キョウキョウ NOVEL's

キョウキョウ著によるオリジナル小説を公開しています。

12.推薦状

 三十万ゴールドを手にした俺は、この街に来て冒険者身分証明証を発行してもらえなかった時以来、再び冒険者ギルドへと訪れた。

「すみません」
 相変わらず、暇そうにしている男性受付員に対して呼びかける。
「あぁ、この前の。依頼のためのお金は用意出来ましたか?」
 受付の男性。どうやら、俺のことを覚えていてくれたようだ。スムーズに、今回ギルドに訪れた目的が伝わった。お金は十分用意出来ているので、そのように言う。


「ええ、仕事で三十万ゴールドほど貯めたので、お金はバッチリですよ」
「それじゃあ、冒険者身分証明証を発行するための推薦状を書いてもらう為に、依頼を出しますね。報酬金はどうします?三十万ゴールド全額出すか、二十五万ゴールドで出すか?」
 受付の男性が言うには、推薦状を書いてもらうには、一日一緒に行動して能力などを測ってもらう必要があるらしい。そして、冒険者ランクAの人物が一日に稼ぎだす金額が、二十五万ゴールド位だから、最低二十五万ゴールド必要と考えたらしい。その値段で出すよりも、少し金額に色を付けたほうが、依頼を受注してくれる確率が高くなる。
「三十万ゴールドだと、確実に受けてもらえると思いますが、三十万で依頼を出しますか?」
 受付の男性が言う、三十万ゴールドは大金だ。この街で暮らす内、金銭感覚を身につけた俺には三十万ゴールドの価値が理解できるようになっていた。おおよそ、1年ぐらいは暮らしていけるお金だ。俺はお金を出すか迷ったが、冒険者身分証明証は、できるだけ早く発行してもらったほうがいいだろうと考え、三十万ゴールドで依頼を出すことに決めた。


「三十万ゴールドでの依頼で、お願いします」
「それじゃあ、冒険者ランクAの方に依頼を出しておきますね。多分、明日依頼を出してみて、明後日には、お話できるようにセッティングしておきます。冒険者ランクAの方の目にかなったら、推薦状を書いてもらえるでしょう」
 推薦状をもらうには、一度合って話し合いやモンスター狩りの能力を見られないといけない。それから評価してもらい、推薦状を書いてもらう。そのため、冒険者身分証明証を発行してもらうには、まだ少しの時間が掛かるようだった。

--------------------------------------------------------------------------------

 三日が過ぎて、今日は朝からギルドへと向かっていた。朝の時間、ギルドの建物には、何人かの冒険者らしき人間が居た。全員当然女で、ギルドへ入ったら一斉に俺の方に視線を向けた。彼女たちの中に、依頼を受けた冒険者ランクAの人物が居るのだろうか。


 俺は、受付に向かい、いつもの様に男性受付に話しかけようとしたが、どうやら対応中だったので、近くのテーブルに腰掛けた。

 

「貴方が、依頼を出したユウ?」
 全身黒の、顔まで隠した格好をした女性が俺に声をかけてきた。こちらを鋭い目で観察している。何者だろうか。


「そうですけれど、貴方は?」
「貴方の依頼を受けた、クララだ。よろしく頼む」
 言いながら俺の座っているテーブル向かい、空いている席に座った。男のようなしゃべり方だが、声色は女だ。


「そうだったんですか、推薦状は書いてもらえますか?」

「推薦状は、その人の能力を見て書かなければいけないから、まずはモンスター狩りに行こう。そこで、貴方の能力を見せてもらおう」
「分かりました、それじゃあ早速外に出ましょうか」
 彼女の言葉に従い、まずは近くの草原へと移動することになった。

 

 草原へ行く途中、こんな話になった。
「貴方、失礼だけれどレベルは幾つなんだ?」
 レベルを聞かれたが、これも、推薦状を書くための質問だと考えた俺は、正直に答える。
「冒険初心者Lv.100です」
「ひ、ひゃく? 本当に冒険初心者でLv.100だって言うのか?」
 慌てて俺に聞き返すクララ。やはり、限界値まで上げたのはまずかっただろうか。


「はい、そうですが。なにかマズイですか?」
「マズイというか、聞いたことがない。普通、冒険初心者はLv.20に上がったら直ぐに上位転職するのが普通だから。上げてもLv.30までしか聞いたことなかったんだが、Lv.100か……」
 そうか、上位転職はLv.20から可能なのか。絶句するクララに更に質問してみる。


「その上位転職って、どうやるんですか?」
「冒険初心者からの上位転職ならば、街のギルドで販売している、転身の衣というアイテムを買って、それを使うことで上位職にレベルアップすることが出来る。しかし、そのレベルがあるなら、狩りの能力を見るまでも無いかもしれないな」
 上位転職か。ギルドに戻ったら、早速、そのアイテムを入手して冒険初心者の職業レベルをアップさせようと、考える。

 

 その後、何匹かのモンスターを狩ったが、街の近くのモンスターならば一撃加えると、それだけで倒せるので、楽に仕留めた。その様子を見ていた、クララは何度も頷いて、俺を観察し続けていた。
「もう少し、森の方まで行ってみようか」
 クララが、そう提案し、草原から森の方まで行くこととなった。

 

 森のモンスターは、草原のモンスターに比べて動きが少々速かったが、特に苦戦せずに仕留めることが出来た。その様子も、全てクララさんが観察していた。

「貴方、魔法は使えないのか?」
「え? えぇ、魔法はまだ使えません」
 今後修得する予定だが、まだ魔法使いの職業の取得の仕方が分かっていないため、魔法スキルを習得できていない俺には、魔法を使うことが出来なかった。


「そう、男性ならそんな風に剣を振るうんじゃなくて、魔法で戦う物ばかりだと思っていたが」
 どうやら、この世界にいる男性冒険者のほとんど全てが、魔法を使うらしい。俺のように剣を振るう男性を見たことがないらしい。
「貴方の能力については、十分わかった。街へ帰ろうか。推薦状は街で書いてあげます」
 どうやら、推薦状を準備してもらえるようだ。俺達は直ぐに街へと戻っていた。

 

 ギルドに戻ってきた俺達は、テーブルに対面で座り、クララは懐から、何かの紙を取り出した。
「用紙はギルドから受取済み。後は、ココに私の所感とサイン」
 サラサラと、紙に文字を書いていくクララ。ちなみに、クララが今書いている紙は、現代にあるような真っ白いものじゃなく、羊皮紙だ。

 

「ほら、書いたぞ」
 クララから推薦状をもらう。確認するために、目を通しているとクララが話しかけてきた。
「ところで、ユウは今、特定のパーティーとかに入っているのか?」
「パーティーですか?いえ、今は一人です」
「そうか、良ければ私のパーティーに入ってみないか?」
 勧誘ということか。俺は、一度入ることを考えてみたが、まずはやる事をやってからにしようと思い、やんわりと断りを入れる。


「そうですね、考えておきます。まずこの推薦状を使って冒険者身分証明証を作らないといけないですし」
「そうだな、私のパーティーは毎朝か夕方にはギルドに居るから、よければ話しかけてくれ。会えて良かったよ」
 テーブルから立ち上がり、クララが手を差し出してきたので、俺も答えて立ち上がって手を出し、握手をする。ガッチリと握手をした後、クララさんは直ぐにギルドから去っていった。俺は、今もらった推薦状を持ち、男性受付に話すために歩き出した。

 

 

<< 前へ  次へ >>     目次

【スポンサーリンク】