キョウキョウ NOVEL's

キョウキョウ著によるオリジナル小説を公開しています。

01.伝説の同人誌

 ある日、インターネットの掲示板に突然1枚の画像が貼られた。それは、とある漫画の中盤あたりだと思われるページをスキャンした画像。しかも、男女が裸で交わっているエロシーンの1枚だった。

  >すげぇエロい!
 >コレって何の漫画? 誰かタイトル教えて!?
 >男のアレがむっちゃリアル。
 >リアルって、見たこと無いやろ
 >私は見たことあるけど、本当にホンモノとおんなじ。
 >嘘乙。でもコレ見てると、なんだか気分が高揚する。
 >詳細はよ。

 画像が掲示板にアップロードされて皆の目に触れた瞬間、そんな感じのコメントが掲示板に沢山書き込まれて溢れていった。皆からの注目を、一枚の画像が一気に浴びる状況。

 画像の絵は誰が見ても上手いと納得するような、クオリティの高い漫画だった。しかも、男性の身体の描写がすごく鮮明で今までに無い完成度。

 エロ漫画は世の中に多数生産されていたが、男性身分保護法により男性の裸が見れるような映像や写真の資料なんて、手に入れるのが非常に困難な時代。それなのに、その画像の絵はまるで男性の裸の現物を見て描いたかのような、細かい部分に至るまで精巧に描かれている。

 誰もが、この画像の漫画に描かれた他のページを求めていた。けれども、画像をアップロードした人物はその後に何も反応を返さずに消えてしまう。

 誰が描いたのか作者は誰か、何という漫画なのか、出版社はどこなのか、答えを知って漫画を手に入れたいという人達の書き込みで、掲示板は一気に盛り上がっていった。

 その掲示板では、過去最高の盛り上がりを見せてアクセスする人が多数。けれども、それだけの人が集まって誰も漫画の詳細を知る人は居なかった。あーでもない、こーでもないと真実を求めて掲示板上でコメントが沢山交わされていく。

 誰も何も分からないままに、それからしばらく時間が経った頃になって、一つのコメントが書き込まれた。

 >もしかして、この漫画? http://www.xxx.jp/xxxx

 その書き込みと共に、同人誌の委託販売を行っているというショップのアドレスと、1冊の同人誌に関する商品ページについて書かれたコメント。

 掲示板の皆が、そのサイトにアクセスして確認しに行ってみた。

 確かに、商品ページのサンプルに載せられている絵が似ているような感じだった。しかし、そのショップで売っていた同人誌は既に全て完売していたようで、再入荷の予定も無いという。しかも、その作家は何故か他に作品を売り出していない。その1作品のみ、ショップで売り出されているような状況。

 最初に載せられていた画像を見れば、同人誌とは思えないようなクオリティの高さ。しかも、二次創作ではなくオリジナルのキャラクターだった。これほどまでにクオリティが高いのに、何故商業誌として売り出していないか、何故今まで誰も知らなかったのか。

 同人ショップで売られているソレとは別物では、という意見もチラホラ流れた。しかし、同人誌も同じようにクオリティが高くてそちらの作者についても誰もが初めて聞いた名で、知られていない作者だった。

 インターネットで作者の名前を検索して探してみても、他にヒットするページを見つけることが出来ず。同人イベントに参加している人達も、聞いたこともない名前だと謎は深まるはかり。

 そして遂には、同人ショップに直接連絡を入れて尋ねる人達も現れた。掲示板に載せられた画像はこの漫画と同じものなのか、この作者は誰なのか、他に作品は売り出していないのか、様々な質問が同人ショップに殺到する。

 あまりにも問い合わせをしてくる電話が多くて、同人ショップはサイトを通じて詳細を説明した。

 掲示板に載せられた画像は、確かに同人誌の中の1ページであること。作者に関してはプライバシーに関わるのでお知らせすることが出来ないこと。この先、商品を再入荷して売り出すかどうかは不明。この作者の新たな作品が、商品として売り出されるかも不明。

 分からないことだらけで、様々な推測が掲示板で行われた。実は、昔有名だった漫画家が名前を変えてお遊びに作った同人誌だとか、金持ちの道楽で書かれた漫画であるだとか、作者は男だから身分を隠してエロ漫画を描いているだとか。

 掲示板上ではそんな話し合いが行われて、1枚の画像で信じられないくらいの注目を浴びることになった。遂には、ネット界で伝説の同人誌として作者の名と共に語られるようになる。

 これが後に全世界の女性達が名を知るようになるエロ漫画家が、初めて世に知られる最初の出来事だった。


***


 自分が描いて売り出した同人誌が、インターネット上で伝説と呼ばれるまでの噂になっている。そんな事実を知った人物は、パソコンの前で頭を抱えてどうするべきか悩んでいた。

「まさか、こんな事態になるとは……」

 その人物の名前は、北島(きたじま)タケル。転生者であり、前世では漫画家をしていたという特異な経歴を持つような男であった。

 

 

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