キョウキョウ NOVEL's

キョウキョウ著によるオリジナル小説を公開しています。

第09話 乾坤一擲

 魔王と戦うのは僕の役目だと、兵士たちと勇者2人は後ろに下がらせて戦闘を始める。万が一にも、奴には逃げられないようにと事前に対策をしておく。

 そして、魔王が何か言葉を発する前に僕は突っ込んでいく。わざわざ会話を聞く必要もない。多分、格下に見ている人間に対して上から目線の言葉を吐くだけ。

 人間が我に勝つのは無理だ諦めろ、だとか、倒そうとしても我は死なないから無駄だ、とか。そんな事ぐらいしか言わないだろうとハッキリ分かっていたから、話も聞かずにさっさと戦闘に入る。


***


 しばらく魔王と僕との戦闘は続いたが、どちらも倒れる事はなく膠着状態という感じだった。

 もしかしたら傍から見れば熾烈な戦いを繰り広げている、とでも言われるような風に見えたかも知れない。

 けれど、僕は戦いの最中にも色々と試したいことを試して、それが派手な反応結果を見せているだけだった。

 なので実際は、僕の心は非常に落ち着いていて魔王の攻撃にも楽に対処していた。いうなれば、知識のない者には凄い事をしているように見えるけれど理論を知ると案外そうでもない、というような感じだろうか。

 けれども僕の攻撃も、相手に決定打を与えられていないのは事実。言い伝えの通り、やはり勇者の一撃が無ければ倒せないという事だろう。

 奴に逃げるスキも与えず間断なく攻撃を続けていく。残念ながら、今も試している新しく生み出した魔法の数々では魔王を倒し切る事は出来ない、という事が次々と判明していく。

 こうなっては仕方がない。予定通りに、言い伝えられていた言葉を信じて勇者に最後のトドメを刺してもらう。そのために、奴を痛めつけて動けなくしてから、危険が無いのを確認して最後は勇者にお願いしよう。

「何ッ?」

 今までとは違う攻撃を仕掛けた僕、魔王の個性的で低いけれどハッキリと聞き取れる声から戸惑いを感じ取る。どうやら、奴は焦っているようだったが僕は気にせず続ける。

「これで終わりだ」
「ぐっ」

 魔法抵抗力が高くて、力も強い魔王の動きでも、このようにして止めることが出来る拘束魔法。

 奴は立っていられず地面に倒れ込む。身動きはもちろん、声すら出せなくなるまでの自由を奪う拘束ができる、とても強力な魔法だ。

 しかし効果を発動させ続けるのは非常に複雑で、精神力を使う難易度の高い魔法でもある。なので、魔法の効果を破られないように集中している間は攻撃が繰り出せない大きなデメリットが有る。けれど、今はコレでいい。

「今のうちに、コイツにトドメを!」

 遠く後ろに待機していた勇者の少年に向かって僕は大声で呼びかけて、最後の一撃を加えるようにと指示を出す。

「は、はいッ」

 力強く返事をして走り寄ってきた勇者は、魔王の側近くに立って震える手で剣を抜いて構える。

 少年は剣で魔王にとどめを刺す事に心理的な抵抗を感じているのか、剣を構えた状態で動きが止まってしまった。

 魔王を目の前にして、どうするべきか葛藤しているのか。

 けれど、魔王は何も声を出せずに地面に倒れたまま動けず。あとは、その身体に目掛けて一撃を加えるだけだ。

 できれば早く勇者には魔王にトドメを刺してもらって、仕事を終わらせてほしいと内心で願う僕。拘束魔法を維持し続けるのは、かなり面倒なのだから。

「早くトドメを刺してくれ」
「い、いきます」

 遂に待ちきれなくなった僕の言葉に背中を押されたか、持っていた剣を振り上げて、そのまま地面に倒れている魔王の身体に振り下ろされる。

 身動きできない魔王が避けられる訳も無く、剣の刃が深々と突き刺さって致命傷を与えたことが分かる。

「うっ」

 攻撃を加えられた魔王ではなく、攻撃した方である筈の勇者が顔色を青くして吐きそうになって、具合が悪そうにしていた。

 そのまま勇者が振り下ろしたロングソードは魔王に突き刺したまま引き抜くことも出来ず、力を込めすぎたのか勇者の少年はロングソードの柄から手も放せず身動きが取れないで居るようだった。

 そんな状況でしばらく待ち、魔王が動かなくなった事を確認した僕は拘束魔法を解く。そして、ロングソードが突き刺されて倒れている奴に近づき、確実に絶命している事を再度確認しておく。

「戦いは、終わった!」

 間違いなく魔王は死んでいる。確認したあと僕がそう宣言すると、待機していた兵士たちから歓声の声が上がった。そして彼らは離れた場所から近寄ってくると、魔王を倒した僕と勇者の功績を讃えた。


***


 その後、皆は早く魔王を倒したという事実を全世界に知らせるべきだと言ったので、急いでバイアトロル城に戻ることに。

 研究のために、魔王の死体は資料として持ち帰ってから調べる。世界が危機に陥っても、今度は勇者召喚なんかを利用しないで、自分たちの世界は自分たちの力だけで守れるように準備しておく為に。

 帰りのスピードは行きに比べるとゆっくりとだったけれど、それでも魔王を倒して戻ってくるまでの往復で2週間は経たない程度の期間で全てを終わらせ戻って来られた。勇者の少女が、自分たちの仲間である勇者達に再開できて喜んでいる。

 だがしかし、勇者の少年は暗い顔をして勇者は喜んでいる皆の輪に入っていくことは無かった。彼が魔王にトドメを刺してしまった、という事実に罪悪感を抱いているのだろう。せめて、早く元の世界に戻れるように帰還魔法の準備は早めに済ませようと思う。

 

 

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