キョウキョウ NOVEL's

キョウキョウ著によるオリジナル小説を公開しています。

31.敵じゃない

「ユウ、そいつは?」
 パトリシアが疑り深く、魔王を注視して聞いてくる。パトリシアの後ろで、マリアとクリスティーナも、魔王を見ている。

「なんじゃ、貴様らは」
 パトリシア達の視線をうっとうしそうに、魔王はそう言葉を返した。

(さて、どう説明しようか)
 説明の仕方に迷ったが、そのまま伝えることにした。

「彼女は、魔王らしいんだが……」
「まおう?……魔王だって!?」
 最初、魔王という言葉を認識できずに、魔王って何という顔をしていたパトリシアは、数秒後、魔王が何かが理解してびっくりしたように声を出す。

「彼女が、その魔王だというのですか?」
 マリアが、確認するように聞いてくる。マリアは、あまり信じていないようだった。俺は彼女の言葉にうなずきを返す。

 

「そのようなんだが……」
 その時、魔王がまた威圧のスキルを発動した。その効果により、パトリシア達がビクッと身体を反応させ、硬直させる。俺には何も効果が現れなかったが、どうやら、パトリシア達には大きな効果が現れたようだった。
「ふむ、そこの勇者と違って、ちゃんと効果があるようじゃのう」
 満足そうに頷いている魔王。


「おい、やめろ。彼女たちに危害を加えるなら、容赦はしないぞ」

 俺が、剣を手にすると魔王は、わかったわかったとダルそうに言って威圧のスキルを解除した。

「くっ……」
 身体の硬直が取れたパトリシアが、剣を抜き魔王を攻撃しようとする。
「おい、待ってくれ。パトリシア」
 何故か俺は、パトリシアの魔王に対する攻撃を止めていた。

 

「何故止める、ユウ。彼女は魔王なのだろう?」
 剣を抜いたまま、パトリシアは魔王を睨み言う。確かに、魔王ならばその反応が普通なのだろが。

「うん、魔王なんだろう。だけど、攻撃するのはちょっと待ってくれ」
 俺の言葉に、パトリシアは不承不承剣を収める。

「魔王さん」
「なんじゃ?」
 ちゃんと俺の言葉に返事をしてくれる。伝承に聞くような、人間を滅ぼした魔王だとは思えない。本当に彼女は、魔王なのだろうかと先ず疑ってみて、彼女に確認してみる。

 

「貴方は、昔人間を滅ぼした魔王なのか?」
「そうじゃ、我は憎き人間達を滅ぼした魔王じゃ」
「本当に?」
「本当じゃ」
 自分で魔王と名乗る存在。あまり、信じられないなぁ。それに今の自分の気持ちが、彼女を悪と断定できないでいる。

「魔王さんは、人間を滅ぼす?」
「いや、今の目的は貴様を倒すことだ」
 言いながら俺をビシッと指さす魔王。その言葉に、今の魔王が直ぐに人間を滅ぼすことはとりあえず無いと確信した。目的が俺に対してならば、大丈夫だろう。

 問題をとりあえず先送りにした。

 

「一緒についてくるか?」
 何故か、そんなふうに俺は魔王に対して提案していた。
「行く!」
 間髪入れずに、そして、無邪気に魔王は返事をした。

 魔王は、この魔王城を離れて、俺達と一緒についてくるという。
「貴様が、勇者の子孫ならば、我を封印した復讐をせねばならぬ」
 彼女は、そう言って俺についてくる気だった。何故、一緒についてくるのに条件として出したのかは分からなかったが、一緒についてくるならば、人間に危害を加えないように見張ることが出来る。今の俺と魔王との力の差があれば、止める事も可能だと考える。もしかしたら、ここで切り捨てるのが一番いい選択かも知れないが、俺はその選択を選ぶ気は全然無かった。

 

「ユウ、本当に一緒に連れて行くのか?」
 黙ってことの成り行きを見ていたパトリシアが、小さく俺に聞いてくる。
「魔王は悪そうな奴に見えないから大丈夫だろう」
 俺も声を小さく、魔王に聞こえないようにパトリシアに返事する。本当に、悪そうな奴に見えなかった。もしかしたら、俺の目が狂っているのかもしれないが、もし何かあれば、直ぐに倒せるぐらいの力の差はある。その事だけで、余裕に接することが出来た。

 

 魔王は、言って先を歩き出した。俺達は、魔王の後について歩き魔王城を後にした。

 

 

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