キョウキョウ NOVEL's

キョウキョウ著によるオリジナル小説を公開しています。

16.姉妹の監視

 北島タケルが編集者である仲里咲織と初対面しようとしていたのを、タケルには内緒でこっとり後を追いかけている北島涼子と北島佑子の姿があった。

  漫画家になると宣言したすぐ後に、さっそく編集者と会う約束を取り付けたと彼から話を聞いた時、少し心配になった母親である良子からの指示で様子を見てきてと言われて姉二人が動く事態となったのだ。

「あそこが、目的地?」
「そのようね」

 佑子が確認するように聞いて、涼子が答えた。二人は電柱の影に身体を隠して、尾行対象であるタケルが入っていった喫茶店を確認する。家からココまで来るの姿を見失うことなく、対象からバレた様子も無かった。

「でも、よくバレなかったね。こんな格好なのに」

 佑子が言うこんな格好、というのは安物スーツにフェルト製の中折れ帽、更にはサングラスと普段はしないような格好。昔、ドラマの探偵がしていたような格好を真似るためにわざわざ用意した物だった。

 尾行用の変装のはずが周りからは少し浮いた格好で、バレるんじゃないかとヒヤヒヤしていた佑子だった。そんな彼女に対して、自信満々な涼子。

「尾行と言えば、当然この格好でしょ? それにタケル君は、学校の成績は良いし頭も良いけど、意外と抜けてるところがあるから大丈夫だって。まぁ、そこがまた可愛いんだけど」
「格好については意味不明。タケルに関しては、まぁ分かる」

 そんな会話を二人がしている間に、店の中に入っていったタケルは約束の人物と対面していた。相手が三十歳前後の女性である事を涼子と佑子は目視する。

「ふふっ、驚いてる驚いてる!」

 タケルと顔を合わせて会った女性が驚き声を上げてる姿を見て悪い顔を浮かべ、ほくそ笑む涼子。弟に近づいてくる女性に対して、攻撃的な彼女だった。

「タケルは本当に、正体を明かさずに会いに行ったのね。というか、店に迷惑じゃない? あれ」
「あ、本当。ちょっとマズかったかしら」

 タケルが編集者と会うという約束をしたという時に、どこまで相手に詳細を事前に説明しておいたほうがいいかと相談された姉二人。

 涼子は彼の相談に対して、前もって全て教える必要は無くて会ってから理解してもらったほうが良いとアドバイスをしていた。その結果、先程女性が大声を出して驚くという事態が巻き起こったのだが、被害が想像よりも大きかった事で心配になった。

 だが、その状況もタケルが落ち着いた様子で収めたのを見て安心する。さすが、我が弟であると涼子と佑子の二人は自慢したい気持ちだった。

「長くなりそうだから、向かいのファストフード店に移動しない? あそこだったら隠れながら監視を続けられると思う」
「良いアイデア! さっそく行きましょう」

 ファストフード店の二階から見下ろして、喫茶店の窓際に座っている二人の様子が監視できそうだった。お腹も減ったし空腹を満たせるから、という理由は語らずに佑子が提案する。タケルの監視に夢中な涼子が、即座にアイデアを採用してすぐさま移動を開始する。何事かあったら、飛んでいって弟を守る決意で居た。

 

 それから長い間、タケルと編集者の女性との話し合いを隠れて、じっくり監視を続けていた。

 涼子の監視は、次第に相手の女性を嫉妬する目線に変わっていった。あんなに、可愛くて凛々しく真剣な表情のタケルを目の前にして、言葉を交わしている女性に嫉妬していたのだった。

「うぅーっ、羨ましい」
「まぁまぁ、姉さん。あの人は所詮、仕事相手だから」

 心配と嫉妬で唸る姉を、ポテトを片手に宥める佑子。彼女の方は、最初に相手の女性を確認した時には大丈夫だろうと冷静に判断していた。

 その後も、タケルと相手の女性が真剣に話し合いをしている様子を見て、問題は無いだろうと思って少し余裕を持って過ごせていた。そして今は、姉の涼子を安静にさせる役目を担っている。


 更にタケルと編集者との話し合いは続いて、夕方になる時間になったら、涼子が席を立った。

「姉さん、私は一足先に家へ帰って夕飯の支度をしておくよ。この後、任せて大丈夫?」
「もちろん、最後まで問題がないかバッチリ監視を続けるわよ。夕飯お願いね」

 今日の料理当番は佑子だったので、彼女が先に家へと帰り夕飯の準備をしておく。こうすることで、夕飯の準備をバッチリ終えて尾行をしていたことがタケルにバレないようにする。

 後を任され一人だけファストフード店に残り、家に帰るまでタケルの監視を続ける涼子だった。

 無事にタケルが編集者の女性と別れたのを見届けてから、彼が家へ到着する直前を先回りして家に帰っていった涼子。

「ただいま」

「おかえりなさい」
「おかえりー、ご飯できてるよ」

 無事、家に帰ってきたタケルを何も知らなかったと装い迎え入れた涼子と佑子。最後まで彼に何も悟られず、任務を遂行させた。

 そして、その結果は姉二人の口から全て母親である良子に報告されて、何事もなく終わった事を知り、彼女を安心させるのだった。

 

 

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