キョウキョウ NOVEL's

キョウキョウ著によるオリジナル小説を公開しています。

第05話 強引な立ち上げ

 新しい野球部のスタート、嶋岡先生は協力的だったけれど他はそうでは無かったようだ。堀出学園での野球部立ち上げについて協議してもらった所、他の先生方から反対意見が多数続出して最初は活動を認められなかったらしい。 

 

 堀出学園に運動系の部活動は必要ない、生徒に無駄な時間を過ごさせてしまうだけ。他に優先すべき事がある。

 

 活動するのに管理する顧問の先生が必要になるが、そんな部活動なんて職務外だ。万が一にも怪我をさせてしまった場合に、いったい誰が責任を取るのか。堀出学園に通う生徒は、一般の高校に通う学生と比べて大事にするべき。

 

 堀出学園の方針としては、生徒の独立性や自主性を育む事を優先している。だが部活動は生徒の自主性を奪って、先生の家庭も奪っているようなもの。

 

 こんな風に反対する意見が続々と出てきたらしい。しかし、嶋岡先生がなんとか他の先生との話し合いを諦めず努力してくれたお陰で、野球部の活動を何の問題も無いように学校にも正式に認めてもらえるように動いてくれたという。

 

 ただ、学校に活動を認めてもらう為に嶋岡先生は色々と無理もしたらしい。今回の件で何か問題があった場合には、全ての責任を嶋岡先生が引き受ける、というような立場になっているみたいだった。

 

「なぁに、大したことはないさ。お前達がやってみたいと思ったんだ。全力で挑戦出来るように準備を整えてやるのが先生の仕事だ」
「ありがとうございます、先生。でも万が一、何か問題があったら」
「失敗してもいいから、やりたいようにやりなさい。何も心配すること無く、他の事は先生に任せて」

 そう言って不安を取り除いてくれる嶋岡先生。

 

 野球部を作りたいと相談に行ったら先生は真剣に事に当たってくれた、なら俺も気合を入れて動かなければならない。

 

 まずは、部員集めからだ。

 

 運動ができそうで協力してくれそうな子に目星をつけて。もしも少しでも忙しいようなら、無理矢理にならないように。でも積極的に。

 

 俺達の考える計画の一端についても少しだけ説明した。甲子園出場という目標を達成することが出来たのなら、同じように芸能界で有名になることを目指す子達にも大きなメリットが有るだろうから。甲子園球児という肩書きを手に入れられる、という。

 

 進学を目指す生徒には、学業だけではなくスポーツでも実績を上げて、文武両道を掲げられると。それで受験の面接にも有利になるだろうと説得。

 

 同級生はもちろん、二年生三年生という上級生にも協力を求めて話を持っていく。

 

 そして結局、俺たちクロマキー5人のメンバーを含めた総勢21名の学生が協力してくれることになった。

 

「先生、部員となってくれる生徒を集めてきました」
「本当か!?」

 グラウンドに集められた部員となってくれる生徒たちを見回しながら、嬉しそうな表情を浮かべる嶋岡先生。集まってくれた皆が、やる気に満ちた表情を浮かべている。それぞれ現実的な利益を求めてだったが無理矢理に集められたのではなく、自ら進んで取り組んでくれるというやる気を持っていた。

 

 そして、先生は約束通り校長先生からの承認を得て正式に野球部が立ち上がった。

 

「無事に今日から野球部を堀出学園の正式な部活動として認めてもらう事が出来た。ここに居る皆は、今から野球部員だな」
「よっしゃ!」

 喜ぶ剛毅。そして集まってくれた部員達も嬉しそうに声を上げていた。これで本当に活動を始めることが出来るんだと。

「ただし!」

 先生が喜んでいる皆を呼び止めて、前もって忠告。続きの説明をする。野球部となって、これから何を成し遂げないといけないのか。

 

「活動が認められたのは1年間だ。この間に結果を残さなければ、部活は即廃部となる。わかったか?」
「「「はい!」」」

 もともと、すぐ近くに迫っている夏の大会に初出場、更に初優勝まで狙っている俺達。具体的な期限で言えば、もう3ヶ月も無い程。

 

 そして集まってくれた部員の皆は、野球経験者と呼べるような者は居なかった。授業や遊びで野球をちょっぴり触ったことがあるという程度、学校の部活動で野球はしてこなかった、クラブチームにも所属した経験はなく、公式戦に出たという者も居ない素人集団だ。

 

 そんな野球をしてこなかった者たちが集まって、他の学校では死に物狂いで野球を練習してきた者に勝とうと考えている。

 

 競い合えるような野球の技術は無いし、練習して鍛える時間も無い。普通に考えたのなら、こんなメンバーですぐ目の前の甲子園出場を目指すなんて無謀だろう。

 

 しかし無謀だからこそ目標を実現した時に話題となり、大々的に知ってもらえるようになるだろうから。

 

 

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