キョウキョウ NOVEL's

キョウキョウ著によるオリジナル小説を公開しています。

10.親バレ姉妹バレ

 目先の問題を解決することが出来たから、それだけで順調だと思い込んでしまうなんて。そんな油断をしてしまうから、僕はいつも大失敗が近づいてきても気付くことが出来ない。死ぬ直前までそうだったのだから僕の根本が、残念なのだろうと思う。転生を経ても変わることのなかった性格だったようだ。

 「タケル、ちょっと来なさい」
「すぐ行くよ」

 夕食も食べ終わった後の遅い時間に、階下から母親の呼ぶ声が聞こえてきた。珍しい事だと思いつつ、返事をする。

 こんな時間に一体なんだろう、母親に呼び出されるような用事があったかと思い出そうとするが、心当たりがない。

 前に一度だけ、夜遅くに呼ばれて行ってみたら驚かれたことがあった。その時は、就寝する直前だったので、そのままパジャマ姿で行ったら呼び出された用事を差し置いて母親から説教された。

 どうやら、男性が不用意にパジャマ姿を見せるのはよろしくない、という事らしい。

 僕がまだ小学生で幼い子供の頃。そもそも家族なんだし、母親でもあるんだから大丈夫じゃないの? と反論してみても男の子は異性にパジャマ姿を見せないようにと厳しく言い聞かされた。それから母親は色々と配慮して、朝早くや夜遅くに僕を呼び出すことも無くなった。

 そんな事もあった中での母親から夜遅めに呼び出された理由、今日は一体どんな用事だろうか。

 今回は寝る前の準備もまだだったので、そのままの普段着姿で部屋を出て階段を降りて母親に呼ばれているリビングへと向かう。

 考えてみて思いついたのは、最近あった定期試験について。それの成果でも聞かれるのだろうかと思った。それだったら、試験を受けた時は調子も良かったし今回も問題なく良い成績を収める事ができていた。報告もしやすい。

「どうした…の……って!?」

 リビングの中には、母親の他にも二人の姉さん達が座って待っていた。対面に座っている母親と、その左右に座る涼子姉さん、佑子姉さんの表情は固い。

 何か悪い事件でも起こったのかと思っていたら、テーブルの上に置かれている本が目に入った。僕が描いた同人誌だ。

 僕がソレを目にした瞬間には言葉が途中で止まり身体が、ピキーンと固まっていた。

 なぜ、アレがあそこに置いてあるのか僕には理解できない。どういう経緯で母親の手元に届いてしまったのか。彼女たちが男である僕の部屋に無許可で入ることは絶対に無い。そもそも、奥深くに隠した金庫の中に仕舞っておいた筈で見つかることも絶対にありえないと思う。なのに、どうしてだ?

 背中に、冷や汗がタラリと流れるのを感じた。

「とりあえず、こっちに座って」

 母親の声や顔は、怒った感じや嫌悪するような表情ではなかった。困った表情。息子がエロ漫画を描いているなんて思いもしなかった、という感じなのだろうか。

 恐る恐る、僕はゆっくりとした動作で母親から言われた通り目の前の席に座って、両手を膝の上に置いて畏まる。

 漫画を描くのは家族には秘密にして行っていた趣味だ。いつかは話そうと思っていたけれど、まさかいきなり、エロの同人誌を描いている事がバレるなんて。

「これって、タケルの?」
「うん、そう」
 
 テーブルの上の漫画を指さして母親の問いかけ。僕は正直に答える。漫画を描いていた事、しかもエロ漫画も描くなんて事を一足飛びで知られてしまった。

 隠して活動するんじゃなくて、もっと早くに説明して置くべきだったか、という後悔の念を抱きながら。

「でも、それ一冊だけ」
「大丈夫、説明しなくても分かってるわ」
「え?」

 まだ同人誌を描いたのは一冊だけ。次の新作も描く約束を既にしているけれども、まだ一冊目だ。それに、本命というか第一優先はずっと変わらず漫画新人賞を受賞することだった。

 そんな説明をしようとすると、母親から途中で言葉を挟まれた。全て理解しています、という感じで。まさか隠せていたと思っていた僕の漫画活動は、家族からはバレバレだったのか。

「その、ね。男の人も興味を持っていても問題は無いと思うの。同じ人間として、男と女だから。むしろ、お母さんはタケルが興味を持ってくれていて嬉しいと思う。最近の男の人は、全然異性に興味が無くなってきてるって問題にまでなっているらしいから。でもまだタケルは年が若いからお店で買ったりするなら、恥ずかしがらずお母さんに正直に話して欲しい」
「へ? 買う?」

 母親は漫画を描くことに対して理解してくれていると思って話を聞いていたら、突然に話の流れが分からなくなった。

「お店で買ったって、どういう事?」

 僕は、どういう事だろうと疑問に思ってそのままストレートに母親に尋ねていた。

「タケルが、この本をネットのお店で買ったんじゃないの?」
「今日、ショップから送られてきた奴を私が代わりに受け取っちゃったから」

 母親も僕の問いかけに答えられず、疑問。今まで黙って座っていた佑子姉さんが補足を入れるように横から説明してくれた。でも。

「それ、僕が描いた本なんだけれど……」

「え?」
「描いた?」
「どういう事?」

 お互いに勘違いしていた。僕はエロ漫画を家族の皆に知られないよう内緒にしてネットで買ったと思われていたようだ。そして、漫画を描いているという事は知られていなかったみたい。

 勘違いを無くすために事情を詳しく説明しないといけなくなって、僕はイチから隠していた活動を打ち明ける事にした。

 コンテストに応募する為の漫画を描いていたこと、漫画を描くモチベーションを高めるためにエロ漫画の同人誌を描き始めたこと。

 家族に黙って黙々とエロの漫画を描いていた。エッチな本を買ったと思われるよりも更に恥ずかしすぎる、そんな告白をする時間を過ごすことになるなんて。

 

 

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