キョウキョウ NOVEL's

キョウキョウ著によるオリジナル小説を公開しています。

19.資料館で調べ物

 勇者ハヤセナオト資料館は、かなりデカイ建物だった。全3階建てで、1フロアもかなりの広さがある。

 1階には、様々な勇者に関するアイテムが揃えられて展示されている。展示しているものは、勇者の使ったと言われる、剣やナイフ、鎧などに加えて、外套や食べた食事の再現、勇者が読んだとされる書物など様々だ。

 2階は、勇者の事について書かれた書物が全大陸から集められて展示されている。読むのは自由だが、貸出はしていないらしい。20架以上の本棚があり、全て調べていくのは困難な作業になりそうであった。

 3階は、公開していない場所であり、見ることは出来なかった。

 1日目は、建物を見て回るだけで夕方過ぎになり、本を調べる作業は出来そうになかったので、パトリシアと一緒に酒場で夕食を取り、宿へと帰った。

 次の日、俺は一人で勇者ハヤセナオ資料館へと来ていた。パトリシアは、ギルドで仕事を請け負って、旅のお金を稼いでおくからと言って単独行動していた。俺は、パトリシアの好意を受け取り、勇者についての調べ事を進める。
 まずは2階にある本の中から、気になるタイトルを見つけ確認する。「勇者の帰還」「勇者の最期」「さらば勇者ハヤセナオト」等、帰還や終わりに関する資料を探しだして読んでみる。

 しかし、中々もとの世界へ帰る手がかりになりそうなものはない。

 分かった事と言えば、勇者ハヤセナオトは王都から、何らかの方法で自分の国へと帰っていったということだ。物語の最後が、王都で終わっている事。本の終わりが、光りに包まれて勇者ハヤセナオトは自分の国へと帰っていったと記されていること。

 ハヤセナオトにとっての自分の国とは、日本の事かどうか分からないが、名前の感じから日本人だろうと予測を立てているので、この最後に関する事柄を調べて行ったら、おのずと日本への帰還方法が分かるんじゃないかと、考えている。

 次に調べたのは、勇者の始まりについて。マーリアンの街の成り立ちから、勇者が現れるまで、勇者が現れてから、それ以後マーリアンの街はどうしたかについても調べてみたが、勇者が最初に現れるとされたキッカケが何か分からない。なぜ、勇者はこの地に突然現れたのだろうか。

 2日目は、ここまでで終了した。

 3日目には、魔王のことについても調べてみた。魔王とは、魔物たちの王で、魔物たちを使って人間達を脅かしていたようだ。この魔王も、勇者と同じように突然現れた存在らしいが、勇者が現れる5年前の年に魔物が凶暴化するようになり、そのとき初めて確認されたらしい。
 魔王が現れて以後、大陸の半数以上の土地が、魔王によって占領されて魔物も、さらに凶暴化。人間たちは、軍を作って対抗したが、ほとんどの戦いで敗戦。土地が奪われていったようだ。
そして5年後現れた勇者によって滅ぼされた。
容姿に関する資料を見ると、鬼のように二本の角を持っており、人間の何倍もの身体の大きさがあるみたいだ。よく、勇者は倒せたものだと思う。

 4日目、5日目には、あまり関係なさそうな資料も読み込んでいく。
 少し興味深い文献を発見。この世界に男が少ないのは、魔王の呪いによるものだと考えられている。勇者ハヤセナオトが魔王を打ち滅ぼした時、魔王は1つの呪いを残した。それが、魔王の呪いと呼ばれる、男性出生率低下の呪いらしい。魔王発生以前は、人口の男女比率は同じぐらいだったと記録されているが、魔王消滅以後、男性の人口が急激に低下。10人に1人の割合ぐらいでしか、男性が生まれなくなった。魔王の目的は、人類の自然消滅であるとか、第二第三の勇者を生まれさせないために、男性を生まれにくくさせたとか言われている。事実、旅をして街を見まわってみたが男性が異常に少ないことが実感して分かった。

 その他にも、勇者もレベルアップが異常に早かったという記録があり、様々な職業を習得しており、自由に付け替えることが出来たと書かれていて、まるで今の自分と同じような事が出来ると書かれてある。その記述を見た時、やはり勇者ハヤセナオトは、自分に近い存在なのだと感じた。

 調べ物を終えて、資料館を出てから、途中パトリシアと合流して、夕食を一緒に取り、宿へと帰る。

 5日間の調べ物が終わり、明日以降どうするかという話になった。
「調べ物は進んでいるかい、ユウ?」
 パトリシアが、俺を気遣い、聞いてくる。
「色々調べて分かったこともあるのですが、肝心の知りたい部分がまだ見つかっていません」
 俺は思案する。宿は五日間だけ取ってあるが、明日以降どうするか。もうマーリアンの街を出発して王都へと向かうべきか。まだ、残って調べるか。その場合は、宿の延泊が必要になるなぁ。それに、これ以上調べて何か分かるだろうか。

 コンコンと、突然扉のノックする音が、部屋に響き渡る。一体こんな夜遅くに誰だろう。宿の従業員に用事を申し付けた覚えはない。気配を読んでみると、扉の向こうに2人立っている。パトリシアと目を合わせるが、パトリシアも思い当たる人物は居ないのか、首を横に降っている。念のため、俺は、腰から剣を抜き出して何時でも対応できるようにする。パトリシアも同じように、音をさせずに、剣を抜き放った。パトリシアと俺が、準備は良いと頷き合う。

「どちら様ですか?」

 俺は、扉の向こう側に立っている人物に向けて声を掛けた。

 

 

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