実は、魔王は魔王城から出たことは一度もないらしく、人間達が暮らす村や街を見たこと無いらしい。もしかしたら、外へ出る口実として、俺達へと付いてきたのかもしれない。それで、この城下町も珍しそうに見ている。

 城下町を抜けて、城へと向かう。

 城の門には、女兵士たちが隙もなく見張っている。俺を見つけると、びっくりした顔をして近づいてきた。

「よくぞ、無事に戻られました」
 そして、俺達の旅を労ってくれる言葉を投げかけてくれた。直ぐに、城の中へと招き入れて、先ずは女王が待っている部屋へと案内してくれた。旅へ行ってから帰ってくる間に、一人増えたが、兵士はそのことには特に触れずに、何度も無事でよかったと言っていた。

 俺達が女王の待つ部屋へ入ると、女王は王座へと座っているのが見えた。俺達に目線を向けて、まず確認してきた。
「ベベ草は見つかりましたか?」
「えぇ、こちらにありますよ」
 俺は、懐に持っていたベベ草を女王へと見せる。

「その薬草で、娘は助かるのですね?」
「えぇ。今から、この薬草を調合して、治すための薬を作りたいと思います」
 女王は、ふっと息をついて安心しきった顔をした。
「本当に有難う。ユウ殿。遥か遠くの荒廃した土地から、よく無事に薬草を手に入れて帰って来てくれました。本当に感謝しています」
 女王は涙ぐみながら、感謝をしている。後は、この薬草を調合してお姫様を治すだけだ。
 俺は、女王に宣言したとおり、早速薬の調合へと取り掛かった。

 

 

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