キョウキョウ NOVEL's

キョウキョウ著によるオリジナル小説を公開しています。

12.編集者からのお声がけ

「ふぅ……、言っちゃった」

  僕は、母親と二人の姉に漫画家になると宣言した後に部屋に戻ってきて一息ついた。今なお、胸がドキドキとして落ち着かない。

 家に送られてきた僕が描いた同人誌。それを佑子姉さんが受け取った事から巻き起こった今回の出来事。

 どうやら、あの本は同人ショップが増刷した本を見本本として送ってきてくれたモノのようだった。送った原稿が、しっかりと印刷出来ているかどうか確認する為の見本としての本。

 最初に委託依頼を出した時に登録した自宅の住所に送られてきた。もっと早くに気付いて住所を変えておこなければ今回の出来事が起こることは無かっただろうが、いまさら気が付いても遅すぎる。

 ただ秘密にしていたことがバレてしまった勢いに任せて、もうどうにでもなれ、という精神状態になったおかげで自分の意見を明らかにすることが出来た。

 僕はやっぱり、生まれ変わった今でもなお漫画家になりたかったらしい。それが本当の気持ちだった。

 前世での最期を考えると、漫画家を続ける事がダメなんじゃないか、同じように過労で死んでしまうのではと思ってしまう。そもそも、今回も運良くヒット作品を生み出せるとは限らないし、前世でも低迷を続けて成功したとはとても言えない。

 だから、漫画家なんて仕事は続けちゃダメだ。自分には向いていなかったと強く思い込むことで自分に言い聞かせて、今度は普通に生きようとして、漫画家になる事から逃れようとしていた。

 しかし、僕の口から出た望みは漫画家になりたいという言葉だった。

 それにやっぱり、漫画家になるつもりも無いまま中途半端に漫画新人賞を受賞しようとするからダメなのかも知れない。この際、思い切って家族の目の前で決意表明をしてコンテストに挑むべきなのだろうと思った。

 涼子姉さんに、佑子姉さんの二人が絵の事を褒めてくれたのも良かった。もしも、一つでも否定されてしまっていたら、絵を描くことも辞めていたかもしれない。

 しかし二人の姉達は、僕の絵の事をべた褒めしてくれた。非常に高い評価を与えてくれたことで、僕のやる気は未だかつてない程に溢れかえっていた。

「良しッ。もう一度、イチから頑張ってみよう!」

 もう漫画を隠れて描く事も必要なくなった。家族の皆にも漫画を描いていることを知ってもらい、漫画家になりたいという気持ちも打ち明けた。それが本当に良い判断だったのか、悪い判断だったのか、今はまだ分からない。

 しかし、とにかくやってみようと決意を新たにして、僕はコンテストへと挑む事に決めた。漫画新人賞を受賞してやろう、漫画家になってやろうと頑張る。

 

”テンセイさんの作品を読ませて頂き、非常に感銘を受けました。貴方の絵に魅力を感じています。

 つきましては、ぜひ一度、お会いしてお話をお伺いできればと思っております。お忙しいところ恐縮ですが、一時間ほど時間を割いていただけないでしょうか

 ぶしつけなお願いですが、どうぞよろしくお願いいたします。”

 漫画家を目指して頑張ろう、と決意を新たにした僕。そんなタイミングにやって来た、同人ショップからの紹介で送られてきた大手出版社の電子署名付きメール。それは、編集者をやっているという人から会って話をしたいという内容だった。

 僕は思わず、受け取ったそのメールを読み終わった瞬間にガッツポーズをしていた。

 この人は、どうやら意図せず話題になってしまったあの同人誌を見てくれて声を掛けてくれたようだった。

 だから、僕が描いたエロの作品を目的にして会いたいと言ってくれているのだろう。だがしかし、この人を通じて出版社との関係を築くことが出来るかもしれない。

 前世でも、編集者の人からお声をかけていただいて雑誌の連載を持つことが出来た。今回のケースとは少し違うけれども、編集者と知り合いになることが漫画家へ近づけているように思えて、調子よく進めているような気がしていた。

 この新たな関係を逃すことがないように、しっかりと良い関係を構築していかなければならない。

 僕は急いで、目を付けてくれたという編集者にメールを送り返した。是非とも、お会いしましょうと顔を合わせる約束を取り付ける。

 

 

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