キョウキョウ NOVEL's

キョウキョウ著によるオリジナル小説を公開しています。

第02話 前世と今世

 この世界には数々の素晴らしい文化がある。音楽、演劇、絵画。現代では更に、映画やドラマ、マンガやアニメというものもあるらしい。

 特に素晴らしいのは、音楽だ。前世では、音楽を聞くためには国王主催や大貴族の主催するパーティに参加する、もしくは自分で大金を使って楽団を用意して演奏してもらう必要があったために、音楽を耳にする機会は少なかった。今世では1日の食費で1枚のCDが買えて、購入さえすれば何度も素晴らしい音楽を繰り返し再生できるというわけで、手軽に楽しむことが出来る。しかも、テレビやラジオからも様々な音楽が溢れ、自然と音楽を耳にする機会が多い。素晴らしい。

 演劇についても、お金のかかる娯楽として、前世の私には馴染みのなかった物だった。しかし、これについても今世では非常に安価に楽しめる。特に、映画というものが素晴らしい。ビックリしたのが、シーンごとに背景が非常に作りこまれているのだ。演劇の「書き割り」という背景を絵に書いてシーンを演出する大道具が頭にあったので、私が初めて映画を見た時はすべてのシーンを一箇所で演じているのだと勘違いしたりして、最初は魔法も使わずにあんなに精巧な書き割りをどうやって作っているのか疑問に思ったりした。後に、映画が撮られる手順について知ったのだが、それにしてもシーンごとに場所を変えて、小物を準備し、衣装を変えて、様々な準備をして、撮影するという労力の使い方に頭が下がる一方で、人間の創造力の高さを思い知った。

 ちなみにだが、私はファンタジー系の物語よりもSF系の話が好きだ。宇宙にはロマンがある。何時か月に行ってみたいものだと、空想するのが好きだったりする。

 絵画も素晴らしい。私は師匠から絵についても教えてもらった(魔法を使うための道具作りや、魔法陣を美しく書くために必要な技術だと言われ学ばされた)事から多少の技術があると自負している。本職の絵描きには到底及ばないが、多少評価することは出来る。その目を持って見ると、とにかく「素晴らしい」の一言に尽きる。何千年もの積み重ね、継承された技術の結果なのだろう。名作と呼ばれるそれらを見た私は、その歴史と技術には畏怖を感じる。

 そんな風に、幼いながらに芸術分野に興奮しては、深く興味を持った私を見た両親たちは「我が子には芸術の才能があるかも知れないな」「将来は芸術家ですね」なんて会話をしていた。それを聞いた私は少し焦った。たしかに多少の興味があるが、私にはそれ以上に興味と将来を掛け学び研究するに値するモノがあった。そんなわけで、私は目指す将来を明確にするために、芸術分野は程々にして、最大の興味を刺激する「科学」について親にねだることにする。

「父さん!この本を買ってください」
「ん? 科学の本かい? この本が欲しいのか?」
 久しぶりに休みの父さんに連れられて行った本屋にて、私は子供用らしい科学の入門書を一冊手に持って父さんに差し出す。パラパラと内容を流し読みした父さんは、一つ頷くと私に目線を向けて言った。

「良し買って上げよう。科学に興味を持つというのはいい事だ。たしかルネッサンス時代では、芸術と科学は一緒の分野と言われていたからね。科学を勉強して想像力を鍛えて、絵描きとしての技術を磨けば、歴史に残る芸術家になれるかもしれないね」
 父さんは、さらに科学の本3冊と、近代画集を1冊見繕うと私の渡した本と一緒に購入してくれた。父さんは、まだ芸術家としての道を目指すものだと勘違いしながら、私の頭をグリグリと撫でる。私は目的の本を手に入れてニッコリ顔。父さんの勘違いを指摘しないで本に夢中になっていた。

 科学というものは凄い。様々な現象を、事細かに、しかも理論的に説明することで誰でも理解できるようにするのだ。その中には、師匠から秘伝として授けられた魔法技術を裏付けるような内容のものや、私が生涯を掛けて見つけ出した理論の一つを更に詳しく解説されたものがあった。そんな内容のものを惜しげも無く一般人に公開しているので、この世界は前世に比べて凄いのだ。

 「科学」を学び始めた私は、更に「魔法」の再修行を始めた。転生した当初は、まだ身体に魔力が馴染んでいなかったので修行は身体が成長してからと先延ばしにしていたが、4歳になり、身体に魔力が馴染みだし程よい状態になったために修行を始めたのだった。
 この魔力の修業は慎重に行わなければならない。なぜなら、転生してから今まで一度も魔力を持った人間に出会っていなかったからだ。もちろん、私よりも優れた賢者が魔力を隠している可能性は否めないが、魔力を持つ人間を一人も見たことが無いということは、ありえないだろう。賢者や魔法使いの弟子や、魔力の素養を感じさせられる人間が一人も居ない。魔法が存在しているならば、私ならばどんなに隠そうとしても、あらゆるルートから一端は探り出すことが可能であると自負している。ならば、やはり次のような可能性が考えられる。

1.この世界には自分以外の魔力を持った人間が元から居ない、あるいは絶滅した。
2.日本人の血筋には、魔力が皆無ということ。
3.賢者・魔法使いの数は極小数で、今まで出会う機会が偶然無かった。
4.魔力を持つ人間は完全に隠匿されている存在。魔力を持たない人間とは交流を完全に絶っている。

 1.は可能性の一つとして考えられるが、更なる調査が必要である。2.は前世でも、魔力の少ない血筋というものが有ったことから予想した可能性だ。前世では帝国人は魔力が非常に少ないという特性が有ったため、日本人も帝国人と同じような魔力を持たない特性ではないかと予想した。しかし、私の住む家がある地域にも住んでいる外国人は少なからず居るが、彼らに対しても魔力を感じないことから、日本人特有とは考えにくい。3.は、私がまだ幼児で行動範囲も制限されているために出会う人間の数は限られているために、調査数が不足しているから、まだ判断はできない。もう少し成長して行動範囲が広くなれば、3の考えが正しいか間違っているかは分かるだろう。4.については、この世界には過去魔女狩りなんてものが有ったという歴史があるので、魔力を持たない人間との交流が絶無の可能性がある。4の可能性も捨てきれない。とにかく、修行を進めて魔力感知の感覚を高めて、世界に魔力を持つ人間が居ないか探し続けるしか無いだろう。

 そんなわけで、私は「科学」と「魔法」の学習・修行を進めるのである。そして、最終的な目標として魔法と科学の融合がある。現代科学の力を加えた新しい魔法を研究したいのだ。

 そんな事を考えながら、私の幼児期は過ぎ去っていった。

 

 

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