キョウキョウ NOVEL's

キョウキョウ著によるオリジナル小説を公開しています。

22.それから

 雑誌での連載が始まり、アシスタントとなってくれた彼女たちとの連携も上手く行っていた。そして、単行本も発売されて売れ行きは絶好調。作業場の皆で、初単行本の出版を祝うささやかなパーティーも行った。

  ただ、ある問題が発生していた。

 読者は、この新人作者が男のエロ漫画家で真新しいから買っているだけだ。本当の価値じゃない。雑誌での連載も、男だという性別を利用して連載枠を奪い取った。

 という批判を受けることになった。咲織さんは僕に情報が届かないようにと考え気を使ってくれていたけれど、声はどんどん大きくなり隠しきれなくなって僕も知ることになった。

 確かに、今まで居なかった男の漫画家という事で注目を集めているかも知れない。しかし、同人活動のときには性別を隠して本を売っていた実績もある。だから、僕は気にすることは無いと思っていた。

 そんなある日のこと、僕だけ一人で出版社のある本社へと呼び出された。呼び出した人物は、編集長をしているという女性。

 話を聞いてみると、どうやら僕を担当している編集者を代えたいという話らしい。咲織さんを? 何故? ありえない、なんでだろうと疑問に思いつつも僕は冷静になって、どんどん質問を繰り返して理由を明らかにする。

 近頃の僕に対する批判が大きくなっていて問題になっているが、それを引き起こした咲織さんに責任がある、という考えらしい。男性のエロ漫画家であると公表したのは間違いだったという。けれども、公表するべきだと考えたのは僕。咲織さんに責任は無いはずだ。

 それを理解してもらおうと説明を繰り返したのだが、なんだか編集長との会話が進むにつれて話の方向が怪しくなってきた。

 編集長の中では咲織さんに責任があるかどうか、という事はあまり重要ではなくて担当者の交代は決定事項であるらしい。しかも、納得出来ないのであれば連載枠は他の漫画家にお願いすることになると、脅しのような言葉も掛けられた。

 それでも、学生の頃から知り合って今まで支えてきてくれた咲織さんを、担当から代えるだけとは言え、別れさせられる状況に納得はできなかった。他の人の支えによって、今のような作品が描けるとは思えなかった。

 僕が担当を代えるのなら連載枠も要らないと断る姿勢を見せると、編集長は慌てて他の条件を出してきた。

 それは僕が念願だった一般誌での連載。担当を代えるのを受け入れてくれるのなら、望み通りに一般向けの漫画を描かせてくれる、というような条件だった。

 前世の頃からずっと、それを願って漫画を描いてきた。繰り返しコンテストにも応募してきた。一般向けの漫画を描けるようにと努力してきた。それが今、望みが叶おうとしている。

 けれども僕は、考えるまでもなく断った。交渉は決裂。話し合いをしていた部屋を出ていく直前に、編集長からウチでは二度と描かせないから、という言葉を背中に受けたが気にしなかった。

 ただ、ああまで言われてしまうと僕の一般向け漫画というのは需要がないんだ、というのが心底理解できてしまって、気分は下がった。同人誌時代にも一般向けを出してみたが、評判はすこぶる悪かったしなぁ。僕の求められているのはエロ漫画を描くことだと、ようやく納得は出来た。まぁ、たった今連載を無くされてしまったエロ漫画家なのだが。

 しかし、何故あの人はあんなに必死になって担当を代えようとしてきたのだろうか、その理由は疑問に思う。

 ともかく、そういう訳で今まで連載をさせてくれていた出版社での連載は無くなりそうだった。そうなると、担当がどうこう言う以前の問題になってしまったが、以前のように同人活動へ戻って描こうと思った。正式に咲織さんを雇って、アシスタントの二人にもお願いし給料もアップさせて、続けて一緒に漫画を描いてくれるだろうか。

 作業場に戻ってくると、荷物を片付けて出ていこうとしていた咲織さんが居た。二階堂さんと甲斐さんが、引き止めてくれていたお陰で僕は間に合った。

 話を聞いてみると会社の指示で担当の変更を告げられたので、今後は関係が無くなるこの場から去ると言っていた。

 そこで、先程あった編集長との会話についてを咲織さんに話して、編集者交代の件は断ってきたと伝えた。その結果、雑誌の連載も無くなったと正直に告白する。

 話が終わると驚かれて、一体何をやっているのかと咲織さんには、とんでもなく怒られてしまった。しかし、彼女の隠そうとしているが嬉しさが漏れ出ている顔を見ていると、断って良かったとも思えた。

 話が一段落した後、今後の活動についての計画を打ち明けて咲織さんには、僕と一緒に来てくれないかとお願いをする。

 喜んでと、何の迷いもなく承諾された。

 それからアシスタントをしてくれていた二階堂さんと甲斐さんにも、引き続いて一緒に漫画を描いてくれないかとお願いしたら、もちろんと嬉しい言葉が返ってきた。

「ありがとう、皆。僕はこれからエロ漫画家として頑張っていくよ」

 

 それから、出版社と揉め事を起こしたという事で連載は無くなった。のだが、別の出版社から声を掛けてもらって連載を持てるようになった。一部で巻き起こった批判によって、男性だからといって漫画を描けないのは勿体無い、という理由で。

 咲織さんも出版社を移って、引き続き僕の担当をしてくれる編集者として支えてもらっていた。

 二階堂さんはデビュー以来、再び雑誌の連載を持てるようになって喜んでいた。もう一度、自分の漫画が描けるようになったのは師匠の下で勉強して成長できたお陰だと、すごく感謝された。だが、彼女の頑張りのお陰だと僕は思う。

 甲斐さんもアシスタントから漫画家にデビュー。実は念願だったらしい。アシスタントを何十年も続けて、自分でも無理だと思って諦めていたらしい。だが、少し頑張ってみようと一念発起して、夢を叶えることが出来たようだった。

 その後も色々とあったが、なんとか僕は続けて漫画を描けている。当初の予定とは違っていたが、エロ漫画家として人気の漫画家になれていた。

 

 

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