キョウキョウ NOVEL's

キョウキョウ著によるオリジナル小説を公開しています。

20.夜の訪問者

「夜遅くにすみません。私、王都で兵士をやっているマリアと申します。こちらにユウ様と言う方が泊まっていると聞いて、訪ねたのですが、いらっしゃいますか?」

 俺の言葉に、扉の向こうから返事があった。王都? 王都の人間が一体何の用だろうか。パトリシアの方を見てみても心当たりはないのか、不思議そうな顔をしている。名前を呼ばれた俺も、心当たりは無い。
 身分を明かした相手に対して、一応、剣をしまう。少しの警戒をしながら、扉を開ける。扉の外には女性が二人立っていた。腰に剣を下げて、武装はしているが、敵意は感じられない。女性二人に見覚えもないので、本当に何の用か分からない。

「いやー、夜遅くに本当にすいません。あなたがユウ様ですか?」
「はい、そうですが。一体何のようです?」
 返事をした女性は、ボーイッシュなショートカットで燃えるような赤い髪の色をしていた。それに、糸目で、表情はニコニコと笑顔になっている。

「最近、勇者について調査をしている人物が居ると王都に報告がありまして、その人物を探し出すために私達が駆り出されたのですが……。中に入っても?」
「とりあえず、中へどうぞ」
 長い話になりそうだったので、部屋に招き入れて話を聞く。

「どうも、すいません。おじゃまします」
「……失礼」
 マリアと名乗った女性の後ろには、対照的な長髪で青髪の女性が立っており、無表情な顔をしている。部屋に入るときに、一言小さく声を出す。

 パトリシアは、部屋に入ってきた二人の女性に強い視線を送りながら、俺の近くに寄って警戒している。入ってきた女性達は、部屋中央の床に座り込み話を始めた。

「最近勇者について探しまわっているのはあなた方ですか?」
「そうですが、何かマズイことでもありますか?」
 王都の方から兵士をよこすなんて、勇者について調べることが何か問題あったのだろうか。
「いえいえ、マズイことではありませんよ。ただ、勇者の研究をなさっているのに、王宮に報告が無かったので、念の為に調査しに来ただけです」
「報告が必要だったのですね……」
 俺は、勇者のことについて調べながら街を放浪していたので、その情報が王都に行って、二人の女性がココに来たのだろうと考える。しかし、勇者について調べるのに、報告が必要だったのか。
「この国で何かしら研究するならば、まず王都の資料館を利用するのが一番だと思うのですが、ユウ様は、まだ王都の資料館を訪れて居ないらしいというのが、不思議だったので、念の為に調査という形で、私達が遣わされました」
 まず王都に向かうべきだったかもしれない。研究をするならまず、王都と言われるるくらいだから、王都にある資料館を調べれば、元の世界に帰る方法が見つかったかもしれない。

「それで、ユウ様は勇者ハヤセナオトに関してどんな事を調べているのですか? 一体どんな研究を?」
 なおも、赤髪のマリアという女性が質問してくる。

「勇者の帰還後の事について。どうやって、帰ったのか、どこへ帰ったのか等です」
 元の世界へ戻るための情報を探していると、詳しく説明しても混乱されるだけだろうと考え、調べていることだけを伝える。

「なるほど。ちなみに、ユウ様は研究者として王都に仕える気はありませんか? 今なら、手厚い待遇が用意できますよ」
 いきなりのスカウト。元の世界へ帰るために、国に仕える気は殆ど無い俺は、どうやって断るか悩んだ。俺が、仕えるかどうかを悩んでいると勘違いしたのか、赤毛の女性は、さらに俺を説得する。

「実を言うと、国の人材不足が深刻でして。少しでも優秀な人材の方に国に付いてもらわないと大変なのです。今なら、良いところの地位を手に入れることも可能ですよ」

 俺は、これ以上説得されると困るので、きっぱりと断ることにした。
「すいません、国に仕える気はありません」
「そうですか……」
 赤毛の女性は残念そうにしながらも、あっさりと引き下がった。

「マリア……。医者……」
 赤毛の女性の横に居た、青毛の女性が喋ったと思ったら、赤毛の女性に向けての言葉だったらしい。赤毛の女性が聞くと、ポンと手を叩き、そういえばと話し始めた。

「またまた、ちなみになんですけど、ユウ様は医術の心得ってありますか?」
 医者の職業は習得済みであるので、そのように話す。
「医者の職業は持っています」

「本当ですか! 実は今、医者も探している最中なんですけれど」

赤毛の女性は喜び、言う。心なしか、青毛の女性も笑ったような顔で喜んでいるようだ。

「これは、機密事項なんですが、ユウ様は医術の心得があるってことで話しちゃいます。実は、ウチの国のお姫様が原因不明の病に罹っているのです」
 更に赤毛の女性は続けて言う。
「国の色々な医者に見せたのですが、原因が掴めず。姫様は、その病気で徐々に体力も落とされて、床に伏せがちになってしまっています」
 国の色々な医者に見せて分からない病気か。一体なんだろう、想像は付かない。
「お願いです。診てくださるだけでも良いので、私達と一緒に王都まで来て、姫様を診てください」

 頭を下げてお願いされる。こんな風にお願いされたら、断れない。
「一緒に王都へ行きますので、アタマを上げてください」
「ありがとうございます。本当に助かります」
 俺は勝手に王都に行くと言ったが、パトリシアはどうだろうか。賛成してくれるだろうか。パトリシアに目を合わせると、頷いてくれたので、王都に行くのは問題ないようだ。
突然の訪問者に、王都へ行く予定になった。マーリアンでの調べ物も、これ以上の情報は望めないと考え、王都へ向かうことになった。

「じゃあ、早速で悪いのですが、王都へと向かいましょう」
 病人が待っているので、1泊するのも辛抱できないのか、赤毛の女性は、早速王都へ向かおうと俺たちを急かす。
 仕方ないので、俺とパトリシアは荷物をまとめ、出発の準備を済ませて宿を後にした。

 

 

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