キョウキョウ NOVEL's

キョウキョウ著によるオリジナル小説を公開しています。

閑話01 転生の恩恵

 俺の名は赤井賢人。少し前に高校生となった、現在は16歳の青年だ。そして、高校生活を送りながらアイドル活動をしている、少し特殊な人間でもある。

 

  更に言えば、普通のサラリーマンとして生きていた人生。生まれ変わってから勇者としての人生を送って再び転生。そして今に至る、というような稀有と言える経験もしている。多分、この世界では誰も今までに経験した事の無い長い長い人生を送っている。

 

 ソレに関しては今のところは誰にも打ち明けていない秘密なので、事実を知る者は自分以外に居ないのだが。そして今後も転生したという事実は、誰にも打ち明けずに知られない秘密として隠し続けていくつもりだ。

 

 そもそも、転生したという話を誰が信じるだろうか。

 

 俺は転生した人間だ、と見せるだけで簡単に証明できるような決定的な証拠は無い。魔法は少し使えたりするけれども、それを見せただけではマジックかトリックがあるものとして、疑いの目を向けられたら決定的な証拠とはなり得ないだろうな。

 

 転生したという決定的な証拠とはならないが、信じてもらえるような要素はある。それは、前世の記憶だ。

 

 最初から最後までを、全て話を聞いてもらいさえすれば嘘も矛盾もない本当の事だと信じてもらえるだろう。リアルに体験したなの事実だから。長い話になるから誰も聞いていられないと思うけど。

 

 前世で繰り広げた戦いに勝ち生き残るため、強くなる為にどうすればいいのか。身体の鍛え方は実践を交えて学んできた。

 

 いま自分の居る世界は大きな戦争もなく平和そのものだったので、直接的に力をぶつけ合い戦うような場面は今のところは無かった。(不良のいざこざに巻き込まれたりもしたが、戦いと呼べるような出来事でもなかった)

 

 けれども前世は勇者をしていたという記憶がある俺にとっては何時いかなる時も戦いに備えておかないと落ち着かなくなってしまっていた。平和な今の世の中でも欠かさず日々トレーニングを繰り返し積み重ねて、戦いが有ったとしても問題ないような身体に仕上げている。そして驚異的な身体能力を手に入れていた。

 

 いま、この戦う力や鍛えた身体能力はアイドル活動の為にダンスに歌にと有効活用できているので、全くの無駄ではないだろう。

 

 そして勇者としての記憶だけでなく、更にその前にあったサラリーマンとして平凡な人生を送っていた頃の記憶も有効活用していた。

 

「情報革命? インターネット?」
「そうです三喜田さん。この先、きっとコンピュータやソフトウェア、それとデータ通信回線などの情報技術が注目されるんですよ」
「あぁ、確かに今アメリカで騒がれているみたいだな」

 1990年台後半である今、後にインターネット・バブルと呼ばれるような出来事が起こる直前の年だった。

 

 一度目にサラリーマンとして生きた人生についての記憶を持っていた俺は、この先に世の中で何が起こるのか大体の事を知っていた。

 

 いわばタイムマシンで過去に行って万馬券を当てて金儲けができる、というような誰も知らない情報を握っているような状況だった。

 

 もうずっと昔の、遥か遠くにある掠れた記憶になっていて何年何月に何が起こるかという細部までは詳しく覚えていない。ただ、アバウトにだが記憶に残っている事も多く有る。

 

 一度目の人生と今の俺の人生と比べてみると差異は有るものの、世の中の流れについては大きく違わないかった。なので、どうなるのかこの先の将来について大雑把に予想は立てられる。

 

 家庭でも使い易いパーソナルコンピュータの登場により、一般家庭にもパソコンが普及していた。今のところ、世の中が情報ネットワーク化されていく流れが進んでいっている。

 

「つまり、IT関連の銘柄でバブルが起こるのか?」
「はい。でも、ITバブルは驚くほど速く崩壊しそうな予感がしますから注意したほうが良いですよ」
「なるほど、予感がする、か。わかった教えてくれてありがとう」

 アイオニス事務所を運営する為の資金を少しでも調達できれば良いな、と思いつつ三喜田社長に覚えている情報を話してみた。信じるか信じないかについては、三喜田社長の判断に任せて。

 

 ちなみに密かに俺もアイドル活動で稼いだ給料を、株式投資して稼がせてもらっている。このようにして、いろいろと前世の記憶という転生の恩恵を受けながら俺は三度目の人生を賢く送っていた。

 

 

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