キョウキョウ NOVEL's

キョウキョウ著によるオリジナル小説を公開しています。

閑話02.旅立ちの日前日 マリー視点

 今日は、ユウがこの街を旅立つという事で、ユウが働いているアフェットというお店で、送別会が行われていた。私は、アフェットという店には初めて来たが、仕事先でも噂になっていて名前だけは知っていた。

 ユウは楽しそうに、職場仲間と話している。私はそれを眺めながら昨日あったことについて思い出していた。

 私は昨日初めて、ユウが旅立つという事を聞いて唖然としてしまった。2ヶ月ちょっとの間、泊めてくれた事を感謝すると、ユウは返事をしない私を待たずに、部屋へと戻っていった。多分、旅の準備をしているのだろうと予測した。

 私は、ユウにウチを出て行ってほしくなかった。しかし、ユウは何か目的を持って旅に出るという。それを引き止めることができようか。

 私は、兵士としてこの街を守る役目が与えられている。両親の代から職業は兵士だ。ユウの旅にはパトリシアと言う女性が付き添うそうだ。その事を聞いた時、もしも、私が冒険者の職業を持っていたならば、ユウに付いて行って旅に出るのにと、ありもしない妄想をするが、虚しいだけだった。私の職業は兵士だという現実しか無かった。兵士の私が付いて行っても足手まといになるだけだろうと思う。足手まといになるということ、それは嫌だった。

「ユウ」
 私は思い切って、ユウに声をかけていた。
「マリーさん! 2ヶ月ちょっともの間、部屋を貸していただき、本当にありがとうございました」
 ユウが本当に感謝しているという顔で私を見ている。
「あぁ、狭い部屋だったが役に立ってよかったと思う」
 その言葉は、本心だった。ユウの役に立てて本当に良かったと思っている。
「本当に、旅に出るのか? 何なら、いつまでもウチに……」
「いえ、これ以上マリーさんの負担になりたくないのです。それに、これから出る旅には目的があるので」
 目的のことを言われたら、引き止めることが出来ないじゃないか。そう思った。
「そうか、気をつけて行くんだぞ」
 気持ちのこもっていない、私の応援の言葉を、ほんとうに嬉しそうにユウは受け取った。

 結局、自分のユウに対する気持も伝えられず、ただ去っていくユウを引き止めることが出来なかった。それから送別会がおわり、最後の一泊はアフェットで取るという事らしく、私はユウと最後の別れをした。

「今まで、食事の世話、ありがとう」
「いえいえ、マリーさんにはお世話になりっぱなしになって、恩を少しも返せず申し訳なく思っているんです」
「ユウには、私の方こそ世話になった……」
 お互い無口になりながら、目線を合わせる。

「それじゃあ、夜も遅いですし、さよならです」
 ユウの方から別れの言葉が出された。
「……さようなら」
 私は何とかその言葉だけを言って、自宅へと戻っていった。

 そして、私はユウが出て行った後も、彼を思い続けて、一生を後悔しながら過ごした。

 

 

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