キョウキョウ NOVEL's

キョウキョウ著によるオリジナル小説を公開しています。

17.旅立ちの日

 俺は旅の準備を終えて、2ヶ月住んだ街を旅立つことにした。


 異世界に迷い込み、最初はログアウトをするためにと考えて寄った街だったが、意外と長く世話になった。その街で、冒険者身分証明証を発行するために仕事をしたり、試験したりして色々過ごした街である。結局、ログアウト何て事は出来ずに、元の世界へ帰るための方法も見つからなかった。

 早朝、門の所に立ち、街の方向を眺める。もしかしたら、もうこの街には戻ってこないかもしれないので、街の風景を目に焼き付ける。
 見送りは誰も居ない。昨夜、アフェットで送別会をしてもらい、マリーやアレンシア達に別れを告げた。マリーには、部屋をお世話になり、感謝しきれないぐらいに生活支援をしてもらった。アレンシアやチェーナさんには、仕事をもらい、1ヶ月ちょっとだったが、お金でお世話になった。その他、街の人には世話になった。市場で買い物したときに、売り子の姉ちゃんにちょっとおまけしてもらったり、ギルドで冒険者証明証を発行してもらったり、俺を気に入り、アフェットの常連客になってもらった人など、この街で暮らす上でお世話になった人は多い。
 この街の居心地が良すぎて、仕事も上手くいき、生活するのに困らなかった。俺は、この街に永住しようとも思ったのだが、どうしても元の世界に帰りたいと考えた。そのため、帰るための手がかりである勇者ハヤセナオトの情報を追いかけることにした。彼の足跡を追うことで、元の世界へ戻るための解決策がないか探るのだ。

 街を眺めていた俺に、パトリシアが声を掛ける。
「ユウそれじゃあ、そろそろ行こうか」
 実は、パトリシアと一緒に旅に行くことになっているのだ。パトリシアは、俺が旅に出ると言うのを聞いて、冒険者として旅に付いてくると言った為に、一緒に行く事になった。最初は断ったのだが、どうしても付いてくると言うので、俺は折れた。断っても、どうやってでも付いてくる気らしいからだ。それに、一人で旅をするよりかは、旅のお供が居ることを少し心強いと感じている。

 ここから最初の目的地である、マーリアンと言う街へ行くには、徒歩で様々な街を経由して、1ヶ月ほど掛かるようだ。移動手段として、徒歩よりも速い馬車があるにはあるのだが、お金が掛かってしまうために、徒歩で行くこととなった。一応、最終目的地である王都へ向かう道の途中にあるらしいので、遠回りにはならないが、長い旅になりそうだ。しかし、勇者ハヤセナオトが最初に現れた街という事らしいので、幾つか元の世界へ帰るためのヒントが有るかも知れないので、寄るべきだろう。

「しかし、ユウと旅か。まるで、新婚旅行のようだな」
「恋人にもなってないのに、何言ってるんですか」
 新婚旅行とは、結婚したばかりの夫婦が連れ立ってする旅行の事だから、結婚していない俺達は、新婚旅行とは違う。最近、パトリシアは「結婚しよう」とは言わなくなったが、結婚を済ませて、夫婦になった気持ちで居るようで、こんな事を言ったりするようになった。
 ともかく、旅を始めよう。

 装備はバッチリ。防寒のために、衣服の上にゆったりとしたオーバーマントを羽織り、腰に剣を差している。肩には、3日分の携帯食料と水が入った袋を掛けている。靴も旅人の為の靴を新調して、立派なものを履いている。まずは、この街から2日程歩いたところにあるニーファという街へ向かう。
 金も、15万ゴールド程持っているので、簡単に使い切ることは無いだろう。少なくなったら、街に寄って、ギルドから冒険者としての依頼を受けて、補充するように考えている。

 先を歩くパトリシアの後ろ、俺はゆっくりと歩き始めた。

 

 

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