キョウキョウ NOVEL's

キョウキョウ著によるオリジナル小説を公開しています。

30.魔王?

(来るっ!)
 魔王の攻撃に備え、剣を握り直し、魔王を見据える。魔王は、素早く俺へ近づいてくる。その魔王は、近づいてくるスピードを活かしながら、握りこぶしを振り上げて、殴りかかってきた。手には、黒いモヤモヤとした何かが纏っていて、素手ではないようだ。

 魔王の攻撃をしっかり目で確認し観察しながら、魔王の拳を剣で受け止める。ガキンと剣と拳がぶつかり鳴った。

(よ、弱い……?)
 魔王の拳を、剣で受け止めたのだが、想像していたよりも、剣へ伝わってきた力は弱かった。俺は、そのまま魔王の拳を受け流す。

 更に魔王は、殴りかかってくるが、その全ての連打を、俺は剣で受け止めた。
(スピードも、対応出来る!)

 全て攻撃が防がれ、攻撃が無駄だとわかったのか、魔王は俺から距離を取った。
「な、中々やりおるな、人間!」

 魔王の顔を見ると、攻撃が全て防がれたことで多少焦っているようだった。手加減されていると思ったのだが、どうやら、彼女の顔を見ると本気の攻撃だったみたいだ。

「だが、魔法はどうじゃ!」
 すると、魔王は次に魔法を唱えだした。

「魔空の闇よりも、なお暗きものよ。汝の力もって等しく滅びを与えんことを。シャドウゼロ!」
 魔王の、前へつき出した右腕から、黒い影が浮かび上がった。そのモヤモヤとした黒い影は、魔王の手から離れて俺に向かって飛んできた。

「ファイヤーボール」
 俺は、スキルで取得していた魔法の中から、ファイヤーボールという魔法を放つ。俺が放ったファイヤーボールは、最下位魔法のモノだったが、スキルレベルはLv.10。威力は十分なはず。放ったファイヤーボールの魔法と魔王が放った魔法が、両者の中央で衝突し拮抗する。

 拮抗は直ぐに崩れた。魔王の唱えた、シャドウゼロという魔法は霧散し、黒いモヤモヤは空気中へと消えていった。残ったファイヤーボールは魔王を襲う!

「あちっ、あちっ!」
 魔王はファイヤーボールを何とかはねのけるが、つけていたマントに火が燃え移り、かなり慌てている。

 本当に彼女は魔王なのだろうか。明らかに、先ほど遭遇したドラゴンのほうが何倍も厄介だった。
「あんた、本当に魔王なのか?」
 俺は疑問をそのまま口にした。力も魔法も弱く、魔王という風格を感じない。マントの火を、何とか消した魔王は、俺へと向き直る。

「く、くそう。まだ、封印が解けたばかりで、本調子じゃないのじゃ!」
 魔王は言い訳しだした。本調子じゃないって言ったって、今の力じゃ、先ほど俺達を襲ったドラゴン共にも勝てないぞ、と俺は思った。魔王ならば、かなりの力を持った人物のはず。そこら辺のドラゴンに負けるわけ無いのにと思いながらも、やはり、力を比べてみたらドラゴンの方に分があるように感じた。

 改めて、魔王を観察すると頭に角が生えて居るのが見えた。この世界には、人間以外の人型の種族は魔族以外に確認されていないらしい。書物にも、ファンタジーにつきもののエルフやドワーフなどの亜人の存在を確認できなかった。なら、角が生えている彼女は、普通の人間じゃない。つまり、魔人なのだろう。魔王かどうかは疑わしいが。

 尚も、攻撃を続けている彼女を適当にあしらいつつ考察を進める。
(どうしたものか)
 魔王と名乗ったが、女性形の彼女を切り捨てるのは少々気分が悪い。ギリギリの戦いならともかく、こうも実力差があるとやる気が落ちる。これが拮抗した戦いなら、手加減なく戦えるのに。弱いものをいたぶる趣味は俺にはないので、どうしたものか悩む。

「このっ! このっ!」
 俺が、適当にあしらっているのが分かるのか、彼女は更にヒートアップして攻撃を仕掛けてくる。魔法は効かないどころか、反撃されるのが十分にわかったのか、主な攻撃方法は殴りだ。しかし、その殴りさえも俺は軽くあしらってしまう。

「なぁ、もうやめないか? あんたじゃ俺には勝てない」
 あまりにも弱く、あまりにも必死だったため、俺は彼女に戦いをやめることを提案した。俺の言葉は、とても偉そうだったが、彼女の弱さは嘘偽りない事だった。
「くっ! なんという屈辱!」
 彼女は悔しそうに地団駄を踏んだ。しかし、俺への攻撃は無駄である事はわかったのだろう、彼女は手を止めた。

 しばらく、悔しがる魔王を眺めていると、突然、悔しがるのをやめて、俺へ視線を向けてきた。

「お主、一体何者じゃ? 我の力が弱っているからといって、人間なんぞに遅れを取るとは思えんのじゃが」
「勇者……なのかな?」
 自分の今セットしている職業は勇者だ。何者かと問われれば、勇者だと答えても良いだろう。

「勇者……じゃと!」
 彼女は憎々しげに、勇者と言葉を漏らした。
「貴様、あの勇者の子孫か!」

「あの、ってどの勇者だ?」
 あの勇者、多分ハヤセナオトの事だろうと思うが、聞いてみる。
「我を長きに渡り封印した、あの勇者じゃ!」
 思い出しているのだろう、また地団駄を踏み始めた彼女。やはり、ハヤセナオトの事だろう。俺は彼の子孫ではないが。

 俺は、魔王に対して勇者ハヤセナオトの事を聞こうとしたその時。
「ユウ!」
 パトリシアの声だ。どうやら、下で待ちきれなかったのだろう、王座のあるこの部屋へとやって来てしまったらしい。パトリシアの後ろに、マリアとクリスティーナも居る。

 魔王について何て説明しようか悩む俺だった。

 

 

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