キョウキョウ NOVEL's

キョウキョウ著によるオリジナル小説を公開しています。

第04話 魔法薬

 小学校で孤立していた私は学校が終わった放課後も一人で行動することが多くなった。と言っても小学校に来ている子たちの多くは家が遠くにある場合が殆どで、放課後は皆が遊ぶこともできずにすぐ帰らなければならないので状況は他とそんなに変わらなかったが。

 私も車を走らせて20分かかる距離があるので、いつも家政婦の知子さんに学校まで迎えに来てもらっていた。家に帰ってきた後は、知子さんの家事の邪魔をしないように家で大人しく過ごしているように見せつつ、隠れて魔法の修行を努めていた。

 最近は魔法薬の調合の訓練が主だった。材料として使おうと考えて草花の育成から初めて、育てている草木に魔力を与えて成長の調整をしつつ、無事に育ったら収穫して魔法薬作成の訓練に使う。そして、実際に作ってみたものを自分で使って効果を見る。そんなふうな訓練を考えていた。
 私は自分の初めて作った薬を使おうとしているところを知子さんに見られてしまった。

「あきらさん、それは何ですか?」
 知子さんはいつも子供の私に対して丁寧な言葉。しかしその言葉には少し鋭さが含まれていた。多分、知子さんは私が見慣れない物を持っているのを見て用心したのかもしれない。私が持っている液体は、紫色に濁った液体なので見慣れない者には毒にも見えるかもしれない。
 心配してくれているのだろう知子さんにどう説明しようかと考えたが、ある程度の部分まで本当のことを話してみる事にした。

「コレ、僕が作ったんだ。とってもお肌にいいんだ」
 私はいつもの様に子供っぽさを意識した口調で返事をした。私が作っていたモノは魔力成長薬という魔法の力を高めるために使うもの。魔法使いとしての能力を高めるために使おうと思って作り上げたものだった。
 しかし、この薬には魔法の力を高める効果の他とは別に美肌効果という美容に関する効果もあった。私はこの薬を説明するときに魔法の事には一切触れずに、肌に良いという部分のみに関して説明してみた。

「学校の授業で作ったんですか?」
「ううん、僕が考えて作ってみた」
 この世界に魔法薬というモノのレシピは私の調べた限りでは存在していなかった。なので、前世で習ったとも言えないので私が考えたと言うと、知子さんの顔が少し警戒したような険しい顔になった。

「えっと、あきらさんが考えて……?」
「うん、この花とか草を混ぜあわせたら肌にすっごく良いんだよ」
 私は育てた花や草を見せながら作り方を説明して、草花の図鑑を使って毒性は無いことを証明していった。

「うーん、どれも害が無いって書かれてる花ばかりだから大丈夫なのかしら?」
 知子さんは、私が薬を作るときに参考にしたと言って見せた草花の図鑑を読み進めながらつぶやく。しばらく考えた後、私に薬を使うのは一旦止めるように言い聞かせた。

「もしかしたら何か身体に悪いことが起こるかもしれないから、私がちょっと調べてみます。調べるのに使うので、分けてもらえますか?」
 私は知子さんの言葉に従い、彼女が納得するまで使わないことにした。知子さんが結果が出るまでは使ってはダメと言われたので、作り上げた薬を全部彼女に預けることにした。

「こういうのって、保健所へ持っていけば調べてもらえるのかしら……?」
 知子さんはつぶやきつつ、僕の作った薬を持って行った。

 それから1週間後に事態は動いた。


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「あきらさん、この前のお薬って同じのを作れますか?」
 私が魔力成長薬を渡してから、知子さんの肌は短い間で一気にスベスベになっていった。それを見ていた私は、どうやら知子さんは私の作った薬を使ってくれているようだと確信していた。
 薬を渡してから1週間ちょっとが過ぎた日だった。

「もちろん作れるよ」
「そうですか!……実はその、あきらさんに借りたお薬、効果を見るために私、自分で使っちゃたんです。私が使わせてもらったモノはとても効果が高くてビックリして、気がついたら借りていた薬を全部使い切っちゃいまして……。借り物を勝手に使ってゴメンナサイ」
 本当に申し訳無さそうに謝る知子さん。子供の私に対しても深々と頭を下げるので、私は少し慌てながら大丈夫だと返す。
 あの薬は十分に効果を発揮してくれたらしくて、知子さんの役に立って嬉しく思った。私は彼女の要請を受けてもう一度あの薬を作る約束をした。

「僕も自分で作ったものを使ってもいい?」
「そう……ですね。私だけ使わせてもらうなんて不公平ですものね。でも、もしも身体に異変があったら直ぐに私に言ってくださいね」
 知子さんからの許可をもらい、自分でも成長薬を使えるように。私は自分で使う分と知子さんにあげる分を作りながら、更に魔法薬制作の練習や魔法の修行を進めた。

 それからしばらくして、魔力成長薬に関することは更に大事になることに。

 仕事を終えた両親が帰ってきて、一緒に食事をしている時のことだった。母さんが突然質問してきた。
「明、最近肌に良い薬を作ってるって知子さんから聞いたんだけれど本当?」
「本当だよ」
 知子さんに美肌効果のある魔法薬について話した時、母さんにも知られるだろうと考えていた私は母さん用にも薬を作って置いてあった。
 私が母さんに作った薬を渡してあげると、とても喜んだ顔で受け取ってくれた。
「お母さんもコレを使ってキレイになってみせるわ!」
「程々にな」
 テンションが上がっている母さんに、ブレーキをかけるように父さんが言う。

 母さんが薬を使用し始めてから、どんどんと若返って肌が以前にも増してキレイになっていった。その様子は近所でのウワサになっていった。
 最初は知子さんが、次に母さんが日々を追うごとに若返ってキレイになっていく。あの秘密はなんだ!?と探りを入れる近所の奥様達に母さんはあっさりと真相を明かしたそうだ。

「私の息子が作ったお薬がとっても凄いんですよ!」

 それから近所の奥様方から薬の発注がドシドシ入ってくるようになった。私は奥様達の注文を無理のない程度にこなしていった。途中からは手の開いている奥様達にも時々手伝いをしてもらうことで、薬をつくり上げる効率もどんどん上がっていった。
 この薬を作る作業は一つの商売のようになっていった。しかし、私は子供の身なので金銭は一切受け取らなかった。その代わりにお菓子や美味しい食べ物を食べさせてもらったり、科学の本や調合に使えそうな道具をプレゼントしてもらったので満足だった。

 どんどんと有名になっていく「明くんが作った美容薬」と呼ばれているようになった魔力成長薬。事態は遂に私が住んでいる街から飛び出して全国へと広がっていくことになった。

 

 

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