キョウキョウ NOVEL's

キョウキョウ著によるオリジナル小説を公開しています。

第05話 考察

 辺りが暗くなるぐらい、岬さんは映画について語っていた。

 こんな長い時間を語れるなんて、岬さんはよっぽど好きなのだろう。それに、語る内容も面白く、映画がかなり見たくなってしまった。俺は、話を聞きながら時々質問したりして、岬さんとの会話を楽しんだ。

「ごめんなさい、私ばかり喋ってしまって……」
 岬さんは俯いて、恥ずかしそうに顔を赤らめている。俯くと、長い髪が顔に垂れ下がり隠れてしまうのが、岬さんの癖のようだった。

「大丈夫、大丈夫。聞いていて、とても楽しめたよ」
 俺は、嘘偽り無く本音を言った。言葉の通り、かなり楽しめたので、そんな風に俯く必要もないと思った。しかし、なおも岬さんは俯いたままだったので、俺が先を促す。

「もう暗くなったから、そろそろ出ようか」
 俺の言葉通り、窓から見える外の風景は暗くなって、夕刻を大分過ぎた時間になっていた。お店に入ってから2時間程は経っただろうか。飲み物も、全部飲み干して俺と岬さんのコップは空だ。

「マスター、お会計お願いします」
 俺が、マスターに言いながら財布を取り出すと、岬さんがアタフタしだした。
「あ、あの、わ、私が払いますから」

 いや、しかし、と俺は思った。女の子におごられるなんてみっともない事出来ないと。
「いいよ、俺が払うから」
「いえ、私が払います!」
「女の子に払わせ……」
「私が払います! 払わせてください!」
「そ、そう?」
 ヒートアップした岬さんの強力なプレッシャーに押されて、飲み物代の払いは岬さんになった。本当に払ってもらって良かったのだろうかと思いながらも、俺はしぶしぶ、出した財布を元の後ろポケットにしまう。

 岬さんが払い終えるのを、俺は眺めながら待った。支払いが終えると、俺は先に扉を開けて外へと出る。エアコンのよく効いていた喫茶店から外へと出ると、熱気がムワッと顔に当たる。

「あちー」
「暑いですね」
 岬さんが、同意してくる。やっと、自然な返しが返って来た気がした。

「あ、あの……」
「ん、何? 岬さん」
「今日は本当に楽しかったです。ありがとうございます。それと……、また誘ってください!」
「喫茶店ぐらいなら、何時でも付き合うよ」
それだけ言葉を交わして、俺達は喫茶店の前で別れた。

 俺は、自宅へと戻ると、簡単に食事を済ませた。その後は風呂に入り、ジャージから寝巻きに着替えてベッドの上へと転がり込んだ。

(しかし、俺の身に一体何が起こったんだろうか……)

 腕を組み、腕を枕にして寝転がりながら考えていた。悩みは、朝から先ほどまでの、様々なおかしな事だ。周りは、そのおかしな事に気づいていないようだった。もしかしたら、他の誰かが、気づいているかもしれないが、今のところ俺だけが、おかしいことに気づいていたようで他の誰もが疑問の言葉を発しなかった。

 おかしな点は、いくつかある。先ず、服装の違い。制服が、男女逆になり男がスカートを履き、女が詰襟の制服を着ていた事。いつの間にか、俺の仕舞っていた服も違うものに変化していた。誰かが俺の寝ている間に、俺の部屋に忍び込み、服を取り替えたのだろうか。しかし、カギをしっかり閉めていたし、侵入されることなんて無いはずだ。そもそも、そんなことをして何の特になるのだろうか。

 第二に、クラスメイトの変化。俺の知っているクラスメイトがどこかへと消えて、知らない生徒が増えた。男子が消えて、女子らしき人物が増えていたのだ。

 第三に、自身の体力の低下。教室から外へと走っただけで息が切れていたが、今振り返ると、それだけで息が切れるほど俺は体力が無かっただろうかと思う。普段は運動をしないので、知らないうちにそこまで体力が落ちていたのだろうか、それとも、昨日と今日の変化で一気に体力が落ちたのだろうか。

 以上、昨日と今日とで3つの大きなおかしな点があったが、その他細かな点で更におかしいと感じることがあった。

 とにかく、昨日と今日とで何かが違う。じゃあ、何が原因でそうなったのかが分からない。原因は一体何なのか。ゴロゴロと布団の中で転がりながら考えるが、答えは見つからない。

(知らないうちに、平行世界へ来てしまったとか?)
 何かの小説で読んだ内容がふと、頭をよぎった。平行世界という考え。まさかとは思うが、その事が頭の考えから離れないようになった。

 とにかく、いくら考えても答えは出ないので、仕方なく俺は眠りへと入っていった。

 

 

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