キョウキョウ NOVEL's

キョウキョウ著によるオリジナル小説を公開しています。

09.これは誰のモノ

 タイミングが悪く、知らぬ間に大きな騒動が起こるキッカケとなってしまった、新しい人生では初めて描いた同人誌。

  こんなに注目されるなんて思っていなかったから、事実を知った時に僕は本当に驚いた。そして、どうやって対処するべきか頭を悩ませる。

 とりあえず、再三にわたりメールで連絡が来ていた、委託をお願いしている同人ショップにメールで返信する。学生生活などが忙しかったから気付かなかったとは言え、無視してしまった形になってしまった事を詫びるために、急いで謝りのメールを送った。

 すると向こうから、僕がメールを送った直後すぐに返信が戻ってきた。もしかしたらモニタの前でずっと連絡が来るのを待っていたのかも知れない。そう思うと、申し訳ないと思いつつ、メールを開いて内容の確認を行う。

 問題はあったけれども気にする必要はありません、と気遣ってくれている内容の返信だった。向こうも、これほどまでの反響があるとは予想できていなかった事態だから仕方がないと。

 メールの返信が遅れてしまったことに関しても何一つ責められることはなくて、それよりも今後の対応について相談したいと、これから先について迅速に話を先に進めてくれていた。

 それからメールのやりとりを繰り返し話し合った結果、先ずもって必要だというのが同人誌を追加で印刷すること。入荷の問い合わせが殺到して、大勢の人が手に入れたいと待ち望まれているらしい。

 ただ急いで行動する必要があったので、印刷から全て同人ショップのスタッフにお願いをすることになった。

 個人でお金を出して印刷から行うのが同人活動の基本だと思うが、個人の手では対処できる範囲を超えてしまって、無責任かもしれないが全てをスタッフにお願いしてやってもらう事に。

 漫画新人賞への作品応募があるので、あまり同人に力を入れて活動するつもりも無かったが、意図せず今回の件で一気に注目を集めてしまったので新作の同人誌を制作すると、約束を取り付けることになった。事態を収拾してもらう代わりの取り引きのようなものだったので、感謝しつつも仕方なく。

 とりあえず、これで僕の方は一段落できて、後は同人ショップの人にお願いして問題の解決を待つだけ。だと思っていたら、数日後には別の問題が発生することになった。


***


 北島佑子はリビングのテーブルに座りながら、堂々とした様子でエロ漫画を読んでいた。

 それは今日、家に送られてきたモノ。郵便物の宛名には北島という名字だけが書かれていて、下の名前が記されていなかった。なので、家族の中で誰宛の郵便物なのか分からないまま配達員の対応をした佑子が受け取って、その中身を確認した。

 中に入っていたのは、エロ漫画本。あぁ、姉さんの買い物だな。そう察した佑子は自室に持ち帰って少し堪能してから、リビングでわざと姉の涼子の目の前に見せつけるようにしてイタズラを仕掛けてやろうと声を掛けた。

「これって、姉さんの?」

 しかし、掲げられたエロ漫画の表紙を目にした涼子は特に慌てた様子もない。姉が見せる薄い反応にアレ? と思った佑子。

「違うわよ。というか、リビングで広げちゃダメよ」
「えー? 姉さんが買ったんじゃないの?」

 もう一度、次女の佑子はエロ漫画を広げて両手に持ち、表紙と裏表紙が見えるまで開いた状態のを長女の涼子に見せつけた。

「だから違うって。佑子が買ったんでしょ? ほら、タケル君が降りてくる前に片付けなさい」
「はーい、分かったよ」

 男の子には目の毒だから、さっさと片付けろと指示される佑子だった。確かに、弟には見せられないと同意だったので急いで自分の部屋に持って帰る佑子。ということは、これは誰のものか。

 自分が買ったものではないし、姉が買ったものでもなかった。という事はつまり可能性は残った家族の一人、佑子は母親の存在に思い至った。

 でも彼女にはその考えが、腑に落ちなかった。男の子であるタケルが生まれてから、母親は家の中にエロに関するモノを一切持ち込まなくなったから。母親の威厳を保つために。

 そんな母親が不用心に、ネットで買った商品を家で受け取る事はしないだろう。そんな考えがあったが、本人に聞いてみた。

「買ってないわよ?」

 その日の夜、タケルが居ないタイミングを見計らって姉の涼子と妹の佑子、三人が揃っている場で、母親にエロ漫画を購入したどうかを尋ねた。そして、買っていないと否定の返事が戻ってくる。嘘をついている、という様子には全く見えなかった。

「姉さんも、買ってないんだよね」
「うん。さっきも言ったけど買ってないわよ」

 もう一度尋ねた佑子の質問に、買っていないと同じ回答を返す涼子。それならば、この漫画を買ったのは一体誰か。

「じゃ、じゃあ……」
「ということは?」
「もしかして……」
 
 その言葉の先に続く人物の名前。三人が頭に思い浮かべる人物の名は一致していた。自分の息子であり、自分たちの弟である男の子の名前が。

 しかし、そんな筈はない、というような否定する考えも同じだった。まさか男の子がエロ本を買うなんて、聞いたこともなかったから。

 

 

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