キョウキョウ NOVEL's

キョウキョウ著によるオリジナル小説を公開しています。

18.エロ漫画家デビュー直前

 咲織さんという編集者との出会いから数年後、僕は商業誌のデビューを先延ばしにしながら学業を第一に優先しつつ同人誌を描いたり、漫画新人賞への応募を諦めること無く繰り返し行ったりして、漫画を活発に描いていた。

  知り合いになった咲織さんとは、あの後も深く関係が続いていた。デビューの話を断ったにもかかわらず、仕事とは関係なくプライベートで僕の同人活動の手伝いをしてくれるようになっていたのだ。

 僕のモチベーションの管理から、スケジュール調整、新作の同人誌やコンテストに応募するように描いた作品を読んで、指摘してくれたりアイデアを話し合ったりしてくれた。

 ほぼ、漫画家を支える編集者としての仕事をしてくれていた。彼女の働きぶりはとても助かっていたので、手伝いとは言え相応の給料を支払いますと相談すると、僕の申し出を彼女は断ってしまう。

「将来、一緒に働けたらそれで十分ですから。あなたは何も気にしないで、今は腕を磨いて下さい。それを支えられる事が、私の幸せなんですから」

 そう言って、絶対にお金は受け取ろうとはしなかった。そんな彼女のためにも、最高の作品を作り上げようと切磋琢磨を続けることが出来た。将来、こんな作品を生み出す事ができたのも編集者という裏方のアシストが有ったからだと、咲織さんという存在も認めてもられるぐらいになれるように。

 

 中学生二年生から高校生の卒業間近までに、八冊の同人誌を発行した。年に二冊の発行ペース。学業優先で無理が絶対に無いような作業計画を立てて、負荷の無い同人活動を行えていた。

 他の同人作家に比べると発行ペースは遅めだったけれども、最初に世間に知られるようになった出来事のインパクトで有名になったおかげだろう、認知度は非常に高かった。作品のクオリティも認められたようで、その後に販売した作品は飛ぶように売れた。

 学年では一番の成績を収めつつ描いた同人誌も売れて、どちらの活動でも活躍して無理なく両立できていた。

 ただ残念ながら本命である漫画新人賞では評価を得られないまま、不合格が続くという結果。

 咲織さんから一度、シナリオだけ別の誰かに頼んで描いてみてはどうか、という原作を付けるアドバイスをしてもらった。けれども僕はあまり気乗りせず、彼女の提案をやんわりと突っぱねてしまった。

 仕事とは関係のないコンテストに応募する作品は、極力自分の能力だけで挑戦したい、という頑固な考えによって。まぁその結果、僕の作品では入賞すらできないという不甲斐ない結果。

 どうやら、世間とのズレが未だにあるからストーリーの内容に問題があるようだった。問題が分かっているので、色々と改善して試してみるが思うようにいかない。

 そうこうしているうちに、高校の卒業が間近に迫っていた。僕は大学への進学は考えていなかった。というか、この世界の男性は大学に進学するというのは余程の理由がない限りしないらしい。そして、ほとんどの男性が高校を卒業した直後に、すぐ相手を見つけて結婚する子が多いという。

 僕は高校を卒業したら、漫画家として本格的に働き始める。男性の未成年でも、エロ漫画を描くというのに問題は無さそうだ、という事が咲織さんの調べによって判明したから。

 家の近くに作業場とする部屋も借りた。僕は、前世と同じような道を順調に辿り始めていた。ただ前と比べたら格段に知名度がある状態でデビューできる。そして不本意ながら、僕が求めている一般向けではなく、成人向けの漫画家としてなのだが。でも、漫画を描いて人に読んでもらえるという場があるのは純粋に嬉しい。

 同人業界を騒がしているらしい僕の商業誌デビューも、着々と準備が進んでいる。ずっと約束していた通り、咲織さんと働ける日が近づいてきたのだった。

 今までは学業優先だったので漫画を描く時間も限られた間だったが、これからは一日を仕事の時間に充てることが出来るようになる。しかし、連載するとなると時間があるとはいえ、今までの作業スピードではとても間に合わないかもしれない。ということで咲織さんからのアドバイス。

「アシスタントを雇いましょう」
「やっぱり、必要ですか?」

「今までは作業ペースも自由がきいて、個人の活動だったので最悪の場合に締切もどうにかなりました。ただ月刊誌だと、締切はきっちり守っていかないと。今までと違って限られた時間内に、今までのクオリティを保ちつつ一人で作品を完成させる、というのは非常に困難になってくると思います」
「そうですね」

 僕も咲織さんの意見に賛成する。雑誌の連載に向けて今までの作業方法から色々と変更していかないと。そして、今までの中で一番大きな作業環境の変化となるのは、アシスタントを迎え入れる事になりそうだった。

「ところで、咲織さん。アシスタントを頼めるような人って……」
「実は、既に何人か候補を挙げておきました」
「そうなんですね、ありがとうございます」

 いつものように仕事の早い咲織さんによって、アシスタント候補となる人を既に選んでくれていたという。僕に確認を取ってから数日後に、アシスタント候補から何人か面接を行う予定となった。

 

 

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