キョウキョウ NOVEL's

キョウキョウ著によるオリジナル小説を公開しています。

18.勇者の街マーリアン

「やっと着いたぁ」
 最初の街からマーリアンの街まで約一ヶ月の日程が掛かった。途中、野宿やモンスター強襲などの出来事があったが、特に問題なく対処できていたので、体力的には全然疲れてはいなかったが、一ヶ月という長い期間で精神的にやられていた。俺は、やっとの思いでという感じで、言葉を出した。


「あぁ、到着したな」
 パトリシアはアッサリと、そう言った。それに、肉体的にも精神的にも、そんなに疲れてはいないようだった。どうやら、旅に慣れているらしい。野宿の準備や、夜番の仕方も勝手が分かる感じだったので、詳しくは聞いていないのだが、過去に旅に出た経験があったのかもしれないと予想する。


 一ヶ月もの長い道のりを超えて、勇者の街と呼ばれているマーリアンに到着した。なぜ、勇者の街と呼ばれているかというと、勇者ハヤセナオトが最初に現れた街だからだそうだ。その歴史をいつまでも大切にして、近隣街からは勇者の街と知られていた
 マーリアンに向かう途中の街や村でも、情報収集をしていたが、最初の街で調べた以上の、取り上げる価値のある情報は手に入れることができなかった。

 

 門番に冒険者身分証明証を見せて街の中へと入る。かなり活気がある街のようで、そこら中で店の呼び込みをしている。


「どうもこの街は、慌ただしいな」
 パトリシアは違う風に感じたようで、慌ただしいと言った。

 

「じゃあ、早速ギルドへ向かいますか」
「あぁ、そうだな」
 マーリアンの街へ来て、まずはギルドへと向かう。その後に、宿探しかな。頭のなかで予定を組みながら、ギルドへと向かう。

 

「こんにちは」
 俺がギルドへ入り、挨拶をする。後ろにパトリシアも続く。

「はい、こんにちは」
 柔和な表情をする、ギルド受付の男性。そういえば、どの街のギルドも、受付は男性だったが、ギルドの受付は男性という決まりがあるのだろうか。


「資料室を利用したいのですが」
 俺が、ギルドでいつもの様にそう聞くと、男性は驚いた顔をした。


「えっ? この街のギルドには、資料室はありませんよ」
 今度は、俺が驚く番だった。
「えっ? 資料室がない?」
 一番、情報を手に入れられると期待していた街に、資料室がない。しかし、俺は受付の次の言葉で安堵した。


「この街には、勇者ハヤセナオト資料館がありますからね。この街の本や資料は、資料館の方にまとめて保管されているから、調べ物なら、資料館を利用するのがいいですよ」
 勇者ハヤセナオト資料館……。どうやら、この街は本当に勇者の街と呼ばれるに相応しい、街のようだ。
 俺は、勇者ハヤセナオト資料館のある場所を受付に聞き出して、早速向かおうとした。


「先に、宿を取ろうか」
 パトリシアの言葉に、資料館は調べ物が長く掛かりそうだと感じて、言うとおりにする。
「そうですね、宿を探しましょう」
 お金は、ギルドの仕事を受けて25万ゴールドまで溜まっていたから、一ヶ月は仕事をしないでも、生きていけるぐらいの手持ちがある。

 宿を探して街を歩いてみると、かなり多くの宿があることがわかった。どうやら、勇者の街として観光地で有名になり、街の外からの客が多いのだろう。その客を泊めるための宿として、数も多くなったのだろう。

 

「どこに泊まりますか?」
「あの宿が、安そうだ」
 パトリシアは、宿泊料金を表に出していない宿でも、一目見て、宿泊料金を大体推測することが出来る。一体何を見て判断しているのか分からないが、かなり正確に値段を言い当てるので、かなりお世話になっている。パトリシアが、安い宿を見つけ出してくれるので、マーリアンまでの道のりも出費少なく旅することが出来た。

 

 立派な宿と、立派な宿の間にある、ひっそりとした佇まいをしている宿。俺達は、その宿を見つけて、パトリシアのオススメでその宿に泊まることにした。

 街の宿に泊まるときは、二人部屋を利用することになっていた。最初、一人部屋を2つ利用したほうが、いいと思ったのだが、パトリシアの言うには、料金が安く済んで、何かあった時に対応しやすいからだそうだ。俺は最初、渋ったのだが、料金の安く済むというメリットに目が眩み、パトリシアも二人部屋で良いと言っているので、二人部屋を利用することになった。


 普段、結婚したい、夫婦になりたいと言っているパトリシアだったが、性的なアプローチは全くなく、本当に眠って体力を回復するためだけに部屋を借りる感じだったので、それからずっと二人部屋を借りるのが決まりとなっていた。


「いらっしゃい」
 恰幅の良い女性が俺たちを迎える。
「二人部屋を一つ借りたいんですが、いくらですか?」
「一部屋2300ゴールドです」
「じゃあ、5日間お願いする」
 パトリシアが予想した、1泊2500ゴールドぐらいだろうと予想した値段とほぼ同じぐらいで、部屋を借りることが出来た。


「先払いでお願いします。値段は……ちょっと待ってくださいな、今計算しますね」
 紙を取り出し、計算し始める女将。
「11500ゴールドですね」
 俺は、持っていた布財布から1万ゴールド金貨1枚と1000ゴールド金貨2枚を取り出し、渡す。


「釣りはいらないです」
 この世界にも、チップの文化があるらしく、幾らか渡すとサービスを良くしてくれるので、渡すようにしていた。

 

「部屋に案内しますね、付いてきてください」
 建物は古いが、作りがしっかりしているので、隠れた良い宿ということだろう。他に2組みの冒険者が泊まっている事を女将から聞いた。


「この部屋です」
2階の一番奥の部屋を案内され、カギを渡された。


「出かける際は、カギを閉めて出るようにしてください。お金などは、部屋に置かないでくださいね。では、ごゆっくり」

 

 女将が去った後、俺達は部屋に荷物を置いて、勇者ハヤセナオト資料館へと向かうことにした。

 

 

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