キョウキョウ NOVEL's

キョウキョウ著によるオリジナル小説を公開しています。

08.運命の人?

 仲里咲織(なかざとさおり)は、忙しかった仕事が一段落して久しぶりの休日を堪能していた。今日は朝から食事に休憩した時間以外はずっと、色々な本屋を巡って買い物を楽しんでいた。

  そんな彼女は、漫画の編集者という仕事に就いている女性である。大手出版社で成人向けの漫画の制作に関わっていて、様々な役割の人をまとめてコミュニケーションを取ったり、企画を立ち上げて、情報収集を行い、漫画家の創作の手伝いなどの役目をはたしていた。

 28歳という若さでありながら、既にかなりの実績を上げていて社内での評判も非常に高い。というのも彼女は、エロに関して他の追随を許さないぐらいに好奇心旺盛だったから。

 端正な顔立ちに、キャリアを順調に積んで活躍している女性でありながら好色でもあって仕事と趣味趣向がマッチした、好きなことを仕事にできている人だった。

 そして今日もエロの欲求を満たすため、新たなエロの世界を開拓するためにと、同人誌やエロ本探しに勤しんでいた。

 エロに関して探究心豊かな咲織は、自分の好みを自由に表現している同人誌を探すのが好きだった。利益や需要などの思惑を抜きにした思い思いの作品を発刊している中から、自分の好みに合ったエロを常日頃から探している。

 それに引き換え商業誌は出版社を通して発刊するので、どうしても成功の目処や需要がないと思われたら企画が通らない。だから大衆向けに企画を考える必要がある。そうすると、自分の好みに合うようなエロの欲求を解消できる作品は少なくて、仕事でもなかなか創り出すことが出来なかった。

 そして同人誌を見て回るのは、将来の需要になりそうな新たなエロを探すという目的もあった。

 休日を堪能すると言いながら編集者としての仕事にも繋がりのある、市場調査とも言える活動になっている。だが咲織は好きでやっているので、全く苦ではない。そして、その好きこそがエロ漫画の編集者として成功できている鍵でもある。

 そういう訳で咲織は今日も新しいエロの世界を求めて、同人ショップや本屋等を一日かけて巡り、見て回った。スケジュールが合えば、展示即売会などにも行くのだが今日はイベントをやっていなかったので書店巡りで終わり。

 そして家に帰ってきてからも、ネットで色々と検索をかけて外では発見できなかった新たな同人誌を求めて追加で情報収集を行う。

 そして彼女は、ソレを見つけた。

「テンセイさん? 知らない作家だ」

 自宅に帰ってきてから、ほとんど何も着ていない下着姿でリラックスした状態のまま咲織は、パソコンを操作している最中。

 ネット販売を行っている同人ショップの商品ページを見て回っている所で、ある作品が彼女の目に留まった。

 なかなか画力の高さが伺える表紙。値段は高くも安くもなく、相場価格ぐらいか。しかし最近は表紙ばかり立派で、中身が伴わない表紙詐欺も多いので商品ページのサンプルをチェック。

「ほうほう」

 サンプルを確認してみれば、なかなか力の入っている彼女も納得の出来栄えだった。すぐに注文して商品を購入。

 しかし今まで無名だったらしい新人とはいえ、これだけ画力が高くて魅力的な絵を描く作品を同人ショップは宣伝もしないで、ひっそりと売り出している事情の理由が気になった。せっかくなら、新人特集のページでも作ってあげて商品ページに誘導して、売り出してあげたら一気に人気の火が付きそうなものなのに。

「なるほど。多分、在庫が無かったからね」

 咲織が購入した後、すぐに売り切れという表示に切り替わった。彼女が買った分で最後だったらしい。

 発行日を見れば、1週間も経っていなかった。最近売り出したばかりの新作。そして新人ということは、まだ世の中に知られていない内に全て売り切ってしまった。つまり、この商品の納品については少部数しか委託販売していない。

 この作者、あまり同人活動に力を入れていないのか。今まで名を聞かなかったのも意気込んで活動していなかったから、なのかもしれない。

 ちらっと見ただけだが絵は魅力的だし、せっかく技術もあるようだから頑張って活動してもらいたいな。

 そんな想像をする咲織であった。


***


 インターネットの同人ショップで数日前に購入した同人誌が、咲織の手元に届いた。そして、早速目を通して彼女は驚愕した。

「な、なんて素晴らしい作品なの……!?」

 作品を読んでいる間。最初から最後まで胸をキュンキュンさせて、性的に興奮しながら読むことが出来た。なによりも、今まで見たこともない男性の体を細部まで行き届いた素晴らしい描写で生々しく描いている。

 自分の求めていたエロがここにある。テンセイの作品を読み終わった時に、そう感じた咲織だった。

 一体どんな人が描いたのだろうか。これを描くためには、きっと信じられない量のリサーチが必要だっただろう。そして、この作品を仕上げるに至るまでのモチベーションを保つエネルギー、エロの探究心が必要だった筈。

 私と同じように、いや、むしろ私をも超えるエロの好奇心で作品を創り上げたに違いない。

 この作品を世に生み出すに至るまで、作者は色々な経験があったに違いない。私よりも年上だろうか、同年代だったなら悔しさもある。年下ということはありえないだろう。

「ぜひ、この作者に会わないと!」

 咲織は、ぜひとも作者の作品を今後も世に生み出してもらいたと望んだ。そして、その創作の手伝いをしたいと考えて、作者に接触しようとまずは同人ショップに問い合わせを行った。

 この作品の作者は一体誰なのか、どんな人物なのか、連絡先はどこか。自分は大手出版社の編集者であるという身分を明かして立場を利用し、作者と会えるように手はずを整え始める。

 

 

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