キョウキョウ NOVEL's

キョウキョウ著によるオリジナル小説を公開しています。

03.普通じゃない世界

 この世界は、なんだかオカシイ。

  ソレに気付いたのは、僕が新しい世界に転生してきたのだという事実を少しずつ受け入れ始めていた赤ん坊の頃。

 当時の僕は赤ん坊の身体で意志の通りに身動きが取れず、上手くしゃべることも出来なかった。当然、周りの人とコミュニケーションを図ることが不可能。

 その結果、一人きりで考えた末に自分は転生したのだという結論に至った。自分のことに一応の決着をつける。それから、ようやく周りの人達に目を向ける余裕が出来て、おかしな世界に少しずつ僕は気が付いていった。

 まず、僕が生まれた家庭の中に父親の姿が見当たらなかったこと。離婚して母子家庭なのか、死別したのか、そもそも結婚なんてしていなくて、父親という存在は無くて未婚の母なのか。色々な事情を考えてみたが、ともかく父親の姿を一度も見ることはなかった。

 まだそれは、ありえる事情だったと思う。だがしかし、次の状況を目にした時に僕は自分の知っている世界とは異なるのではないかと気が付いた。

 家族は上に二人の姉が居て、母親と僕を含めての四人家族。先に述べた事情から生活は困窮してしまうのではないか心配していたら、そんな事は無く。母親が働いているようで彼女一人が仕事で稼いだお金で一家を養っていた。かといって母親が苦しそうにする様子もなくて、生活するのに経済的な問題は何も無かったみたいだ。

 母親と姉二人は僕のことを非常に可愛がってくれていた。そして、赤ん坊の頃から僕はよく、色々な場所へ連れ出してもらう機会が多かった。もう少し成長すると、何泊かする旅行にも連れて行ってもらう事が多かった。

 そこで僕は気が付いた、外出先や旅先で男の人の姿を目にする機会が異常なほど少ないという事に。

 近所の公園やお店に出かけた時には、何回かに一回ぐらい男の人の姿を見れるかどうか。その時には、この世界には男性の数が少ないのではないのか、という考えが思いついていた。しかし、男性の姿を見ないのは住宅街で時間帯やタイミングによっては、あり得る事なのかと確信は持てなかった。

 しかし旅先では、店員やスタッフが全員女性。電車の車掌にタクシーのドライバー、旅館の料理人などなど、全て男の人ではなく女性だった。男の人が働いているような姿を、僕は目にする事が無かった。

 アレ? と思って意識的に情報収集してみれば、テレビのニュースに流れている内容や新聞の記事、それから母親や姉達に聞いてみると世界の状況が判明。

「お母さん、なんで僕と同じような男の人が少ないの?」
「うーん、それを説明するのは難しいんだが……。昔は沢山いた筈の男性が、一説によれば遺伝子の異常で急激に男性の出生率が低下して、現在は」

 僕の投げかけた質問に対して、子供が三人も居るとは思えない若々しい見た目に黒髪ロングに眼鏡を掛けた真面目な教師風という容姿のイメージ通りに、まだ幼稚園に入るぐらいの幼い子供の僕に対して、真剣に答えようとしてくれる。

「駄目だよ母さん。それじゃあ、タケルくんが理解できないよ」

 僕と比べて六歳年が上で北島家の長女である涼子(りょうこ)姉さんが、その説明じゃ駄目だと母親を止める。見てくれはまだ幼い僕の姿、普通ならその通りだと思う。だがしかし中身に大人の精神が入っているので、実は母親の話を聞いて僕は理解していたのだが。しかし、そうか遺伝子の異常で……。

「男の人が少ないのは特別だからで、タケルくんも特別なんだよ。だから危険な女子たち皆が、タケルくんの身を狙ってくるから。絶対に気を許したら駄目なんだから。注意しようね」
「そ、そうなんだ。わかった、注意するよ」

 四歳年が離れている次女の佑子(ゆうこ)姉さんは、迫真の表情で少し質問の意図から外れた回答をして、男の身には危険があると僕に注意を促した。あまりに強く差し迫った感じの警告に、たじろぎながら返事をする。

 そんな感じで、徐々に世界の状況を僕は把握していった。男性の数が異常に少なくて、女性が男性を守るというのが普通であるという世界についてを。

 

 

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