キョウキョウ NOVEL's

キョウキョウ著によるオリジナル小説を公開しています。

26.夜の襲撃者

 アギー山脈を下ると、そこには草原が広がっていた。地平線が見えるくらいに、遠くまで何もない。

「手分けをして探そう」
「わかりました」「わかった」「……わかった」
 俺の一言に、3人それぞれが言葉を発し頷く。そして、散開してベベ草を探し始める。散開といっても、モンスターの襲撃があることを考えて、互いが見える範囲に居るようにしているが。特に会話もなく、捜索は進む。

 ベベ草の特徴は、事前に城の図書室で資料を見つけてチェックしてある。特徴的な紫の色をした花をつけて、ギザギザの葉っぱをしているらしいので、見つけるのは簡単だろうと考えていたが、1時間ほど草原を歩いてみたが、見つからない。

 休憩を入れようと、皆に声を掛けて、ベベ草捜索を一時中断。その後、また再開しての繰り返しを4回程行うと、日が落ちてきて今日の捜索は中断となった。

 持ち物の食料が、残り少ない。帰る時を考えると、あと2,3日しかベベ草の捜索に日数を割けないと予想を立てる。果たして、3日で見つけることが出来るだろうか。

 4人で夕食をとり、マリアとパトリシアの二人が先に休む。クリスティーナと俺は、監視役で起きている。

「……見つかりませんね」
 クリスティーナがボソリと呟く。
「あぁ、バーゼルにあるはずなんだが」
 ベベ草はバーゼルにあると文献にはあったが、それは魔王によって滅ぼされる前の話だ。もしかしたら、一度焦土と化したバーゼルには、ベベ草は既に存在していないかもしれない。

 その時、何かの咆哮が遠くの方から聞こえた。
「クリスティーナ、二人を起こしてくれ」
「はい」
 クリスティーナに指示を出して、俺は、声が聞こえた方向を、目を凝らしてみて見る。そして、月光に照らされて、それは見えた。

――ドラゴン

 大きな翼をはためかせながら、飛ぶその姿は、力強く、そして大きかった。
素早く、荷物をまとめて逃げる準備をする。
「ユウ!」
「シッ」
 口に指を当てて、声を小さくするようにジェスチャーする。まだ、遠くの方に飛んでいるので聞こえはしないだろうが、見つかったらヤバイ。ドラゴンの飛行速度は早く、すぐ近くまで近づいてきていた。

 辺りを見回すが、隠れられそうな場所はない。荷物をまとめて、俺達は一箇所に集まり、防寒用の服を羽織り、ドラゴンの視界に見えないように工夫する。そして、隠れて息を潜める。

(俺一人なら逃げ切れるが……他の3人が難しい)
 女性達3人は、アギー山脈を超えて、レベルアップし、身体能力が上がったが、それでもドラゴンを相手にできるほど能力は上がっていないだろう。当然、置いて逃げることなんて出来ないので、今はただ息を潜めてドラゴンが通り過ぎさる事を祈るだけだった。

 ドラゴンの羽ばたく音が聞こえる所まで来ると、突然急降下を始めた。
(しまった、見つかっていたのか!)

 ドラゴンは、地面へと降り立つと咆哮を一つ放った。声の振動だけで、ブルブルと大気が震える。

「3人は逃げろ! 俺が足止めをする」
 俺のレベルなら、十分対応できるはずだ。倒せはしないが、足止めぐらいは出来るだろう。100メートルを超すドラゴンを前に、俺は身体が震えた。しかし決心して、剣を抜き、向かおうとする。

「ユウ! ダメだ。私は逃げない。一緒に戦おう」
 パトリシアが、俺の言うことを聞かず、剣を抜き放った。それに続いて、マリアも剣を構え、クリスティーナが弓を引き絞った。

「逃げろ! かなう相手じゃない」
 言いながら、俺はドラゴンに向かって斬りかかる。ガキンと金属同士が当たるような音を立てて、剣が弾き返される。
(くそっ、硬い!)

 剣は折れこそしなかったものの、もう何太刀か振るうと、折れてしまう可能性があることが分かってしまった。
「パトリシア離れろ! 逃げるんだ!」
 俺は、必死に逃げるように訴えるが、3人共聞かない。剣を弓に持ち替える。肌がダメなら柔らかいところを狙えと考え、ドラゴンの目に標的を向ける。素早く3発の矢を打つと、その内の一本が命中する。

 ドラゴンが咆哮する。目をやられて、いよいよ怒ったようだ。大きくしっぽを一振りする。
「くっ」「キャッ」

「パトリシア! マリア!」
 二人にドラゴンの振るったしっぽが命中する。吹き飛ばされ、何メートルも吹っ飛んだ。そのまま、二人はぴくりとも動かない。

「クリスティーナ、マリアを運べ!」

 事ここに至り、クリスティーナはやっと俺の言うことを聞いてくれた。
 俺は、残った矢の全てをデタラメにドラゴンに向かって放った。そのまま弓をドラゴンに向かって放り投げ、走る。

 ドラゴンの向こう側に倒れていたパトリシアを抱きかかえて、暴れているドラゴンの脇を通り抜ける。

その時、ドラゴンの咆哮がまた一つ聞こえる。目の前の、ドラゴンのものじゃない。空を見上げると、3匹ものドラゴンが地上に降りてくるのが見えた。

「くそっ! クリスティーナ! 早く!」

 俺は剣を抜き、大きく振るう。噛み付こうとしてくるドラゴンの口元を切りつけてやる。すると、俺のスキルである威圧がドラゴンに対しても効果を表したのか、4匹のドラゴンたちが怯んだ。

 その隙に、パトリシアを背負った俺と、マリアを背負ったクリスティーナは必死に草原を走った。

 

 

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