キョウキョウ NOVEL's

キョウキョウ著によるオリジナル小説を公開しています。

第03話 小学校

 小学校に入学することになった。

 魔法の修行を始めてからちょっと1年を過ぎた頃。両親や使用人には魔法の存在を隠して、見つからないように鍛える日々を過ごしていたある日の事。私は両親から小学校について説明を受けていた。

 話を聞いてみると、どうやら私を小学校に入学させる準備をしてくれているらしい。こんな小さな年から教育を受けさせてくれるなんて非常にありがたいと私は思った。
 小学校について聞いて、私は前世の学習院について思い出していた。私が師匠のアルク様に引き取られてすぐの頃。王国の首都へ訪れた時に魔法の基本について、礼儀作法、王国の歴史、王国での常識等など様々な事を知って勉強した場所が学習院だった。
 学習院への入学は師匠から推薦してもらったが、当時の私は全く無識な人だったのでかなり苦労と努力をしながら勉強した辛いが思い出がある。ただ推薦してくださった師匠の顔に泥を塗ってはいけないと、無知は無知なりに頭を働かせて様々な人のもとへ訪れては教えを請い、食事と寝る時間以外は知識を貯めこむのに費やした。その甲斐あって、3年の在籍期間を満了して卒業。その後、直ぐに王宮で仕事をするようになった。

 私は両親に教えてもらった希望の小学校に入学するために、試験合格のための準備を始めた。日中は使用人の人に勉強を教えてもらったり、夜の間は仕事から帰ってきた両親に教えてもらったりしながら勉強。半年ほど時間を費やし準備したために、試験は比較的簡単に合格。聞いた所によると、成績が1番だったらしく両親が喜んでくれた。しかし私は少し不安だった。

 小学校に入学するにあたって1つの懸念があった。小学校は在籍者の年齢が満6~12歳の範囲内であると聞いている。転生者である私は、そんな彼ら彼女らと比べるて優秀である。それは自惚れでもなんでもなくて前世では賢者を務めた人間が、万が一にも子供に知能で負ける訳にはいかないから。
 スタート地点が違うのだから、いわゆるズルというやつだ。そんな人間が彼ら彼女らと交流を図ることが出来るのかが心配だった。
 私の入学する予定の小学校は日本全国にある小学校のなかでも最上位と言われるぐらいに優れた学校らしく、入学する者達もそれなりに早熟で優秀なのだろうと思うが、それでも前世の一生を過ごした経験のある私には知能では及ばないだろうと考えている。
 少なくとも前世では、知の頂点である賢者になれるぐらいの能力を持っていたし、今世でも知識欲の赴くままに従い努力を続けているため、入学する子供が優秀であったとしても、そんな彼ら彼女らには負けない自信がある。
 そして、優秀すぎる人間は反発心や嫉妬心の矛先となり、鼻つまみ者にされて排除される可能性があるのだ。そうならないために私は、普段の小学校生活をしている間はある程度自分に制限をかけて過ごすことに決めた。
 体力、知力、特技、その他諸々を学校の人達には悟られないように。能力を隠す訓練にもなるだろうとポジティブな方向に考える事にしたのだった。

 4月になり、小学校の入学式が行われた。式の間は両親が興奮冷めやらぬ様子で、私の入学晴れ着を写真とビデオに収めて喜んでいた。両親が喜んでくれて、私も胸が暖かくなる。

 入学式が行われる間に私は子供たちを観察していた。何人かの男の子は機嫌悪く泣き叫んだり、女の子の中には親の手や服の裾を掴んで離そうとしなかったり、精神的な幼さを表している子どもたちが居た。
 しかし、その他の子供達は6歳という年齢にしては物静で知性を宿した目をしていて、興味深そうに周りを静かに見回したりしていて知能が高いのが伺える。

 私に向かって目線を向ける子供たちは、一瞬ビックリしたように目を真ん丸に開くが、直ぐに視線を外して平静を装う。どうやら私の日本人離れした顔と、白に近い金髪を見て驚いていると思われるが、驚くだけで騒ぎ立てたりはしない。
 彼らの行動を見て両親に聞いていたとおり、この学校に入学できる人達はそれなりに優秀なのだろうと思う。

 私は前世の思い出、彼らと同じ6歳だったころを思い出す。私は、どちらかと言うと物静かだった。いや……前世の兄の奴隷になる更に前には、理不尽な父親に頻繁に殴られては農作業で手一杯だったので、ぐずる暇も無かったかな。それに比べると、今の世界はえらく平和だなとしみじみ思う。そんな風に考えていると、入学式がはじまり式はつつがなく進められた。


 入学式も何事も無く無事終わった。


 それから、学校に通い始めて授業を受ける私だったが、期待していた小学校生活は予想を大きく下回り退屈な時間となっていた。

 というのも学習を進めるスピードが非常に遅かった。先生は全員を均等に育て上げるつもりで居るらしく、成績が悪い子供を中心に授業をしていた。先生は教え方が上手いので、やがて皆が出来るようになるが、そこへ到達するまで非常に時間がかかった。
 前世の学習院について思い出すと、個人主義で互いの競争が激しかった。教師は重要な部分を生徒に教えるだけで、後は自分の努力次第という考え。私達も自分の努力で能力を高めていく必要があった。と思ったが、まだ6、7歳の子供には酷な考えかもしれないとも思った。

 友人関係にも苦労した。

 考えていた通り、精神年齢が違いすぎる私と同級生たち。会話も噛み合わず。中でも一番こころに刺さったのは、ある子供の言葉だった。

「そいつといると楽しくないから、いっしょにあそぶのやめようぜ」
 同級生に言われて、さらに疎外感を感じてしまい彼らから距離をとってしまった。本当なら私の方から歩み寄るべきなのだろうが、子どもとの接し方を今まで考えてこなかったつけが回って、私は彼らとどう接するべきか答えを見つけられなかった。

 結局、親しい友人が一人もできずに1年を過ごすことに。前世の学習院とは違った形の辛さを味わうことになった。

 

 

<< 前へ  次へ >>     目次

【スポンサーリンク】