キョウキョウ NOVEL's

キョウキョウ著によるオリジナル小説を公開しています。

第05話 マスコミ騒動

 それは両親と一緒に夕食をした後、いつもの様に居間でおしゃべりをしていた時だった。そろそろ私は寝る準備を始めようとした夜9時を少し過ぎた頃、突然家の電話が鳴り出した。
 父と母は顔を見合わせ互いを見たが、どちらも電話の相手に心あたりが無かったのか首を傾げている。

 両親は二人とも家族との時間を大切にしようと、よほどのことがない限り仕事関係の電話は家にしないように言っているらしく、こんな時間に電話がかかってくるなんて私が記憶しているもので3回ぐらいだったはず。

「僕が出よう」
 父さんが立ち上がり電話の置いてある部屋へと向かって行った。
 部屋の向こうの電話のコール音が止み、父さんが電話を取ったのだろうと確認。私と母さんはそのまま雑談を再開。

「一体こんな時間に誰でしょう?」
 電話の相手を気にしつつも別の話題へと話は移って続いていく。
 
 最近の学校での勉強の進み具合や、クラスメイトについて、放課後の過ごし方等。母さんは最近の趣味や、見たい映画、旅行に行きたいという事等など他愛ない話を続けた。

 母さんと10分ぐらい話していただろうか、少し長めの電話から戻ってきた父さんは眉間にしわを寄せてなんだか困り顔。
「おかえりなさい。どなたでした?」
「テレビ局だって。取材のオファーだったよ」
 母さんが聞くと、うんざりした様子で返事する父さん。どうしたんだろうと心配になったが、母さんが質問をして聞き出していたので成り行きを見守る。

「何か問題がありましたか?」
「あぁ、いや仕事の問題とかじゃないんだけど。……えっと、最近は近所の人たちが皆キレイになったって話題があっただろ?」
 父さんの疑問にすぐ返事をする母さん。
「えぇ、あったわ」
 話がいきなり飛んだ。話題は近所の人が最近肌が綺麗になって美人な人が増えたこと。多分だが私の配布した魔法薬の影響だろう。今も何十件の人たちに渡して試してもらいながら、効果を見ている。電話とは一体どんな関係だろうか。

「それで、2日ぐらい前にこの辺にマスコミが取材に来てたらしく撮影をやったらしいけれど、美人が増えた理由を探ってたんだって。それでどこからか薬の製作者は誰かという情報を掴んでウチにたどり着いたから電話してきたんだと」
 近所に美人が増えたことと、家に電話をしてきたことが繋がった。しかし、そうなると電話の理由は薬の製作者、私ということになる。

「確かこの前聞いたけれど、明は手作りの薬を皆に配っているんだろう?」
「うん、学校が終わってから夕方とかに皆のためにお薬を作ってる」
 少し前に母さんから魔法薬について聞かれた時、父さんにも一緒に魔法薬について魔法の部分はボカしつつ説明した時のことを思い出す。ただ単に魔法薬の作成訓練で作り上げた物を配っていただけだったつもりが、想像以上に影響を及ぼしている。もう少し考えて披露すべきだっただろうか。

「あぁ、いやみんなの役に立っているから作ったことに関して父さんは全然問題に感じてない」
 私が少し思い悩んでいる様を見て父さんがフォローを入れてくれた。

「だからソレで、薬を作った人に関して取材したいって言われたんだが、夜遅いから時間を改めて電話してもらおうと仕事用の電話番号を伝えようとしたら向こうさは慌ててなぁ」
「慌てたって?」
 母さんがすかさず聞く。

「いや、どうやら向こうは今すぐアポ取って取材したいらしくて、無理やり話を進めようとしたんだよ」
 電話相手がどういう状況で、どんな考えがあったのかは分からないが、こんな時間に電話を続けようと言う感じはあまり印象は良くない。

「それで少し腹がたったのと、電話の相手の雰囲気から直感でこの話は受けないほうがいいって思ったから僕が判断して断ろうとしたんだよ。明に関する事だから本当は明と相談してから判断したかったんだけど、僕が勝手に判断してしまったよ、ゴメンな」
「ううん、全然問題ないよ。僕も今の話を聞いて受けないほうがいいと思った」
 父さんはすまなそうに私に言うが、私も本心で受けないほうが良いと感じた。

「で、僕がお断りしますと何度言っても製作者本人と変わってくれとしつこく言われたんだ。子どもだったら上手く丸め込めると思ったんだろうけど、断って良かったと思うよ」
 父さんの話から先程も言った通り、印象があまり良くないので断ってくれてありがとうと思った。

「もしかしたら、また電話がかかってくるかもしれないから当分は僕か母さん、もしくは知子さんに電話は任せて、明は電話に出ないようにな」
「うん、分かった」
 父さんは心配したような顔つきで私に忠告する。

「私が知子さんに明日来た時に知らせておきますね」
「うん、おねがいするよ」
 母さんの言葉で電話の話はそこで終わって、時間も遅かったので私は就寝することに。
 そして父さんの予想通り、翌日からは電話がガンガン鳴らされて私は電話にでることはなく、知子さんが対応に追われた。
 知子さんの話ではテレビ局の他にも、雑誌や新聞など複数社から電話が入ってくるために知子さんはうんざりしながらも丁寧に断りつつ電話対応をしていた。しかし、1日になんども電話が鳴り響き、その度に家事を中断させられる様子を見ていてとても不憫に思ったので、今日の魔法訓練を止めて家事の手伝いをすることにした。

 そんな日々がしばらく続いて、マスコミ側は遂に電話でのオファーが無駄だと考えたのか、直接交渉しようと家の周りにアポ無しで来るようになった。ただ家へ訪問するのではなく、私が一人の時を狙っているのか住宅街を徘徊していた。
 しかし、家の周りを徘徊する彼らの姿を見た近所の人は、不審な人物がウロウロしていると警察へ通報。彼らは警察から事情聴取されて、仕方なく本当の事を言うと面会の約束がなく家の周りを歩くのは非常識だと何度も注意を受けることになった。

 警察の人たちは協力的で、日中のパトロールルートに私達の住んでいる住宅街付近を追加してくれて、しばらくの間警戒してくれるようになった。とうとうマスコミは退散して、家の周りをうろつくことはなくなった。
 そしてやっと話は終わりかなと安心しかけた時、ある男たちが家へと訪れた。一人は政府の審議官、もう一人はある製薬会社の社長だと名乗った。

 

 

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