キョウキョウ NOVEL's

キョウキョウ著によるオリジナル小説を公開しています。

23.病気の原因

 マリアに案内されて、お姫様が居るらしい部屋へと通される俺たち。パトリシアの後ろには、女王様も一緒に付いてきている。
 コンコンとドアをノックして、お姫さまに対して部屋に来た事を知らせる。

「お姫様、マリアです。お医者様を連れてまいりました」
 マリアは自分の名前を告げる。自分の名前を告げるということは、お姫様もマリアの事を知っているということか。城の兵士とは聞いていたが、マリアは俺が想像していた以上に地位の高い人間なのかもしれない。

「入ってください」
 お姫様のものと思われる、か細い声が扉の向こう側から聞こえる。その声を聞いて、マリアは、扉を開き俺達を部屋の中へと招き入れる。

室内は、太陽光でいっぱいに照らされていて、眩しいぐらいに明るかった。その光の向こうに一人の少女が、下半身は布団の中にしまって、ベッドの上で座っていた。上半身を起こして、こちらを見ている。女王様と同じような金髪だが、彼女の髪の長さは短かった。肩に掛かるくらいの長さだ。そして、意志の強そうな大きな目。

 俺は彼女の目を見た瞬間、自分でも信じられないぐらい、ドキドキと心拍が上がり心臓が鳴り出した。このゲームに似た世界へやってきて、初めてこんなにも脈拍が上がったんじゃないかというぐらい、胸がドキドキとして痛くなった。
 原因はもしかしなくても、一目惚れ?

 今まで、この違う世界へとやって来て生活していたが、現実味がなく女性達をリアルに感じることがなく、その女性達に惹かれる感じはなかったが、お姫様は違った。理由は分からないが、見た瞬間に引き込まれるような、そんな感覚に陥り、一気に世界に現実味が増した。今まで、ゲームの世界、リアルじゃない世界、違う世界と感じていた、この世界が、彼女を見た瞬間、俺は現実にこの世界にいるのだという認識をさせられた。

 それ程に衝撃的な、圧倒的な出会いであった。

「……様、ユウ様」
 マリアの呼びかけに、ハッと気づく。今まで、呼びかけを聞き逃していたようだ。

「あ、あぁ、何だい? マリア」
「ユウ様、早速で申し訳ないのですが、お姫様を診ていただけますか?」
 そうだった、彼女の診察が、この部屋へ来た目的だった。

「あぁ、分かった。診てみよう」
 俺は、お姫様のベッドの近くにあった椅子を引き寄せて、彼女の目の前に座る。彼女の顔を見る度に、顔がほてるような感覚になる。恥ずかしくて顔を背けたいような気分になるが、何とか耐えて彼女を正視する。
「よろしくお願いします」
 お姫様が頭を下げて、お願いしてくる。これじゃあ、ダメだ、自分に集中しろと言い聞かせて、診察し始める。
診察の手順は、頭のなかに浮かぶ。まずは見た目から、原因を探ってみる。 顔色、首、身体から腕の先までを診てみたが、特に引っかかる点は見つからなかった。身体所見に問題はない。診察を進めるごとに、Lvが上がっていくが、見た目だけでは原因が探りきれない。

「他の医師が残した資料とかありますか?」
「こちらに」
 マリアは俺が求めているものを予想していたのか直ぐに、紙の束を俺に渡してくれる。渡された資料の紙をパラパラと確認してく。紙には、1年前から起こった、貧血に似た症状の記録から始まり、それから度々起こる失神、発熱、咳などの症状についての事が記されていた。

 いくつかの原因の候補が頭のなかに浮かび上がる。1年もの長い期間に渡り、彼女を苦しめた病気の原因。
 診察、視診がLv.50を超えた頃には、彼女の病気の原因がハッキリと特定できた。
「彼女の病状が、分かりました」
「本当に?」
 お姫様が、あまり信用してない様子で、俺に聞き返してくる。
「あなたの病状は、魔法中毒による肺の損傷です」
 お姫様に顔を向けて、今考えられるお姫様の病気の原因は魔法中毒だと告げる。

「魔法中毒?」
 女王様が疑問の言葉を出す。今度は、女王様に顔を向けて説明する。
「非常にまれな症状です。魔法中毒は、魔力の高い人間に起こる病気の一つです」
 そして俺は、医者の職業による知識と、賢者の職業の知識のお陰か、頭に浮かぶ魔法中毒の詳しい内容を更に解説していく。
「魔法は、空気中の魔の元、魔素によって引き起こされる現象なのですが、魔力が高い人間は、その魔素の吸収率が高く、その魔素を肺に吸い込むことで、肺が傷ついてしまう可能性があるのです」

「娘は、その魔力が高いために、肺が傷ついてしまっているのですね。治す方法は?」
「……治療するためには、魔素を吸い込んでも大丈夫なぐらいに、肺を強めるための、ある薬草が必要になります」
 俺は、頭に浮かぶその薬草の入手方法について、頭を悩まされた。なぜ悩むかといえば、手に入れる方法が難しいのだ。

「薬草……ですか?」
 言いにくそうにしている俺の言葉に、女王様が先を促す。
「えぇ、べべ草と呼ばれる薬草なのですが……」
 賢者の職業が、ベベ草の採取場所を頭に浮かび上がらせる。

「……採取が可能な場所が旧魔王城を超えた先、バーゼルという場所になります」

 

 

<< 前へ  次へ >>     目次

【スポンサーリンク】