キョウキョウ NOVEL's

キョウキョウ著によるオリジナル小説を公開しています。

第08話 初の対外試合

 練習は順調に進んでいた。練習試合を繰り返して、しっかりと形になっていると思う。だが、今はまだ部員同士での練習試合しか経験がないので、夏の大会に出場するまでには一度、別の高校との練習試合をしてみたいと考えていた。

 

 自分たちの力が何処まで通用するのか、今の状態を客観的に確認できて比較する対象が欲しいと思っていた。

 

 野球部顧問である嶋岡先生が良い話を持ってきてくれたのは、そんな時だった。

 

「他の高校野球部と練習試合、出来るんですか?」
「先生の知り合いに野球部の顧問をしている奴が居てな。ウチとの練習試合を申し込んでみたら引き受けてくれたんだ。どうだ?」

 初の対外試合。これで自分たちの実力を知れる、丁度いいタイミングだと思う。断る理由もない。

 

「もちろんお願いします。それで、その練習試合を受けてくれた高校って、何処ですか?」
「横浜中央高校だ」
「え!?」

 たしか甲子園にも何度か出場の経験がある高校だったはず。しかも隣の県。そこには全国に名の知られた強豪校が集まっていて、いつも甲子園出場の一枠を巡って争っている。甲子園に強い地区だったはず。

 

 まさか、いきなりそんな高校と対戦できるとは思っていなかった。けれど、そんな強豪校と新しく立ち上がったばかりの俺達で戦って大丈夫なのか、少し不安になる。だがしかし、これはチャンスだと考え直した。

 

 負けたとしても、その経験を甲子園出場を目指す為の目標に出来る。そして今回の試合に勝てたなら、自信を深めることができる筈だ。

 

 

 横浜中央高校との試合の件については、その日のうちに部員全員へ伝えた。勝利を目指し皆が練習に熱を入れて、約束の試合の日まで部員たちは気持ちが昂ぶっていった。

 

 

 そして、横浜中央高校との試合予定日。

 

「ここが今日の対戦相手の強豪校」
「シッカリしとんなぁ」

 うちの学校とはひと目違うと見て分かる、黒土が使われてシッカリと整備されているグラウンド。

 マウンドも、甲子園に似せているのだろう緩やかな傾斜とするなど工夫されているようだった。

 打ったボールがグラウンドの外に飛んでいかないように、背の高い防球ネットも張られている。夜でも練習できるように、立派な照明塔も建てられていた。

 

 ずばり野球部の練習場という場所。充実した練習設備を目の当たりにして、横に立つ剛毅は羨ましそうな声を上げていた。

 

 練習場はココだけでなく、室内練習場や投球練習場という建物も用意されているらしい。やはり、ウチの高校とは段違いに設備が充実している。


「タカちゃん! 今日はヨロシク」
「ようこそシマちゃん。その子達が、お前の念願だった子か」
「うん。でも優秀だから、ほとんど指導する事も無いんだよ」
「優秀なのか。良いじゃないか」

 嶋岡先生が向こうの野球部の顧問と思われる大人に声を掛けて、話し合っていた。二人はとても親しげに呼び合っているので、ただの知り合いというわけではなくて友人関係なのかもしれない。

 

 だから、最近立ち上がったばかりの新米野球部が強豪校相手に練習試合の約束を取り付けることが出来たのだろう。

 

「俺達が話している時間も勿体無い。さっそく練習試合を始めようか」

 おい、お前ら準備。向こうの野球部員が、タカちゃんと呼ばれていた人物の出す指示に反応して、元気よくハキハキした返事をして動き出す。機敏な動きで、試合準備に取り掛かっていった。

 

「あぁ、お願いする。赤井、こっちもウォーミングだ」
「分かりました」

 そして嶋岡先生も向こうとの話を終えて、俺達の方へと向き直って試合の準備を始めるようにと指示を出す。

 

 グラウンドを借りて、ランニングとキャッチボール、ストレッチをこなして試合前の準備を済ませる。

 

 俺と剛毅は軽く投球練習も行う。チラチラと、相手選手達から視線を向けられるのが分かった。だがしかし、すぐ視線を感じなくなった。少し見ただけで、興味が失せたような様子だった。

 

 俺も向こうの反応に注意しつつ、一番気にしていたのは剛毅の状態。

 

「調子はどんな感じ?」
「絶好調や」

 15球の投球練習を終えて問いかけると、やる気に満ちた目と自信満々という表情を浮かべて答えた剛毅。見た感じから、不安要素は無さそうだった。

 投球練習でも、要求するコースにバッチリ投げ込めていたので本人も言う通り調子は良さそうだった。後は、初めて仲間同士で行ってきた試合とは違う今回、状況が違う対外試合の途中で乱れずピッチング出来るかどうか。

 

「それじゃあ、オーダーを発表します」

 ウォーミングアップを終えた後、部員を集めて部長である俺の口から今日の試合のスタメンを発表していく。

 一番 ライト 舞黒
 二番 キャッチャー 赤井
 三番 ショート 緑間
 四番 ファースト 宗崎
 五番 セカンド 阿宮
 六番 レフト 松山
 七番 サード 安部
 八番 センター 浅黄
 九番 ピッチャー 青地

 甲子園出場に向けて決めた本気のメンバーで今日の試合に勝利するつもりで挑む。

 

「集合してください!」

 主審の声がグラウンドに響く。両チームが向かい合って並び立ち、審判団とともに脱帽して一礼。ちなみに、審判を務めているのは横浜中央高校の選手達だ。


 先攻は向こうのチーム、という事で一回表は守備につく俺達。

 

「プレイボール!」

 主審から試合の開始が告げられた。

 打席に立つ選手を観察して俺は、キャッチャーミットを真正面に構える。そして、ピッチャーの剛毅に球を求めた。

 

 

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